若松2D協奏曲

枝豆

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体育祭

昼休み 優視点

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午前の部が終わって教室へいったん引き上げる。
今日は暑いので、しばしのクールダウンタイムでもある。

応援団デモの成功にクラスが湧いていた。
カッコよかったよ、応援賞はウチらじゃない?と大興奮だ。

「ホント抜け目ないよな、お前。」
お弁当を食べ始めた和津を皇子が突き始めた。

全くだ、と思う。
開会式、一瞬で翠はスターになりかけた。あのトランペットを吹く姿はヤバイ。
特に1年が男女関係なくキャアキャア言い始めた。あの先輩カッコいい!と。

普段のふんわりした雰囲気を紺のジャケットで隠した翠は凛として本当にカッコ良かった。
入場行進中だったのに、どうやって手に入れたのか、既にLINEグループに演奏する翠の写真データが回り始めていた。

そして応援団デモ。

応援団を引き立てるはずのトランペットと太鼓は主役の座を掻っ攫った。
特に団長が主役になるはずの退場のとき、みんなの視線は太鼓を叩く和津に向いていた。

既に皇子の側にいる事で目立っていた和津。中野だけじゃない、ジワジワと1年女子の間で和津人気は出始めていた。
バド部の練習だって、男バスと体育館をシェアするとみんなほとんど練習に身が入らない。

目がハートマークになり始めたみんなは一瞬で目を覚ました。

デモを終えた2人がハグしあったからだ。

翠にキュンとし始めた男子達を、自分に惚れそうになった女子を、和津は一瞬で薙ぎ払った。

「今年の体育祭は楽しいだろ?」
「…うるせぇ、ほっとけ。」
「ゆっくり食えよ。疾風この後1500出るんだろう?」

「ね、なんで1500も出るの?」
1500はクラスで3人以上というルールはあるけれど、出れば参加点が貰える。積極的に点数を取りに行くクラスは強制参加だったりするけれど、うちのクラスはそれはない。
障害物とリレーに出る和津は個人のノルマを果たしているのに。

「別に。」
そっけなく背中を向ける和津に、皇子が畳み掛けた。
「吹部デモのすぐ後で、一番競技時間が長いから、だよね?」

はっ?
まさか翠が見てくれるかもしれないから?それだけのために?

「…マジ?」
「違う。」
「違わないでしょう?」
北斗まで揶揄い始めた。
マジかぁ。
「…引くわ。」

「…ほっておけよ。違うから。」

…これ、違わないなぁ。
和津の忠犬っぷりにからかいの声は止まなかった。


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