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リーンの決断
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朝、殿下を見送った後で王妃宮に向かった。
明日こちらから面会をお願いしていたが、1日早まってしまったとローラに教えられた。
…殿下を見送った後で。
少し時間を貰って、織り機から布を外した。
途中までの鳥の図柄、あと1日あれば完成…しなかったわね、きっと。
これでわかってくれるだろうか…。
ごめんなさい、という気持ちしか湧かない。
王妃様は変わらず美しく、しかしとても悩まれている様子だった。
「王妃様は心を砕いて下さいました。
それに酷いことばかりでもありませんでしたから、どうかお気に病まないで下さい。」
王妃様が意外だと言いたげな顔を向けた。
「良いこともあったと申しますか?」
「はい、いくつも。」
「そうですか、それは救いになります。」と王妃様が微笑んで下さる。
「今日は王妃様にお別れをお伝えに来ました。」
「そうですか、もう行ってしまわれるか。アリには?」
「…まだ何も。」
「彼奴はきっと怒りますよ。」
「かもしれません。ですが時が経てばわかってくださる…と。」
「どれほどの時が必要かは人によるもの。いつか…母と呼んでくれる日が来ると良いと思っていますよ。きっとアリはしつこいわ。」
フフフと王妃様は笑う。
王妃様を母と呼べる日はおそらくはもう来ない。
「人の心は変わりますから。」
「貴女の心も、ですか?」
指先が震える。
変えたくない、変わって欲しくない。だけど、決して口には出せない。
ギュッと胸を押さえる。大丈夫、これがあれば。これだけあれば。
私が答えられずにいることを王妃様は咎めなかった。
少しの間を置いて王妃様から話題を変える。
「其方には伝えておかなければならない、カレンのことです。
陛下付きの弟の事をチラつかされて、断れなくなったようですが、少し驚かしておくだけのつもりで、レインが動くのを期待したと。
カレンの話し振りだと、フランは元々アイリーン殿をどこか遠くへお嫁に行かせたかったみたいです。そのために伯爵の庶子にする条件を飲んだのでしょう。
ところがランスがアリと婚約させてしまったので、怒りが抑えられなくなった、そんなところじゃないかと申しておりました。
アイリーン殿に思わぬ反撃を食らってケガをしてしまった事で、足がついたとフランから切り捨てられると思い、私のところへ逃げ込みました。
私に全て打ち明け自死する覚悟でいましたが、思いとどまらせて私の郷里へと送らせてもらいました。
欲に目が眩んで大切なものを見失った愚か者ですが、敵ばかりの王宮で私を支えてくれた者のひとりでもあります。
どうかアイリーン殿にはお目溢しを願いたいのです。」
王子宮にいたカレンさんはきっとそれで感情を封印していた。
カレンさんもまた不幸の連鎖に飲み込まれてしまったのだと思った。
だから私にはカレンさんを責められない。
「はい、お知らせくださってありがとうございます。ずっと気にしておりました。カレンさんを私たち母娘と伯爵夫人の確執に巻き込んでしまったこと、謝っても謝り足りません。
どうかお健やかに、と。」
「許してくださいますか、真にありがとう、感謝いたします。
さあ、もう行かれよ。アリは目敏いです、ペルーはこちらが引き留めておきますから、どうぞ裏から。」
「ありがとうございます。王妃様もどうかお元気で。」
私はどこか心残りを感じながらも、王妃宮から辞去する事になった。
明日こちらから面会をお願いしていたが、1日早まってしまったとローラに教えられた。
…殿下を見送った後で。
少し時間を貰って、織り機から布を外した。
途中までの鳥の図柄、あと1日あれば完成…しなかったわね、きっと。
これでわかってくれるだろうか…。
ごめんなさい、という気持ちしか湧かない。
王妃様は変わらず美しく、しかしとても悩まれている様子だった。
「王妃様は心を砕いて下さいました。
それに酷いことばかりでもありませんでしたから、どうかお気に病まないで下さい。」
王妃様が意外だと言いたげな顔を向けた。
「良いこともあったと申しますか?」
「はい、いくつも。」
「そうですか、それは救いになります。」と王妃様が微笑んで下さる。
「今日は王妃様にお別れをお伝えに来ました。」
「そうですか、もう行ってしまわれるか。アリには?」
「…まだ何も。」
「彼奴はきっと怒りますよ。」
「かもしれません。ですが時が経てばわかってくださる…と。」
「どれほどの時が必要かは人によるもの。いつか…母と呼んでくれる日が来ると良いと思っていますよ。きっとアリはしつこいわ。」
フフフと王妃様は笑う。
王妃様を母と呼べる日はおそらくはもう来ない。
「人の心は変わりますから。」
「貴女の心も、ですか?」
指先が震える。
変えたくない、変わって欲しくない。だけど、決して口には出せない。
ギュッと胸を押さえる。大丈夫、これがあれば。これだけあれば。
私が答えられずにいることを王妃様は咎めなかった。
少しの間を置いて王妃様から話題を変える。
「其方には伝えておかなければならない、カレンのことです。
陛下付きの弟の事をチラつかされて、断れなくなったようですが、少し驚かしておくだけのつもりで、レインが動くのを期待したと。
カレンの話し振りだと、フランは元々アイリーン殿をどこか遠くへお嫁に行かせたかったみたいです。そのために伯爵の庶子にする条件を飲んだのでしょう。
ところがランスがアリと婚約させてしまったので、怒りが抑えられなくなった、そんなところじゃないかと申しておりました。
アイリーン殿に思わぬ反撃を食らってケガをしてしまった事で、足がついたとフランから切り捨てられると思い、私のところへ逃げ込みました。
私に全て打ち明け自死する覚悟でいましたが、思いとどまらせて私の郷里へと送らせてもらいました。
欲に目が眩んで大切なものを見失った愚か者ですが、敵ばかりの王宮で私を支えてくれた者のひとりでもあります。
どうかアイリーン殿にはお目溢しを願いたいのです。」
王子宮にいたカレンさんはきっとそれで感情を封印していた。
カレンさんもまた不幸の連鎖に飲み込まれてしまったのだと思った。
だから私にはカレンさんを責められない。
「はい、お知らせくださってありがとうございます。ずっと気にしておりました。カレンさんを私たち母娘と伯爵夫人の確執に巻き込んでしまったこと、謝っても謝り足りません。
どうかお健やかに、と。」
「許してくださいますか、真にありがとう、感謝いたします。
さあ、もう行かれよ。アリは目敏いです、ペルーはこちらが引き留めておきますから、どうぞ裏から。」
「ありがとうございます。王妃様もどうかお元気で。」
私はどこか心残りを感じながらも、王妃宮から辞去する事になった。
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