政略結婚は不幸の種 知らない間に織物職人は第二王子の婚約者になっていました

枝豆

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オマケ

ペルー3

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程よく酒が廻り始めた頃、マクシマムは話を直球でぶつけてきた。

「ペルー、最近何か心配事でもあるのか?このところ何やら思い詰めているとアイリーン様がご心配していらっしゃる。」

「いえ、特には…。」

そう答えながら、腹芸が出来ないアイリーン様にまで、憂いが見透かされていた事に更に落ち込む。

「…そうか。まあ飲め。」
そう言って3人は私のグラスに酒を注いでいく。

「私はもういいわ。何かあったら困るもの。」
筆頭護衛官が2人と筆頭侍従、領主代行子息という顔ぶれで酔いが回る事は避けたかった。
「休暇中だろ。」
とアレンは言い、
「お二人はトーラスさんの屋敷にいるんだ、大丈夫だよ。」
とクリスは言う。

そう、思い出した。あの屋敷は普通じゃない。
「あの屋敷はなんなの?まるで要塞みたいね。」
「ザイモック後継が隠れ住んだ屋敷だよ、普通の屋敷な訳がない。」

ああ、なるほど。言われてみたらそうか。
桑林に囲まれてひっそりとはしているけれど、なかなか綿密に計算され尽くした屋敷だとは思っていた。

「だから、ホラ、飲んで飲んで。」
マクシマムに言われるまま、躊躇いながらもグイっとグラスの酒を飲み干した。

ウィスキーという酒は普段とは違う酔い方を導き出すようだ。
気付いた時には遅かった。
マクシマム達は執拗にペルーの悩みを聞きたがった。
初めこそ上手く躱わせていたつもりだったけれど、酒が進む間にペルーは問われるまま今の心情を口に出してしまった。

「私は本当にアイリーン様に必要とされているのかわからない。」と。

「そんな事はない。」
と皆は口を揃えて慰めてくれるけれど、ペルーの不安は消えない。

「だって、今日だって人を減らすとなった時、一番に名前が出たのが私なのよ!」
「大丈夫、ああ見えてリーンはちゃんと考えている。
ったく、本当エリールの女は素直じゃない。
いつもありがとう、たまには休んでって言えば良いだけなのに。」

「どういう事?」
アイリーン様はとても素直な方だ。思った事はなんでも顔に出すし、嘘は上手ではない。

「リーンが身を任せられるのはペルーだけって事だよ。」

クリスがあまりにもそれが当たり前だと言いたげにあっさりと吐いた言葉を聞かされて、ドキンっと身体中に鳥肌がたった。
私だけ…。どう言う事?
父は私じゃなくても護れるって、そういうのに。

それなのに、
「ああ、そうだな。」
とアレンが同意し、マクシマスも深く頷いてクリスの言葉を肯定してくれる。
「ルカリオ閣下は早く娘を解雇しろと煩いけどな。」
「父はマクシマムにもそう言っているのね。」
「えっ?ペルーのお父様ルカリオ様なの!?」
今度はクリスが驚いて目を丸くしている。

…知らなかったか?
ああ、内緒事だった。つい口が滑った。いや、滑らせたのはマクシマムの方だ。
それよりも大事なのは今はそんな事ではない。

「慰めなら要らないわ。」 
そう気休めの慰めなんてなんの意味もない。
私より剣の腕が立ち、私より体術に優れている者はたくさんいる。
私よりアイリーン様を護れる人はゴロゴロいる、まさに父が言う通りだ。

そう言うと、すかさず違うと擁護してくれたのはアレンだった。

「アイリーン様が最初に城に入った時、剣技や体術の巧さより優先されたのは信用だった。
セオドアス様が推薦した中でレイン様が了承したのはペルーだけだ。
まあ、閣下は納得してなかったけど。
今だにアイリーン様はそれを踏襲していらっしゃる。」

思いもかけないアレンの暴露に酔ったペルーの理解が追いつかない。
「セオドアス様とレイン様が?それは与し易いからじゃないの?」
そうよ、あの頃レイン伯爵はアイリーン様の救出を画策していたもの。

「違うよ。あの時は本気でリーンを護れる人を付ける必要があった。離宮にフラン様がいたからね。忘れちゃった?」
「ああ、そうだ。アイリーン様の周りに付く人はかなり厳選していた。
最低限以下の人数にセオドアス様は懸念されていたけれど、多ければいいってものじゃないとレイン様が弾いたと聞いている。」
クリスの言葉にマクシマスが付け足した。

「僕と母の入城が遅れたのは僕達が脱出要員だったから。セオドアス様に待てと言い渡されたんだ。
そして入ってすぐに母と頭を抱えたよ。
ペルーがどうしても計画の綻びにしか見えなかったからね。
アレコレやってはみたけれど、結局どうする事も出来ずに王妃宮までペルーを連れて行くしか無かった。

王妃様が素早くそれを察知してくれて、引き止めると申し出てくださった。
でなければ、ペルーと剣を合わせる事になってたと思う。あの時の状況下じゃきっと時間を取られてアレンに捕まって、脱出は出来なかっただろうな。」

「私が…綻び?」
「そう、綻び。」
よーく考えてみて?とクリスは言った。

「セオドアス様と王妃様にとってリーンの脱出は確定事項だ。お二人の周りの騎士達はそのように動いていた。
ペルーひとりがどんなに頑張っても無理だよ。」

「ああ、そうだな。警護はひとりじゃ無理だ。あの時のカレンの行動はペルーひとりでは防ぎきれない。
開かないはずの扉を警護していたのは3人。うち外側にいた2人はカレンに誘導され内側にいた残りの1人が刺客と化した。
ペルーを退かそうとはカレンはしなかった。しても無駄だと思ったか、する事で邪魔される事を恐れたに違いない。
あれから警備配置の見直しを何度もしているけれど、貴人の寝室に2人以上を配置する以外考えられない。
貴人に嫌がられたら終わりだ。」

そう言ってくれるマクシマスの言葉がじわりと胸を熱くする。
長く悩んでいたというのに、アリストリア殿下の筆頭護衛官の言葉はペルーの後悔の思いを少しだけ軽くしてくれた。

「思い出せよ、ペルー。あの時犯人を追おうとしたペルーを引き止めたのは誰だ?
以来、どこかに行く時に必ず連れて行くのは誰だ?」

「あの時…?私を引き止めたのは…。」

思い出した、そうだ、アイリーン様ご自身だった。
アイリーン様自らが「ここにいて。」と。

そして、それ以来アイリーン様が必ず同伴されるのはペルーだけだ。
公の場にはライラは出さない。エリールやザイモックには既婚者のリンダは伴わない。

「そうだ、ペルーだけだ。だから人を減らせる時にはまずペルーを外す。アイリーン様はペルーを休ませてあげられてない事をいつも気に掛けていらっしゃる。
今回だってそうだ。何か悩んでいるようなのに、でなければ疲れてるんじゃないかってね。

まだ納得出来ない?
じゃあ、アイリーン様の周りの人を減らせる時はどんな時?」

どんな時?
護衛の人数が増えた時。それは…いつも…決まって…
「…アリストリア殿下と共にいらっしゃる時…?」

そうだと3人は微笑んだ。

「ペルーはアリストリア殿下の次だよ。それ凄くない?」

凄い…と誇ってもいいのかな。父は認めてくれるだろうか。
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