種の期限

ながい としゆき

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五日目

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 この半年の間の様子を天界ではあきれながら眺めていた。
「人間達は創造神の意向を各国との駆け引きに利用しているのか?」
「いつの間にか種族が国家にすり替わってしまっていることに誰も気づかないほど愚かだったとは・・・」
「誰が伝えれば正しく伝わるのだろうか・・・」
「いや、誰が伝えに行っても同じ結果になるだろうな」
「心の中では真実だと理解しているのに、それまでも駆け引きの道具としてしまうとは・・・」
「政府が表立って動かないから、国民達は安心しきってしまっている」
「高次元の魂達が苦戦するはずだ。ここまで心の目が曇ってしまっているのだから」
 今回は悪魔達も神の真の御心をはかり切れずにいたため目立った動きをしないで静観していたが、にもかかわらず、危機感を抱く者達は高次元の魂の持ち主と近しいごく一部の者達にとどまっていた。なかなか天界の意図が届かないということは、それだけ人類と神々との距離が開いてしまっていることであり、それだけ悪魔達が人間の日常に浸透し、影響を与えている何よりの証拠だ。
 神々も守護神や守護霊を通して人間と関わってきてはいるのだが、経験の積み重ねで成長し、実現できる魂の特性よりも、虚構ではあるものの短期間で実現できる魔物の特性の方が現代社会を生きる人間には受け入れられやすいようだ。
「初めから判りきっていたことではあったがな・・・」
突きつけられた現実に神々も困惑の表情を隠せない。
「地球の状態をみれば当然だ。彼らが個人的な財産・権力に固執などしなければ、こんなに酷くはならなかっただろうからな」
「このまま彼らは一年を過ごしてしまうのでしょうか・・・」
地球上での役割を終えて天界に上ってきた魂達も不安そうに地上を見下ろしている。
「そうならないように祈るしかない。それが我らにできる唯一の方法だ」
神々の祈りに天使達も言葉を続けた。
「幸いにも人間達は神や仏を見失ったと同時に悪魔達のことも見失っています。ですから、彼らも求められなければ動くことができません。人間達の発するマイナスエネルギーは果てしなく強大ですが、悪魔達によって穢されているものではないということです。その要因となっている不安や恐怖、恐れや妬みなどを幸福感で少しでも満たすことができれば、地球が言うように自力再生の道が開かれる可能性はまだあるかもしれません」
「悪魔達の力を借りなくても、人間達はこのようなエネルギーのうねりを生み出せるものなのでしょうか」
「もともと人間は我々と同じで創造神から直接分けられた御霊であるから、魂自体の強さは強大なものを持っている。だから彼らが生み出した悪魔達の力も決して侮ることはできないのだ。問題は人間達が力を持っていることに気付いていないということだ。無意識で行っていることだから、それこそ制御ができないということだからな」
「もはや人間達だけの問題ではないというのに・・・」
 人間達が現実と信じて疑わない三次元世界では、無情にも刻一刻と静かに、そして確実に時間が流れていた。
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