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後悔
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あー、なんでこんな事になっちゃったかなぁ。
レイチェルはバルコニーの手すりに寄りかかって、下に見える楽しそうなお茶会の様子を見下ろしながら、ため息をついた。
…私行かなくて本当によかったのかなぁ、ブリトーニャ様のお茶会に。
キッテン王国の王太子ステファン殿下が主催する、この度正式にステファン殿下の婚約者となった隣国の王女ブリトーニャ様のお披露目のお茶会なのに…。
まるで見せつけるように、ステファン殿下の腕にブリトーニャ様は自分の腕を巻き付けて、嬉しそうに笑顔を見せていた。
私は、どこで間違っちゃったのかなぁ。
閉じ込められた部屋の中で、幾度も幾度もひとり脳内反省会をしてみても、何が悪かったかって、ひとつしか考えられない。
あの日、あの夜、あのプロポーズを受けてしまったのが、最初のそして最大の過ちだった。
王太子ステファン殿下の婚約者選定のために、選ばれた最初の10人の中に、ギリギリ入ったのが間違いの始まりだった?と考えて、いや、違う。あれは名誉な事だった、とレイチェルは思い直す。
隣国の王族の姫を筆頭に、公爵、侯爵…高位貴族の令嬢が居並ぶ中、「機会だけは平等に与えよ。」と誰が言い出したのかはわからないが、伯爵家からも幾人かの令嬢が候補の中に滑り込むことを許された。
フィリア伯爵令嬢レイチェルはその滑り込んだうちのひとりでしかなかったはずだった。
だから頑張ったのだ。
何を?これからの人脈作りを、だ。
レイチェルの目的はひとつだけの王太子妃の椅子ではなく、将来の王妃となる王太子妃となるご令嬢に目を掛けて貰えるようになること、そしてあわよくば、王太子を支える貴族令息に自分を見つけてもらう事だった。
だから頑張ったんだよ?
レイチェルの父のフィリア伯爵、後継となる兄の予想はグレイシア公爵家のアデリーナ様だったんだから。
アデリーナ様に気に入ってもらえるように、可愛がって貰えるようにと、頑張ったんだ。
その甲斐あって、3歳歳上のアデリーナ様は、レイチェルをとても可愛がってくれたと思う。
それはそれはとても優しい姉ようにレイチェルを気に掛けてお側に置いて下さった。
隙があれば足を引っ張り合う婚約者候補達の中で、いつも2人で一緒に過ごして、2人でお喋りをして、笑って…。
レイチェルのピアノに合わせてアデリーナ様が歌を歌ったという名誉なこともあった。
…ああ、あの歌声はとっても素敵だった。
ステファン殿下も、王弟子息のエルンスト様も、お付きの騎士様もうっとりと瞳を閉じて歌声に耳を寄せて下さった。
次々に篩い落とされていったご令嬢達だったけれど、アデリーナ様、ブリトーニャ様、私、と最後の3人に残るまでになったのは、アデリーナ様に可愛がっていただいたからに他ならない。
私、随分と頑張ったでしょう?
父や兄に託された、王族の目に留まり公爵家との縁を深めるというお役目は果たせた、と思う。
後はアデリーナ様が婚約者内定の栄誉を受ける場面で盛大にお祝いを伝えるだけ。
ところが。
「レイチェルとは暫しのお別れね。」
「…せっかくお目にかけて頂いたのに…寂しいです。」
明日、最後のひとりを残して城を去るという晩、今までの御礼とお別れのご挨拶をするためにアデリーナ様のお部屋を訪れていた私。
「またすぐ会えるわ。」
とアデリーナ様は仰って下さった。
素直に嬉しかった。
公爵家のアデリーナ様はもうすぐ王太子妃になる。そうなったら伯爵令嬢如きは普通ならなかなか会える存在ではなくなってしまう。
ただ、アデリーナ様が手を差し伸べて呼び寄せてくれない限りは。
またすぐ会えるわ。
それは、レイチェルにとっては最高のお言葉だった。
アデリーナ様がレイチェルを取り巻きのひとりに引き上げてくれるという事だと思ったから。
だけど、続けてアデリーナ様が仰ったことはレイチェルの想像とは全く異なるものだった。
「最後に残るのはレイチェルよ、だってステファン殿下は最初からレイチェルしか見てなかったもの。
ううん、それで良いのよ。私もレイチェルなら十分に王太子妃、将来の王妃として相応しいと思いますわ。
レイチェル様、このアデリーナ、どんなに離れていてもレイチェル様を見守っていることをどうかお忘れにならないで下さいね。」
頭の中に疑問符が山のように浮かんで飛び跳ねた。
???…なんですと?
「私、レスボート国にラインハルト王太子妃として嫁ぐ事になりましたの。次、お目にかかれるのはどちらの結婚式が先でしょうかね。私、楽しみにしていますわ。
キッテンとレスボート、2国の友好のためにいつまでも仲良くしてくださいませね。」
「ラインハルト…王太子?」
「そう、ステファン殿下の側にいらした、あのラインハルト様よ。身分をお隠しになってご留学されていたそうよ。
うふふ、4人でたくさんお喋りして、楽しかったわね。」
レスボートの王太子は、外交戦略のひとつで近隣国から王族かそれに匹敵する貴族を妃として迎え入れる風習がある。
候補としてブリトーニャ様とアデリーナ様が候補に上がっていたけれど、表立って2人を比べる事は外交面で出来ない。
そこで、キッテンの王太子の婚約者選定に2人を紛れ込ませて、ラインハルト殿下はステファン殿下の側近としてコッソリと見比べていたそうだ。
「じゃあ、初めからステファン殿下と結婚するおつもりはなかったんですか!!」
「そういう訳じゃないわ。でも直ぐにわかっちゃったのよ。ステファン殿下はずっとレイチェルを側に置いていたから、必然的にラインハルト殿下とお喋りすることになって。
だから…騙すつもりはなかったわよ。
レイチェルのお陰で私王妃になれるの、まるで夢のようだわ。」
そう言ってアデリーナ様は翌朝荷物を纏められて、ラインハルト王太子にエスコートされてお城から出て行ってしまわれた。
それはそれは嬉しそうに、眩しいくらいに輝いた笑顔で。
いつの間にか、外遊していた国王陛下が帰国次第フィリア伯爵令嬢レイチェルは王太子の婚約者として国民に向けて発表される事になっていた。
レイチェルはバルコニーの手すりに寄りかかって、下に見える楽しそうなお茶会の様子を見下ろしながら、ため息をついた。
…私行かなくて本当によかったのかなぁ、ブリトーニャ様のお茶会に。
キッテン王国の王太子ステファン殿下が主催する、この度正式にステファン殿下の婚約者となった隣国の王女ブリトーニャ様のお披露目のお茶会なのに…。
まるで見せつけるように、ステファン殿下の腕にブリトーニャ様は自分の腕を巻き付けて、嬉しそうに笑顔を見せていた。
私は、どこで間違っちゃったのかなぁ。
閉じ込められた部屋の中で、幾度も幾度もひとり脳内反省会をしてみても、何が悪かったかって、ひとつしか考えられない。
あの日、あの夜、あのプロポーズを受けてしまったのが、最初のそして最大の過ちだった。
王太子ステファン殿下の婚約者選定のために、選ばれた最初の10人の中に、ギリギリ入ったのが間違いの始まりだった?と考えて、いや、違う。あれは名誉な事だった、とレイチェルは思い直す。
隣国の王族の姫を筆頭に、公爵、侯爵…高位貴族の令嬢が居並ぶ中、「機会だけは平等に与えよ。」と誰が言い出したのかはわからないが、伯爵家からも幾人かの令嬢が候補の中に滑り込むことを許された。
フィリア伯爵令嬢レイチェルはその滑り込んだうちのひとりでしかなかったはずだった。
だから頑張ったのだ。
何を?これからの人脈作りを、だ。
レイチェルの目的はひとつだけの王太子妃の椅子ではなく、将来の王妃となる王太子妃となるご令嬢に目を掛けて貰えるようになること、そしてあわよくば、王太子を支える貴族令息に自分を見つけてもらう事だった。
だから頑張ったんだよ?
レイチェルの父のフィリア伯爵、後継となる兄の予想はグレイシア公爵家のアデリーナ様だったんだから。
アデリーナ様に気に入ってもらえるように、可愛がって貰えるようにと、頑張ったんだ。
その甲斐あって、3歳歳上のアデリーナ様は、レイチェルをとても可愛がってくれたと思う。
それはそれはとても優しい姉ようにレイチェルを気に掛けてお側に置いて下さった。
隙があれば足を引っ張り合う婚約者候補達の中で、いつも2人で一緒に過ごして、2人でお喋りをして、笑って…。
レイチェルのピアノに合わせてアデリーナ様が歌を歌ったという名誉なこともあった。
…ああ、あの歌声はとっても素敵だった。
ステファン殿下も、王弟子息のエルンスト様も、お付きの騎士様もうっとりと瞳を閉じて歌声に耳を寄せて下さった。
次々に篩い落とされていったご令嬢達だったけれど、アデリーナ様、ブリトーニャ様、私、と最後の3人に残るまでになったのは、アデリーナ様に可愛がっていただいたからに他ならない。
私、随分と頑張ったでしょう?
父や兄に託された、王族の目に留まり公爵家との縁を深めるというお役目は果たせた、と思う。
後はアデリーナ様が婚約者内定の栄誉を受ける場面で盛大にお祝いを伝えるだけ。
ところが。
「レイチェルとは暫しのお別れね。」
「…せっかくお目にかけて頂いたのに…寂しいです。」
明日、最後のひとりを残して城を去るという晩、今までの御礼とお別れのご挨拶をするためにアデリーナ様のお部屋を訪れていた私。
「またすぐ会えるわ。」
とアデリーナ様は仰って下さった。
素直に嬉しかった。
公爵家のアデリーナ様はもうすぐ王太子妃になる。そうなったら伯爵令嬢如きは普通ならなかなか会える存在ではなくなってしまう。
ただ、アデリーナ様が手を差し伸べて呼び寄せてくれない限りは。
またすぐ会えるわ。
それは、レイチェルにとっては最高のお言葉だった。
アデリーナ様がレイチェルを取り巻きのひとりに引き上げてくれるという事だと思ったから。
だけど、続けてアデリーナ様が仰ったことはレイチェルの想像とは全く異なるものだった。
「最後に残るのはレイチェルよ、だってステファン殿下は最初からレイチェルしか見てなかったもの。
ううん、それで良いのよ。私もレイチェルなら十分に王太子妃、将来の王妃として相応しいと思いますわ。
レイチェル様、このアデリーナ、どんなに離れていてもレイチェル様を見守っていることをどうかお忘れにならないで下さいね。」
頭の中に疑問符が山のように浮かんで飛び跳ねた。
???…なんですと?
「私、レスボート国にラインハルト王太子妃として嫁ぐ事になりましたの。次、お目にかかれるのはどちらの結婚式が先でしょうかね。私、楽しみにしていますわ。
キッテンとレスボート、2国の友好のためにいつまでも仲良くしてくださいませね。」
「ラインハルト…王太子?」
「そう、ステファン殿下の側にいらした、あのラインハルト様よ。身分をお隠しになってご留学されていたそうよ。
うふふ、4人でたくさんお喋りして、楽しかったわね。」
レスボートの王太子は、外交戦略のひとつで近隣国から王族かそれに匹敵する貴族を妃として迎え入れる風習がある。
候補としてブリトーニャ様とアデリーナ様が候補に上がっていたけれど、表立って2人を比べる事は外交面で出来ない。
そこで、キッテンの王太子の婚約者選定に2人を紛れ込ませて、ラインハルト殿下はステファン殿下の側近としてコッソリと見比べていたそうだ。
「じゃあ、初めからステファン殿下と結婚するおつもりはなかったんですか!!」
「そういう訳じゃないわ。でも直ぐにわかっちゃったのよ。ステファン殿下はずっとレイチェルを側に置いていたから、必然的にラインハルト殿下とお喋りすることになって。
だから…騙すつもりはなかったわよ。
レイチェルのお陰で私王妃になれるの、まるで夢のようだわ。」
そう言ってアデリーナ様は翌朝荷物を纏められて、ラインハルト王太子にエスコートされてお城から出て行ってしまわれた。
それはそれは嬉しそうに、眩しいくらいに輝いた笑顔で。
いつの間にか、外遊していた国王陛下が帰国次第フィリア伯爵令嬢レイチェルは王太子の婚約者として国民に向けて発表される事になっていた。
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