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溢れた話
レインの未来
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即位式に向かうナラとリーンの乗った船を見送って1人屋敷へと帰ってきた。
別に寂しくなんかない。
他人の血の系譜を繋ぐために半生を費やした事に後悔は無い。
尊敬する兄上の子のモーリウスも、アイリスが産んだアイリーンも、等しく我が子と思い見守ってきた。
エリールを豊かにして、悲願をも成し遂げた。
今度はザイモックをより豊かに、ナラを一人前の為政者に、やりたいことはまだまだ続く。
尊敬していた兄が残したものを守ることに迷いなんてなかった。
アイリスを傷付けてしまうことだけが心残りだったけれど、アイリスならきっとわかってくれる、フランとは兄を偲んで生きていけるはずだ、そう思っていたのに。
自身の血の系譜が繋がらないことを時に侘しく思う時がある。
「俺、子供が産まれるんです。」
ちょっと一杯やろうと、酒を持ってやって来たのは、火消し1番隊隊長のタンジ。
5年前のザイモックの大火で半身火傷を負ったタンジは顔の半分に酷い熱傷の痕が見える。
その為か長らく恋愛すらしていなかったが、ここに来て10も若い子と結婚したかと思うと、ふた月も経たずに子供が出来たそうだ。
俺とそんなに歳は違わないのに。
感傷的になるのはタンジの惚気を聞いているからかもしれない。
そういえば、エリールにいた時から幸せな夫婦をたくさん見てきたな。
エリールの女は強い。しかしそれだけじゃない。普段は好き勝手に夫を尻の下に敷いていてもここぞと言うところでは決して夫を蔑ろにはしない。
だからこそ夫達は喜んで妻の尻に敷かれていられる。
「レニーはもう結婚はしないの?」
ポツリ漏らしたタンジの言葉に口に含んでいた酒を吐き出した。
「汚ったねーなぁ。」
布巾で周りを拭きながら、タンジは続ける。
「レニーだってもう一花咲かせられるだろうに。」
「俺、一応まだ結婚してるんだけど。」
「うん、知ってる。夫の話も理由も聞かずに実家に出戻った、自称悲劇のヒロイン様とだよね。」
火消しという命を張った仕事をしているせいか、タンジの言葉はストレートで容赦ないな。
「…レニーさあ、ウッドバーンの住人だよね?」
「まあ、ニルスにはもう帰れないから、そうなるな。」
「奥さん、こっちには来ないんだろう?」
…あのフランが、か?想像すら出来ない。
「来るわけがない、ありえない。」
「じゃあさ、レニー、ルバーン教を信仰すれば良いんじゃない?」
「…話が見えないな、なぜ改宗しろと?」
「ああ、もちろん無理にとは言わないけどさ。ルバーン教の信者で、ウッドバーンの住民ならもう1人妻を娶れるだろ?
俺さ、見た目こんなんじゃん、もう結婚とか絶対無いと思ってたんだけど。ミリーと出会って、よくわかんないうちに夫になってもうすぐ親になる。
レニーもさ、人のことばかりじゃなくて、そろそろ自分のために生きても良いんじゃないか?」
…考えたことも無かった。
そういえばウッドバーンは一夫多妻の国だった。
フランとはもうダメだろうし、モーリも立派に独り立ちした。なんだかんだでモーリは俺に似て優しいから、母親を無碍には出来ないだろう。
…親子だな、と思う。血のつながりはないけれど、共に暮らした絆はある。
最後の最後で自分を殺して、領地を選ぶところなんか似なくても良かったのに。
リーンは…。もうウッドバーンには来ないかもしれないな。
辛い役回りを押し付けられて散々酷い目にあった娘だから、これからは幸せでいて欲しい。
ナラの存在もある。
ナラを育てあげれば俺の役目は終わる。
そういえばあの時の後継は今の俺とさほど歳は変わらない。
…いいのかな。もう自由になっても良いのかな。
…とりあえず、今度モーリに相談してみようか。
別に寂しくなんかない。
他人の血の系譜を繋ぐために半生を費やした事に後悔は無い。
尊敬する兄上の子のモーリウスも、アイリスが産んだアイリーンも、等しく我が子と思い見守ってきた。
エリールを豊かにして、悲願をも成し遂げた。
今度はザイモックをより豊かに、ナラを一人前の為政者に、やりたいことはまだまだ続く。
尊敬していた兄が残したものを守ることに迷いなんてなかった。
アイリスを傷付けてしまうことだけが心残りだったけれど、アイリスならきっとわかってくれる、フランとは兄を偲んで生きていけるはずだ、そう思っていたのに。
自身の血の系譜が繋がらないことを時に侘しく思う時がある。
「俺、子供が産まれるんです。」
ちょっと一杯やろうと、酒を持ってやって来たのは、火消し1番隊隊長のタンジ。
5年前のザイモックの大火で半身火傷を負ったタンジは顔の半分に酷い熱傷の痕が見える。
その為か長らく恋愛すらしていなかったが、ここに来て10も若い子と結婚したかと思うと、ふた月も経たずに子供が出来たそうだ。
俺とそんなに歳は違わないのに。
感傷的になるのはタンジの惚気を聞いているからかもしれない。
そういえば、エリールにいた時から幸せな夫婦をたくさん見てきたな。
エリールの女は強い。しかしそれだけじゃない。普段は好き勝手に夫を尻の下に敷いていてもここぞと言うところでは決して夫を蔑ろにはしない。
だからこそ夫達は喜んで妻の尻に敷かれていられる。
「レニーはもう結婚はしないの?」
ポツリ漏らしたタンジの言葉に口に含んでいた酒を吐き出した。
「汚ったねーなぁ。」
布巾で周りを拭きながら、タンジは続ける。
「レニーだってもう一花咲かせられるだろうに。」
「俺、一応まだ結婚してるんだけど。」
「うん、知ってる。夫の話も理由も聞かずに実家に出戻った、自称悲劇のヒロイン様とだよね。」
火消しという命を張った仕事をしているせいか、タンジの言葉はストレートで容赦ないな。
「…レニーさあ、ウッドバーンの住人だよね?」
「まあ、ニルスにはもう帰れないから、そうなるな。」
「奥さん、こっちには来ないんだろう?」
…あのフランが、か?想像すら出来ない。
「来るわけがない、ありえない。」
「じゃあさ、レニー、ルバーン教を信仰すれば良いんじゃない?」
「…話が見えないな、なぜ改宗しろと?」
「ああ、もちろん無理にとは言わないけどさ。ルバーン教の信者で、ウッドバーンの住民ならもう1人妻を娶れるだろ?
俺さ、見た目こんなんじゃん、もう結婚とか絶対無いと思ってたんだけど。ミリーと出会って、よくわかんないうちに夫になってもうすぐ親になる。
レニーもさ、人のことばかりじゃなくて、そろそろ自分のために生きても良いんじゃないか?」
…考えたことも無かった。
そういえばウッドバーンは一夫多妻の国だった。
フランとはもうダメだろうし、モーリも立派に独り立ちした。なんだかんだでモーリは俺に似て優しいから、母親を無碍には出来ないだろう。
…親子だな、と思う。血のつながりはないけれど、共に暮らした絆はある。
最後の最後で自分を殺して、領地を選ぶところなんか似なくても良かったのに。
リーンは…。もうウッドバーンには来ないかもしれないな。
辛い役回りを押し付けられて散々酷い目にあった娘だから、これからは幸せでいて欲しい。
ナラの存在もある。
ナラを育てあげれば俺の役目は終わる。
そういえばあの時の後継は今の俺とさほど歳は変わらない。
…いいのかな。もう自由になっても良いのかな。
…とりあえず、今度モーリに相談してみようか。
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