若松2D協奏曲

枝豆

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体育祭

吹部デモンストレーション 疾風視点

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学校公開日を兼ねる体育祭は保護者だけでなく、これから志望校を決める中学生や卒業生も見に来る。
その目的はほとんどが吹部デモだ。

テレビで特集されたこともあるというその吹部デモが始まった。

まだ入部してまもない1年生はダンスやカラーガード隊に回る。翠も昨年はダンス隊で、楽器を持つのは今年が初めてだと緊張してた。

紺のジャケットはセクションリーダーだって。全体で4人しか着ないそうだ。
金管、木管、移動する打楽器、移動しない打楽器。
2年で着るのは翠だけ。3年のセクションリーダーが指揮に回ったから、と翠は言っていた。

ただでさえキラキラ輝く金管楽器は目を引く。
そこに1人だけ違う色のジャケット。
みんなから少し前に出た立ち位置。

翠のソロでデモは始まった。

ああ。それじゃみんなが翠を見てしまう。
見て欲しい気持ちはある。
応援団の練習の合間にも時々この部分は練習していた。

違う、ここだけじゃない。
5月の翠は吹部一直線だった。朝も昼休みも音楽室にいた。
話せるのは応援団の練習だけだった。
それさえも終わればさっさと部活へと走っていく。
頑張った成果はみんなに見てもらいたい。

だけど見て欲しくない気持ちが強い。
相反する感情が身体の中で渦巻く。
俺の、俺だけの翠でいてくれないか?

曲なんてほとんど入ってこない。
いつもとは違う凛とした翠から目が離せない。
小柄な翠がふた周りは大きく見える。

歩きながら演奏するのって難しいんだよ、って笑う翠。
時々ね、みんなと歩幅ズレちゃうんだよね、って悩んでいた翠。

2年でリーダーになったプレッシャーで泣いた日もあったはず。
結局俺には何にも言わなかったな。

頑張れ翠。
いつのまにか息を止めて手を握りしめていた。

曲が終わった時、翠と目があったような気がした。











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