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王妃と王弟妃
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王妃カトリーヌと王弟妃クラリーチェは仲が良いとよく知られている。
しかし初めからそうだったという訳でもない。
この2人もカルロ王太子の婚約者選定でしのぎを削り合った過去がある。
ただ、2人にとって救いだったのは、カルロの婚約者選定にブルーノも参加していた事だ。
なんとなく暗黙の了解のうちに、2人はそれぞれの王子の伴侶に収まった。
わだかまりが大きくなる前に、溝が深まる前に、共闘する道が示された。
2人の目下の悩みの種はブリトーニャとレイチェルの関係の改善だった。
「義姉さん、私から諌める訳にはいかないわ。嫁をもっと大切にしろっていう事と同じだから。」
「わかってるわよ。でもまさかステフがあんな事をするなんて思いもしなかったんだもの。」
ステフにブリトーニャへ剣を捧げろと言った時、ステフはあの忌まわしい短剣を用いた。
執務室の机にいつまでも過去を引き摺るように鎮座していたあの短剣を。
もちろんブリトーニャがそれを黙って受け取るなんて事はなく…。
ステフからの求愛をブリトーニャが蹴ったという事になってしまった。
最悪だ!
「ステフの言い分もわかるのよ。ちゃんと王太子妃になりたいなら、プライドの持ち方を変えなきゃならない。」
「でも…いくらなんでもあれは酷いわ。」
私でもさすがに一度他の女に捧げた剣を捧げられても怒りしか湧かない。
義姉ならどうするだろう。
「笑顔で受け取って、その場で抜くかもしれない。」
…ありえるわ。
カトリーナの言葉にクラリーチェは大笑いしてしまう。
ブリトーニャの相談役はレイチェルに決まった。というか他にいない。準王族から召し出せばステファンとエルンストの関係もおかしくなるし、国民が怪しみ出す。
ブリトーニャには一緒に責任を負ってもらわないとならない!
キッテンの王族は時に意に沿わない事でも飲み込んで受け止めなければならない。
必要ならば、相手が罪人であろうと膝を曲げるし頭を垂れる。
カルロが一度出した王令を引っ込めたのもそうだし、カトリーヌがブリトーニャを引き受けることにしたのもそうだし、ステファンがブリトーニャとの婚約と結婚を受け入れたのもそうだ。
ステファンとエルンスト、ステファンとレイチェルはすでに過去を飲み込んで次の舞台へと上がった。
いつまでも過去に拘り、前に進めていないのはブリトーニャだけだ。
「レイチェルから動いて貰う?」
「そこまで甘やかすこともしなくていいわ。」
今、ブリトーニャに求められているのは過去を振り返って飲み込む覚悟だ。
それだけのことを王族はレイチェルにしたのだから、その後始末は共にしてもらわないと。
「レイチェルの方が賢明だったみたいね。」
「そう?ただ流されやすいお嬢さんかもしれなくてよ。」
「そう言われると…そうかもね。」
レイチェルを相談役にして、レイチェルの剣を受け取って、王妃として立つ覚悟を見せてもらう、ステファンが出したブリトーニャを真の「伴侶」とする条件だ。
真実のブリトーニャための剣は既に出来上がっている。
その判断に異論はない。
ステファンには苦渋の決断を迫ったのだから、今度譲歩しなければならないのはこちらだ。
ただステファンに聞けば良かったのだ。
何を思い何を考えどうしてこんな事をするのか?と聞けば良かったのだ。誰もがそれをブリトーニャに隠そうとはしていない、ステファンでさえも、謙虚に眼を開いて耳をすませその真意を問えば、教えてくれるだろうに。
なかなか伝わらないもどかしさに苛立つ毎日だ。
王妃と王弟妃は、互いの違いを知り、互いに通じるところを探し、時に許し目を瞑り、見えないフリをして、見えるフリをして。
長い年月をかけて、ようやく腹を割って話せる仲になった。
だから。
2人は、それぞれの嫁にも同じ道を歩んで貰いたいと願っているし、それが出来ると信じている。
しかし初めからそうだったという訳でもない。
この2人もカルロ王太子の婚約者選定でしのぎを削り合った過去がある。
ただ、2人にとって救いだったのは、カルロの婚約者選定にブルーノも参加していた事だ。
なんとなく暗黙の了解のうちに、2人はそれぞれの王子の伴侶に収まった。
わだかまりが大きくなる前に、溝が深まる前に、共闘する道が示された。
2人の目下の悩みの種はブリトーニャとレイチェルの関係の改善だった。
「義姉さん、私から諌める訳にはいかないわ。嫁をもっと大切にしろっていう事と同じだから。」
「わかってるわよ。でもまさかステフがあんな事をするなんて思いもしなかったんだもの。」
ステフにブリトーニャへ剣を捧げろと言った時、ステフはあの忌まわしい短剣を用いた。
執務室の机にいつまでも過去を引き摺るように鎮座していたあの短剣を。
もちろんブリトーニャがそれを黙って受け取るなんて事はなく…。
ステフからの求愛をブリトーニャが蹴ったという事になってしまった。
最悪だ!
「ステフの言い分もわかるのよ。ちゃんと王太子妃になりたいなら、プライドの持ち方を変えなきゃならない。」
「でも…いくらなんでもあれは酷いわ。」
私でもさすがに一度他の女に捧げた剣を捧げられても怒りしか湧かない。
義姉ならどうするだろう。
「笑顔で受け取って、その場で抜くかもしれない。」
…ありえるわ。
カトリーナの言葉にクラリーチェは大笑いしてしまう。
ブリトーニャの相談役はレイチェルに決まった。というか他にいない。準王族から召し出せばステファンとエルンストの関係もおかしくなるし、国民が怪しみ出す。
ブリトーニャには一緒に責任を負ってもらわないとならない!
キッテンの王族は時に意に沿わない事でも飲み込んで受け止めなければならない。
必要ならば、相手が罪人であろうと膝を曲げるし頭を垂れる。
カルロが一度出した王令を引っ込めたのもそうだし、カトリーヌがブリトーニャを引き受けることにしたのもそうだし、ステファンがブリトーニャとの婚約と結婚を受け入れたのもそうだ。
ステファンとエルンスト、ステファンとレイチェルはすでに過去を飲み込んで次の舞台へと上がった。
いつまでも過去に拘り、前に進めていないのはブリトーニャだけだ。
「レイチェルから動いて貰う?」
「そこまで甘やかすこともしなくていいわ。」
今、ブリトーニャに求められているのは過去を振り返って飲み込む覚悟だ。
それだけのことを王族はレイチェルにしたのだから、その後始末は共にしてもらわないと。
「レイチェルの方が賢明だったみたいね。」
「そう?ただ流されやすいお嬢さんかもしれなくてよ。」
「そう言われると…そうかもね。」
レイチェルを相談役にして、レイチェルの剣を受け取って、王妃として立つ覚悟を見せてもらう、ステファンが出したブリトーニャを真の「伴侶」とする条件だ。
真実のブリトーニャための剣は既に出来上がっている。
その判断に異論はない。
ステファンには苦渋の決断を迫ったのだから、今度譲歩しなければならないのはこちらだ。
ただステファンに聞けば良かったのだ。
何を思い何を考えどうしてこんな事をするのか?と聞けば良かったのだ。誰もがそれをブリトーニャに隠そうとはしていない、ステファンでさえも、謙虚に眼を開いて耳をすませその真意を問えば、教えてくれるだろうに。
なかなか伝わらないもどかしさに苛立つ毎日だ。
王妃と王弟妃は、互いの違いを知り、互いに通じるところを探し、時に許し目を瞑り、見えないフリをして、見えるフリをして。
長い年月をかけて、ようやく腹を割って話せる仲になった。
だから。
2人は、それぞれの嫁にも同じ道を歩んで貰いたいと願っているし、それが出来ると信じている。
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