若松2D協奏曲

枝豆

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ジャズ演奏

入れない 疾風視点

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無理矢理ついて来てしまった「翠の後輩指導」は急に呆気なく終わってしまった。
大した会話もなく、ただ普通にジャズの演奏を聴いただけ。
昼演奏に出て来たのはたった2組。ひとつはピアノ、ひとつがジャズバンド。
おそらく翠が北条に見せたかったのはバンドの方。

たった3曲。それだけ聞いて北条はひとりで帰ってしまった。
でもなんだか翠にはそれも想定内だったようで、アッサリと送り出した。
それでも翠は何かを伝えたし、北条も何かを掴んで帰っていったのは俺にもわかった。


…参ったな。コレ結構凹む。
俺に入れない2人の世界がそこにあった。

その後、店員のナギさんが俺たちのところにやって来て、根掘り葉掘り聞き出されそうなところを翠がなんとか押し留めて、慌てて店から抜け出した。

「まだ時間ある?」
可愛く翠が聞いてきてくれる。
もちろん時間はたっぷりある。

「じゃあ、どこか寄ろうか。」
うん!と嬉しそうな翠の顔を見て、ちょっとだけ気分がアガる。

その時初めて気が付いた。
これ、初デートってヤツじゃないか?

「どこか行きたい所ある?」
「ゲームセンター。プリクラ撮りたい。」
「プリクラ?」
「うん、あのね待ち受け写真変えて欲しいの。」

今の待ち受けは体育祭の日に撮った、金メダルを掛けた俺と、紺ジャケを着た翠のツーショット。
その写真に変えた事は反省会で北斗がバラしたから、みんなが知ってはいるけど。

どうしても撮りたくて、だけど半分諦めていて、みんなに協力してもらって撮れた、奇跡の写真。

「なんで?」
俺、カッコ悪い少し声が震えている。
俺にとって特別な写真なのに、翠にとってはそうじゃないって事だから。
翠が嫌なら変える。それはやぶさかではない。
北条とのやり取りに凹んでいる俺に、翠との感覚の違いは更に堪えた。

「嫌?」
「…俺は気に入ってるけど、翠は違うんだよね。理由聞いてもいい?」

…もし、「私を待ち受けにしないで!」とかだったら、今日の俺はきっと立ち直れない。
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