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オマケ
待ち合わせは難しい
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アイリーンは考えた。
「なんでいつもすれ違ってしまうんだろう?」
今年の春、バーンの毛を刈るためにお城からエリールに戻った。
エリールに滞在するときは、今は死んじゃった祖父母の屋敷に滞在する事と決まっている。
祖父母の家は人の目から隠れて暮らしていたお祖父ちゃんのための屋敷だから、ローラ様が警備がしやすいと勧めてくれた。
今日は私を追いかけてアリがエリールに迎えに来てくれると聞いた。
だから私はまずは領主館に挨拶をするだろうと領主館でローラ様と待っていたのに。
アリは真っ直ぐに父母の家に向かってしまった。
クリスからそのことを聞いて慌てて父母の家に行ったのに警備兵はいるのに肝心のアリがいない。
残っていた警護兵が領主館に向かったと教えてくれて、元来た道を引き返す。
出迎えてくれたのは、呆れたローラ様だけ。
アリは再び父母の工房へと引き返したらしい。
「なんでいつもすれ違っちゃうんだろう…?」
と冒頭に戻る。
「大人しくじっとしてないからよ。リーンはただじっと待ってれば良いんだから。」
とローラ様は言うけれど…。
ただ待ってるだけなんて!!一刻も早くアリに会いたいのに!!
アリがじっと私を待っていればいいのに、短くない旅路できっと疲れている、ゆっくりと待って体を休めればいいのに!とリーンは思う。
もう一度工房に行こうと思ったのに、ローラ様に引き留められた。
「だから、待っていなさいって言ってるでしょう!?殿下は直ぐに迎えに来てくれるから!!
お茶を淹れるから座っていなさいな。それでも暇ならお菓子でも焼いていなさい。」
アリに会いたいと早る気持ちを堪えて、渋々とローラ様とお茶を飲みながら待つこと数十分。
その数十分が惜しいのに。
「何故…こうもすれ違う。」
アリストリアの機嫌はすこぶる悪い。
仕事の虫のリーンの事だから、大人しく屋敷でじっとしていないって事は予想できる。
絶対義父母の工房にいるのだと思っていた。
出迎えてくれたアイリス殿は、今日は俺を出迎える為に領主館で待っている筈だと教えてくれた。
あわてて元来た道を引き返す。
出迎えたのは領主代行夫人のローラだけ。
「行き違ってしまったみたいですね。
しばらくしたら戻ってきますよ、ここでお待ちになっていたら?」
と呑気に言うけれど。
「工房に行ったら…仕事を始めたりはしないだろうか?」
俺の言葉にローラはグッと黙り込んだ。
「否定出来ないところが…申し訳ないです。」
恐縮するローラだが、ローラが悪い訳じゃない。
大人しくじっとしてくれないリーンが悪いのだ。
もしまたリーンが戻ってきたら今度こそ引き留めておきますから、とローラが請け負ってくれ、再び義父母の工房へと向かう事にした。
結局それは空振りに終わり、また領主館に戻り、ようやくリーンと数日ぶりに会う事が出来た。
「何故…こうもすれ違うのだ…?」
と冒頭に戻る。
ローラと息子のクリスに見送られて、後継が住んでいた農園の屋敷にリーンを馬車に乗せて向かう。
ようやく二人きりでゆっくりと過ごせると思うと、先程の苛立ちはどこかに霧散していった。
一方で領主館に残ったローラとクリスは仲良く親子で夕食を囲んでいた。
「母さん、いい加減殿下やマクシマム護衛官にも隠し道を教えてあげたら?」
リーンとアリストリア殿下が別々でエリールを訪れた時、2人がすれ違ってしまうのはこれが原因だ。
「ダメですよ、あの道は万が一何かが起きた時のための逃げ道なんだから。
ニルス王族に知られるわけにはいかないでしょう?
モーリに何かあったらどうするの?
それに隠し道はいくつかある。それを全部教えたって、リーンを根本から叩き直さないとすれ違いは防げない、隠し道同士ですれ違うのがオチよ。
リーンは待ってればいいの!!
ペルーが教えちゃうのは仕方ないけれど、私やモーリから教える事は絶対ないわ!!」
と母は譲らない。
周りを桑畑で囲まれた後継の自宅と農園、領主館、そしてアイリスとアイリーンが住んでいた工房と。
いつその身柄がニルスに攫われるかわからないと、前々領主様やレイン様は脱出経路をいくつも用意していらした。
リーンがただの近道だと思っているその脱出経路は、徒歩でのみ移動が可能な道ばかりだ。しかもいくつかある脱出経路をリーンは巧に使い分けるように生まれながら叩き込まれてしまっている。
悪路だけど近い道、少し遠回りだけれどなだらかな道。
雪が積もりにくいように木々で覆われた道。
荷車が通れる道。
植樹し背丈の高い草を配置し、計算され尽くされてできた道を歩く者の姿は、大通りを馬車で移動する殿下からは見つける事は出来ない。
「ペルーが教える事は…ないと思うよ。」
母から「秘密」と言われたら、絶対にペルーは秘密にするだろう。
カレンの襲撃に城からの脱走。3度目の失敗は許されないと宰相閣下からキツく言い渡されているペルーは今はエリールの地理を覚えるのに必死だ。
まだ知らない道があるのでは?その道を使って逃げられてしまったら…。と不安は尽きないらしい。
真面目なペルーは母に嫌われてしまったら、エリールでリーンを守りきる事は出来ないと考えているし、それはあながち間違いじゃない。
必要であれば母だけじゃない、僕もモーリ様もリーンを誰にも気付かれずに攫える自信はある。今はまだ地の利は僕達にあるのだから。
それに母の言う通りだ。
根本の、「座して待つ」事ができればなんて事はない。
ここで待つと2人で約束を交わせば済むだけの話だ。
少しでも早く…。その気持ちが空回りしているだけ。
「それに、ちょっとくらい苦労した方が会えた時の喜びが増すものよ、スパイスよ、スパイス!!」
と母は言い切る。
アレンは母を「嘘つきローラ」と揶揄するけれど、母は嘘はつかない。ただ黙っていて話さないだけの、「意地悪ローラ」が正しいと、息子の僕は思っている。
「なんでいつもすれ違ってしまうんだろう?」
今年の春、バーンの毛を刈るためにお城からエリールに戻った。
エリールに滞在するときは、今は死んじゃった祖父母の屋敷に滞在する事と決まっている。
祖父母の家は人の目から隠れて暮らしていたお祖父ちゃんのための屋敷だから、ローラ様が警備がしやすいと勧めてくれた。
今日は私を追いかけてアリがエリールに迎えに来てくれると聞いた。
だから私はまずは領主館に挨拶をするだろうと領主館でローラ様と待っていたのに。
アリは真っ直ぐに父母の家に向かってしまった。
クリスからそのことを聞いて慌てて父母の家に行ったのに警備兵はいるのに肝心のアリがいない。
残っていた警護兵が領主館に向かったと教えてくれて、元来た道を引き返す。
出迎えてくれたのは、呆れたローラ様だけ。
アリは再び父母の工房へと引き返したらしい。
「なんでいつもすれ違っちゃうんだろう…?」
と冒頭に戻る。
「大人しくじっとしてないからよ。リーンはただじっと待ってれば良いんだから。」
とローラ様は言うけれど…。
ただ待ってるだけなんて!!一刻も早くアリに会いたいのに!!
アリがじっと私を待っていればいいのに、短くない旅路できっと疲れている、ゆっくりと待って体を休めればいいのに!とリーンは思う。
もう一度工房に行こうと思ったのに、ローラ様に引き留められた。
「だから、待っていなさいって言ってるでしょう!?殿下は直ぐに迎えに来てくれるから!!
お茶を淹れるから座っていなさいな。それでも暇ならお菓子でも焼いていなさい。」
アリに会いたいと早る気持ちを堪えて、渋々とローラ様とお茶を飲みながら待つこと数十分。
その数十分が惜しいのに。
「何故…こうもすれ違う。」
アリストリアの機嫌はすこぶる悪い。
仕事の虫のリーンの事だから、大人しく屋敷でじっとしていないって事は予想できる。
絶対義父母の工房にいるのだと思っていた。
出迎えてくれたアイリス殿は、今日は俺を出迎える為に領主館で待っている筈だと教えてくれた。
あわてて元来た道を引き返す。
出迎えたのは領主代行夫人のローラだけ。
「行き違ってしまったみたいですね。
しばらくしたら戻ってきますよ、ここでお待ちになっていたら?」
と呑気に言うけれど。
「工房に行ったら…仕事を始めたりはしないだろうか?」
俺の言葉にローラはグッと黙り込んだ。
「否定出来ないところが…申し訳ないです。」
恐縮するローラだが、ローラが悪い訳じゃない。
大人しくじっとしてくれないリーンが悪いのだ。
もしまたリーンが戻ってきたら今度こそ引き留めておきますから、とローラが請け負ってくれ、再び義父母の工房へと向かう事にした。
結局それは空振りに終わり、また領主館に戻り、ようやくリーンと数日ぶりに会う事が出来た。
「何故…こうもすれ違うのだ…?」
と冒頭に戻る。
ローラと息子のクリスに見送られて、後継が住んでいた農園の屋敷にリーンを馬車に乗せて向かう。
ようやく二人きりでゆっくりと過ごせると思うと、先程の苛立ちはどこかに霧散していった。
一方で領主館に残ったローラとクリスは仲良く親子で夕食を囲んでいた。
「母さん、いい加減殿下やマクシマム護衛官にも隠し道を教えてあげたら?」
リーンとアリストリア殿下が別々でエリールを訪れた時、2人がすれ違ってしまうのはこれが原因だ。
「ダメですよ、あの道は万が一何かが起きた時のための逃げ道なんだから。
ニルス王族に知られるわけにはいかないでしょう?
モーリに何かあったらどうするの?
それに隠し道はいくつかある。それを全部教えたって、リーンを根本から叩き直さないとすれ違いは防げない、隠し道同士ですれ違うのがオチよ。
リーンは待ってればいいの!!
ペルーが教えちゃうのは仕方ないけれど、私やモーリから教える事は絶対ないわ!!」
と母は譲らない。
周りを桑畑で囲まれた後継の自宅と農園、領主館、そしてアイリスとアイリーンが住んでいた工房と。
いつその身柄がニルスに攫われるかわからないと、前々領主様やレイン様は脱出経路をいくつも用意していらした。
リーンがただの近道だと思っているその脱出経路は、徒歩でのみ移動が可能な道ばかりだ。しかもいくつかある脱出経路をリーンは巧に使い分けるように生まれながら叩き込まれてしまっている。
悪路だけど近い道、少し遠回りだけれどなだらかな道。
雪が積もりにくいように木々で覆われた道。
荷車が通れる道。
植樹し背丈の高い草を配置し、計算され尽くされてできた道を歩く者の姿は、大通りを馬車で移動する殿下からは見つける事は出来ない。
「ペルーが教える事は…ないと思うよ。」
母から「秘密」と言われたら、絶対にペルーは秘密にするだろう。
カレンの襲撃に城からの脱走。3度目の失敗は許されないと宰相閣下からキツく言い渡されているペルーは今はエリールの地理を覚えるのに必死だ。
まだ知らない道があるのでは?その道を使って逃げられてしまったら…。と不安は尽きないらしい。
真面目なペルーは母に嫌われてしまったら、エリールでリーンを守りきる事は出来ないと考えているし、それはあながち間違いじゃない。
必要であれば母だけじゃない、僕もモーリ様もリーンを誰にも気付かれずに攫える自信はある。今はまだ地の利は僕達にあるのだから。
それに母の言う通りだ。
根本の、「座して待つ」事ができればなんて事はない。
ここで待つと2人で約束を交わせば済むだけの話だ。
少しでも早く…。その気持ちが空回りしているだけ。
「それに、ちょっとくらい苦労した方が会えた時の喜びが増すものよ、スパイスよ、スパイス!!」
と母は言い切る。
アレンは母を「嘘つきローラ」と揶揄するけれど、母は嘘はつかない。ただ黙っていて話さないだけの、「意地悪ローラ」が正しいと、息子の僕は思っている。
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