政略結婚は不幸の種 知らない間に織物職人は第二王子の婚約者になっていました

枝豆

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オマケ

占い師1

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「王都で占いが流行っているらしい。」
そんな噂を聞き込んでアレンに伝えてきたのは、ライラの弟のホーキンスだった。

アイリーン様が逃走したカレンを再び城に戻すと決めた時、もう二度と同じ轍は踏ませないとホーキンスを自陣の中に入れ込んだのはある意味では人質のようなものだと思っていた。
弟が姉を戒め、姉が弟を戒めるだろう、と。

これが意外や意外。
ランス陛下に仕えていたホーキンスはとても真面目で優秀な侍従官だった。

…まあ、周囲が支えていたような王だったからな。

口にこそ出さないけれど、ランス陛下の感情的で場当たり的な政治手腕に、周囲は時にヒヤヒヤさせられたものだ。

そのホーキンスが「占い師」という眉唾物な話を持ち出して来た事が妙に奇異に見えた。
その事を伝えると、

「だからこそ、ですよ。若い女の子達が随分と入れあげてしまっているみたいです。」
と真面目顔で反論された。

聞けば、城で働く官僚の妹や恋人が占い師の戯言を間に受けて、婚約破棄だの駆け落ちだのと騒動を繰り広げているらしい。

「相手の父親の前で身に覚えのない浮気を疑われて、肩身の狭い思いをしたと嘆く者もいましたよ。
いいんですかね?放っておいて。百害あって一利なしなんじゃないですかね?」

と言われたら、放っておく事も憚られる。しかしわざわざ殿下方に判断を仰ぐような事柄とは到底思えない。

「と、いう事で、俺行ってみようかと思ってるんですよ。」
試しに自分が話を聞いてくるから、客観的に判断してほしいと言うホーキンスに、アレンは自分も行くと答えたのだった。

百聞は一見にしかず、と思いアレンも共に行ってみる事にしたのはどこか虫の知らせだったのかもしれない。

着いたのは旧街道沿いにある集合住宅だった。棟割タイプの大きな建物を縦に区切り、それぞれに入り口がある。
その端の一室にその占い師が営む館があった。

「特に怪しげな雰囲気はないですね。」
呪いや占いにありがちな、異国風の装飾は見られない。
ここが占いをする場所だと想像出来るのは壁にかけられた数枚の絵画くらいか。
おそらく神話に出てくる神々やそれにまつわる説話の場面を絵にしたものだと思われる。

神の怒りを買って天罰を下された男、建国神話に出てくる醜女とその夫となる若者、その美しさで神に攫われた女と女を失って嘆く夫…などなど。

現れた占い師はアレンには見慣れたウッドバーン風の衣装を来た婦人だった。
が、風だ、風。アレンが知るウッドバーンの装束ではない。
そもそもだ。ウッドバーンの国教のルバーン教は奉っている神が全く違う。壁の絵画はこの国の神々なのに…。

胡散臭い…。アレンはそう断じた。
城に戻ったらルカリオ宰相と相談して何かしらの手を打とうとさえ思った。
インチキで人心を惑わす輩は排除もやむなし…と。

そんな事をおくびにも出さず、ホーキンスは取ってつけた悩みを口にした。
「姉が行き遅れてて…。」

つい笑ってしまいそうになるのをなんとか堪える。
一度修道院に身を投じたカレン、ライラと名を変え還俗こそしたものの生かされた命をアンリ王妃とアイリーン妃殿下に捧げる覚悟は揺らいではいないのに。

ライラとして作られた、ライラの生まれ年、生まれ月、生まれ日を確認した占い師はしたり顔でこう宣った。

「死者の相。命が感じられない。」

ホーキンスの身体がピクリと強張るのが後ろから見ていても明らかだった。

「あなたの姉は自分のためにこの世を生きていない。死者に未来を望んでも無駄だ。好きにさせるしかない。この世に繋ぎ止めておきたいなら放っておけ。」

アレンの背筋に鳥肌が立った。
何故だ?何故わかった?何故そのような事を言い切れる?

「冷やかしなら去れ。」
そう言って占い師は立ち上がりかける。

「待て!待ってくれ!!」
アレンは無意識で占い師を引き留めていた。
これだけでは真偽はわからない。たまたまかもしれない。

「…幾分かマシになったか。良いだろう、話は聞いてやる。」

そう言って占い師はアレンとホーキンスに場所を変わるように告げた。
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