若松2D協奏曲

枝豆

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コハク島

北斗くんは桜井くん

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なんだろう…。
和津くんはなんだか少し怒ってる?

会った時はいつもと同じ、さっきまでは楽しくお喋りしてた。

だから、きっと何か私がしちゃったんだろう。
さっきまでの会話を会話を振り返る。

えーっと、確か北斗くんの話だった。
この話を持って来てくれた北斗くんにありがとうと言わないとからの、普段から北斗くんは優しいね、みたいな話。

でもその話には和津くんもそうだね、って返してくれてて…。
朝早かったから眠くなっちゃった?
私と話するの面倒になっちゃった?

「ねえ、和津くん?眠い?」
「…違うけど?」
話しかけてはみたものの、不機嫌は変わらない。
…どうしよう。何か話さなくっちゃ!

「あのね、和津くん。」
「疾風!」
えっ?
「疾風って呼んでよ。北斗は北斗くんなのに。俺だけいつまでも和津くんなの、ヤダ。」
えっ?
「だって…。」

去年のクラスメイトは割と早いうちに疾風と呼び掛けて「止めて」と言われたと言っていた。今年の優も中野さんも…。
疾風呼びが出来るのは部活の友達だけ。
だからみんな和津と呼ぶ。最近は優ちゃんも和津になった。
私は呼び捨てに抵抗あるから、くんが付く。

「…ごめん。嫌なのかと思ってた。」
「嫌だったよ。今でも他の奴には。
でも翠が、北斗を北斗くんって呼ぶのも嫌だ。俺はいつまでも和津くんなのに、って。」

よくわからない。

「ねえ、なんで北斗だけ、北斗くんなの?」

あー、それは。

「内緒にしてくれる?」
もちろんと返してくれて。

「桜井くんって知らなかったの。」
「はっ?」

初めの頃、クラスメイトの名前を覚えていなくて。
休み時間は、和津くんと優ちゃんと、時々皇子くんとずっと喋ってて。
やっと女子の名前を覚えたかな?って頃にバスレクの班分けがあって。

あー、初めましての人だぁ、と思って、名前覚えようとしたら、みんなが北斗って呼ぶし、いまさら苗字教えてとは言いにくくなって。
苗字を覚える前に北斗くん呼びが定着したの。

今でも時々サッと出てこない時がある。
あと皇子くんも。

皇子くん、カッコいいから王様のおうじなのかと思ってたら、名前が皇だからって随分後で知った。

そんな話をしたら、和津くんはゲラゲラ笑ってた。
翠っぽいなって、私そんなに鈍臭いのかな。

「じゃ、これから疾風で!」
「うーん。直るかなぁ。和津くんで慣れちゃったし。」
「コハク駅に着くまでに直してよ。」
「うーん、それきっと無理だよ。えっと、疾風くん?」
「くん、要らないよ?」
「えー、それは絶対無理…と思う。」
「仕方ないかぁ。誰にも呼び捨てしないもんな。
じゃあ、もう一回。」
「…疾風くん。」
「うん、もう一回。」
「えっ?もういいよ。恥ずかしい。」

「疾風くん」
10回は呼ばされた。

もう何コレ?
何の罰ゲーム?

あっ、遅刻のだ。
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