若松2D協奏曲

枝豆

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コハク島

埋められない距離 疾風視点

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初めて翠を意識したのは1年の最初の頃だった。

名簿順で決められた掃除当番の班が同じだった。
1年の時のクラスはノリが良くてそれなりに楽しかったけれど、
当番?サボって平気っしょ。
委員?めんどっ!
というのが通っちゃうクラスだった。

その週、掃除当番だったらしい俺に担任からの注意が入ったのが水曜。
あっ、ヤベぇ。
部活に行こうとしていた足を教室へと戻した。

一人で黙々と掃除をしていたのが翠だった。
えっ!ひとり?
慌てて教室へと入った。

サボるな!って怒ったっていいのに。
「来てくれてありがとう。」
と、ふんわり笑う可愛い子だった。

月曜日から1人だったらしい。
そりゃ担任も注意しにくるわ。

でも。
「ごめん。」
と謝った俺に
「運動部とかって時間厳守なんでしょ?
吹部は個人練習から始まるから、その辺りあんまり…。」
と返してきた。

いや、掃除当番サボる方が怒られるって!

それから金曜まで2人で掃除した。
他の奴に声は掛けなかった。
掛けたくなかった。
多分それから、だ。

なんとなく翠を見ていたら、すぐに皇にバレた。
周りを巻き込んで近くにいられるポジションを必死で掴んだ。

少しでも脈が見えたら…その時は。
でもその時はなかなか来なくて、いつまでも仲の良いクラスメイトから抜け出せない。

2年も同じクラスになって凄く嬉しかったのに、翠は俺のことを気にもしていなかった。
皇が一緒で良かったと言って皇の席をじっと見てた。
やっぱり皇か?と思うと、ギュッと心臓を掴まれる。

そしたらあのバスレク。
距離を詰めたのは俺じゃなくて北斗の方。

苗字にくん付けがデフォの翠が皇子とあだ名で呼ぶのが皇だけで、名前にくん付けするのが北斗だけ。

わかってる。翠は絶対無意識だって。
無意識だからこそ、疾風って呼んで欲しい。
翠が2人を呼ぶ度に、「和津くん」と呼ばれる度に、心にざわっと波が立つ。

ゆっくり話せる2人だけの電車の中で、やっとやっと切り出した。
なんで、なんで北斗だけ?
その理由を聞いたら、ウケた。
翠はやっぱり翠だった。
悩んでた俺がバカだった。

無理やり疾風と呼ばせてみる事にした。
「疾風くん」
やっぱりくんは付くか…。
「もう一回。」
何度も頼んだ。
なんか照れてる翠が可愛い。

どうかこれが最初の一歩になりますように。







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