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任務完了…出来ない
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「ねぇ、ナラ。見てこれ、凄くない?」
ナラに突き出すように見せたのは漆黒の絹糸。
持ち込んだ染料に、ルバーン火山の泥炭を混ぜてみた。
「ああ、綺麗ですね。」
「これなら父のにも負けないわ。」
「そうですね。後はどう織るか、ですね。」
2人で目を合わせてニンマリと笑う。
目標のひとつは達成した。
後は実際に織ってみて具合を確かめる。
黒を真っ黒に織り上げるのは難しい。光の当たり方で白くも見えるしくすんでも見えてしまう。
それを乗り越えて「漆黒の絹布」は完成する。
バーンの織り機はレイン様が調達してくれている。サトラリアから届く織り機は今は既に海の上を進んでいる。
バーンの糸は春にならないと作れない。
深い秋に私がここにいる理由はさほどない。
糸だけ持ってエリールに帰れば、織職人達が待っている。
ウッドバーンでの織職人の養育には時間が掛かる。それはナラに託す、レイン様も助けてくれるだろう。
「ねえ、私、帰っていいよね?」
「…まだダメです!」
ぷうっと頬を膨らませて抗議してみる。
だけどナラは涼しい顔をして受け流す。
このところの毎日のお約束事になりつつある。
「まだ織り上がってないでしょ。染め直しになったらどうするの?大人しく出来上がって迎えが来るのを待ちなさい。」
「誰が来てくれるっていうの!?」
「…さあ、誰でしょうね。」
父と母はウッドバーンには絶対に来たがらない。私とナラがいなくなって工房から離れられないだろうし、それは仕方がない。
モーリ兄様はエリールの立て直しに忙しくしている。
やっと手に入れた自由貿易権。
だけれど兄様からの手紙には「失敗した。」の文字がたくさん並んでいた。
「急に価格を下げましたからね。」
今までニルスがぶんどっていた利鞘を減らして流通させたところ、初めはあまりに安すぎてニセモノだと思われたそうだ。
「売りあるく人も変わりましたしね。」
エリールには販売網が全くなかったのに、ニルス商会を解散させてしまったので、売り捌く事が出来なかった。
サトラリアとウォルソンの王族が積極的に購入してくれた絹織物がなんとか捌けているくらいで、毛織物はサッパリだ。
「…今年の夏は暑かったですからね。」
ナラはアッサリと言い捨てた。
ニルスの全量買い取り、作ることだけに専念出来ていたのはそんなに悪い事ばっかりではなかったことを痛感させられる。
「早くしないと冬には雪が深過ぎて帰れないじゃない!」
「王都になら帰れますよ?」
「…レイン様のお屋敷にはフラン様がいるもの。」
ランス国王は退位されて、王妃様と領地の離宮に移られて、ニルスの国王は王太子だったセオドアス様がもうすぐ即位される。
セオドアス様が最初にした事は、フラン様をお城から追い出した事だと囁かれていた。
「ナラだけズルいわ。」
即位式にはナラがウッドバーン総首長代理として参列する。
亡命したレイン様はニルスには戻れないからだと言ったけれど、実際はきっと違う。
「面倒だから。」「お城には良い思い出がないから。」
突き詰めるとそれに尽きるに決まっている。
レイン様はどこにいても羨ましいほどに変わらない。
今は一生懸命になって、ナラの工房の建設にかかりきりになっている。
「…誰が迎えに来てくれるって言うのよ!」
もう一度呟いた言葉をナラは完全に無視してくれた。
ナラに突き出すように見せたのは漆黒の絹糸。
持ち込んだ染料に、ルバーン火山の泥炭を混ぜてみた。
「ああ、綺麗ですね。」
「これなら父のにも負けないわ。」
「そうですね。後はどう織るか、ですね。」
2人で目を合わせてニンマリと笑う。
目標のひとつは達成した。
後は実際に織ってみて具合を確かめる。
黒を真っ黒に織り上げるのは難しい。光の当たり方で白くも見えるしくすんでも見えてしまう。
それを乗り越えて「漆黒の絹布」は完成する。
バーンの織り機はレイン様が調達してくれている。サトラリアから届く織り機は今は既に海の上を進んでいる。
バーンの糸は春にならないと作れない。
深い秋に私がここにいる理由はさほどない。
糸だけ持ってエリールに帰れば、織職人達が待っている。
ウッドバーンでの織職人の養育には時間が掛かる。それはナラに託す、レイン様も助けてくれるだろう。
「ねえ、私、帰っていいよね?」
「…まだダメです!」
ぷうっと頬を膨らませて抗議してみる。
だけどナラは涼しい顔をして受け流す。
このところの毎日のお約束事になりつつある。
「まだ織り上がってないでしょ。染め直しになったらどうするの?大人しく出来上がって迎えが来るのを待ちなさい。」
「誰が来てくれるっていうの!?」
「…さあ、誰でしょうね。」
父と母はウッドバーンには絶対に来たがらない。私とナラがいなくなって工房から離れられないだろうし、それは仕方がない。
モーリ兄様はエリールの立て直しに忙しくしている。
やっと手に入れた自由貿易権。
だけれど兄様からの手紙には「失敗した。」の文字がたくさん並んでいた。
「急に価格を下げましたからね。」
今までニルスがぶんどっていた利鞘を減らして流通させたところ、初めはあまりに安すぎてニセモノだと思われたそうだ。
「売りあるく人も変わりましたしね。」
エリールには販売網が全くなかったのに、ニルス商会を解散させてしまったので、売り捌く事が出来なかった。
サトラリアとウォルソンの王族が積極的に購入してくれた絹織物がなんとか捌けているくらいで、毛織物はサッパリだ。
「…今年の夏は暑かったですからね。」
ナラはアッサリと言い捨てた。
ニルスの全量買い取り、作ることだけに専念出来ていたのはそんなに悪い事ばっかりではなかったことを痛感させられる。
「早くしないと冬には雪が深過ぎて帰れないじゃない!」
「王都になら帰れますよ?」
「…レイン様のお屋敷にはフラン様がいるもの。」
ランス国王は退位されて、王妃様と領地の離宮に移られて、ニルスの国王は王太子だったセオドアス様がもうすぐ即位される。
セオドアス様が最初にした事は、フラン様をお城から追い出した事だと囁かれていた。
「ナラだけズルいわ。」
即位式にはナラがウッドバーン総首長代理として参列する。
亡命したレイン様はニルスには戻れないからだと言ったけれど、実際はきっと違う。
「面倒だから。」「お城には良い思い出がないから。」
突き詰めるとそれに尽きるに決まっている。
レイン様はどこにいても羨ましいほどに変わらない。
今は一生懸命になって、ナラの工房の建設にかかりきりになっている。
「…誰が迎えに来てくれるって言うのよ!」
もう一度呟いた言葉をナラは完全に無視してくれた。
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