若松2D協奏曲

枝豆

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バスレク

カレーの味

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カレーはそこそこ上手く出来た。
ご飯も美味しく炊けた。

「翠のカレー美味しいでしょ。」
優ちゃんが和津くんに聞いている。翠のじゃないけどね。
「うん、うまいよ。」
和津くんは2杯目なのに凄い勢いで食べている。
「え、優ちゃんだって北斗くんだって一緒に作ったじゃん!」
「北斗特製カレー美味いだろ?」
今度は北斗くんが和津くんに聞いている。
「うん、翠のカレーは美味いよ。」
「なにそれ!俺の苦労と真心に謝れ!」

軽口がポンポンと弾んで、みんなで笑いながら食べてた。
あっ、皇子くんだけは少し離れてる。
皇子くんの周りは試食を持った女の子がたくさんいた。

「皇、何杯喰うんだろ?」
「5?いや10は行くな。」
「お腹壊しそう。大丈夫かな。」
心配になって呟いた。
「…それはどういう意味?」
「えっ?たくさん食べるから…?」
「だよねー。」
あはは、とみんなが笑っている。
笑いのツボが良くわからなくて、変な笑いになって落ち込む。

担任から班で食べるように、と注意を受けて皇子くんが戻ってきた。
「あー、俺、絶対腹壊すわ。」
「大丈夫?やっぱり多かった?」
「イヤ、不味いんだよ。ジャガイモ生煮えだったよ。」
あっ、そっちのお腹壊す、なのね。

和津くんがカレーを盛り付けて皇子くんに渡す。
「お裾分けしてやる!」
「何それ、疾風偉そー。」
「皇、タダ飯喰らいだからな。翠のカレー、美味いぞ。」
「だから、みんなの、だよ。」

結局他の班に掛かりきりで皇子くんはほとんど班の仕事が出来ていない。
だからお裾分けとか言われてしまったのだ。

皇子くんの火起こし手伝い待ちをしていた他の班は煮込む時間がなくなったのかもしれない。

「あー、マジウメェ。ってか他の班の野郎共、しっかりしやがれ!
俺、評価落としたらどうすんだよ。」
皇子くんはすごい早さで食べ始めた。
片付けは頑張ってくれるらしい。

そうなのだ。
何故だか男子が火起こしに手を出さない班がいくつもあって。
そして総合と体育の評価が掛かっているこのバスレクは、あまりサボっていたり注意を受けると一評価下がる。
皇子くんは他の班に手出ししたのと、違う班の子と食べていたのを既に注意された。
「皇のせいじゃねーの、担任わかってから大丈夫だろ。」
「だといーけど。」

その時担任が地図を持ってやってきた。
「この班、橋コースな?」
「えっ?どうしてですか?」

「早いもん勝ちで、お行儀のよろしい班から決めて貰った。
注意3回のこの班は最後のあまり。その分評価は下げないでやるからな。」

勝手に補助席移動で一回
他の班への手出しで一回
他の班との合流で一回

感謝しろよーと担任は去って行った。

「ごめん、俺のせいだ。」
「ううん、皇子くんだけのせいじゃない。補助席は私が寝るって言ったから。」

…でも、橋。怖そう。

「翠!橋は一緒に渡ってやるから、元気出せ!」
和津くんが慰めてくれる。

「和津くん、私も怖ーい。」
と中野さんも怖がっている。
「…俺のせいだから。中野さんはおれが一緒に渡ってやるから。」
と皇子くんが声を掛けた。

2人は本当に優しい。
…でも、多分中野さんは和津くんとが良いんだろうな。

「ひとりじゃなければ大丈夫、優ちゃんと渡れると思う。優ちゃんお願いしていい?」
「あー、うん。それは構わないよ。」
「ありがとう、頑張ろうね。
さっ、片付けよう!」
和津くんには甘えちゃダメだから!と言い聞かせる。

コースのことは気にしない!
大丈夫!
不安を振り切るように立ち上がった。

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