71 / 242
ホタルを愛でる夜
気にしなくてもいいのに… 花音視点
しおりを挟む
ホタルを見ている時に、アイツらを2人にしてあげたいんだけど。
皇子くんがそう言ってきた。
おそらく他人はそれは余計なお世話って呼ぶ。
…わかっているのかな。
6人のうち2組のカップルをそれぞれ二人きりにするって事は、結果3組のペアが出来るってことなんだけど。
だったら初めから一緒に行かないでそれぞれで行って貰えば済むのに、何故かそれは皇子くんの頭には浮かんでいなさそう。
そもそも優ちゃんと北斗くんは…。
私と優ちゃんは同じ駅を利用してる。
優ちゃんは南口、私は北口だけど。
去年から同じ制服で乗り降りする優ちゃんのことは気付いていたけれど、なんとなく話し掛けるきっかけがないまま1年が過ぎて、2年で同じクラスになって仲良くなった。
芸術系の大学への進学に強い若松高校。多分翠ちゃんは音大、そして私は美大に行きたいと思っている。
美大にはお金が掛かる、美大専門の予備校にも通わないといけないかもしれない。
だからこっそり画材屋でバイトをしている。
バイトの休憩室の窓からは街をそぞろ歩く人が見下ろせる。
窓にはでっかくお店の名前が貼ってあって、しかもブラインドが降りているから、外から中を見る人はあまりいない。
休憩中の時間を持て余して、ぼんやりと外を眺めていると、時々優ちゃんが通る事がある。
…北斗くんと手を繋いで。
初めて見てしまったのは、まだ「付き合ってるの?」なんて聞くに聞けない微妙な関係の頃。
それから何回か見掛けるけれど、完全に聞くタイミングを逃した。
教えて貰えないってことは私がまだみんなに馴染めていないからだ。
そう思っていたけれど、どうやら翠ちゃんですら知らないっぽい。
何か理由があるんだろう、だから黙っていることにして、知らない事にしてる。
最近皇子くんは元気がない。
みんなと一緒に居たいんだとは思うんだけど、時々フッと距離を取ろうとする事がある。
優ちゃんと北斗くんはどんどん他のグループの子にも話し掛けて、積極的に輪を拡げ始めて、それに引っかかったのが応援団仲間。
何かあったんだとは思うけど、それが聞けるほど私はグループにはまだ馴染めていない。
今日だってたまたまその場にいたから誘ってもらえただけで、いなかったらきっと5人で出掛けていたに違いない。
…私が断れば皇子くんはどうするんだろう。
1人でホタルを見るのかな?
それはないか。
行くのやめちゃうのかな?
別にそんな事気にしなくても、北斗くんと和津くんは皇子くんのことを邪魔にしたりしないんじゃない?
きっとそれぞれ私達の知らないところでちゃんと2人の時間を作っていると思うけど?
バイトの休憩室の窓から見た、優ちゃんと北斗くんの様子を思い出しながら、
「気にしなくて良いんじゃない?」
と言わなきゃいけないのはわかってるんだけど。
私が教えちゃって良いのかな。
「うん、別にいいよ。」
頭が心を裏切ったのか、心が頭を無視したのかわからないけれど、私は皇子くんの提案を拒否しなかった。
皇子くんがそう言ってきた。
おそらく他人はそれは余計なお世話って呼ぶ。
…わかっているのかな。
6人のうち2組のカップルをそれぞれ二人きりにするって事は、結果3組のペアが出来るってことなんだけど。
だったら初めから一緒に行かないでそれぞれで行って貰えば済むのに、何故かそれは皇子くんの頭には浮かんでいなさそう。
そもそも優ちゃんと北斗くんは…。
私と優ちゃんは同じ駅を利用してる。
優ちゃんは南口、私は北口だけど。
去年から同じ制服で乗り降りする優ちゃんのことは気付いていたけれど、なんとなく話し掛けるきっかけがないまま1年が過ぎて、2年で同じクラスになって仲良くなった。
芸術系の大学への進学に強い若松高校。多分翠ちゃんは音大、そして私は美大に行きたいと思っている。
美大にはお金が掛かる、美大専門の予備校にも通わないといけないかもしれない。
だからこっそり画材屋でバイトをしている。
バイトの休憩室の窓からは街をそぞろ歩く人が見下ろせる。
窓にはでっかくお店の名前が貼ってあって、しかもブラインドが降りているから、外から中を見る人はあまりいない。
休憩中の時間を持て余して、ぼんやりと外を眺めていると、時々優ちゃんが通る事がある。
…北斗くんと手を繋いで。
初めて見てしまったのは、まだ「付き合ってるの?」なんて聞くに聞けない微妙な関係の頃。
それから何回か見掛けるけれど、完全に聞くタイミングを逃した。
教えて貰えないってことは私がまだみんなに馴染めていないからだ。
そう思っていたけれど、どうやら翠ちゃんですら知らないっぽい。
何か理由があるんだろう、だから黙っていることにして、知らない事にしてる。
最近皇子くんは元気がない。
みんなと一緒に居たいんだとは思うんだけど、時々フッと距離を取ろうとする事がある。
優ちゃんと北斗くんはどんどん他のグループの子にも話し掛けて、積極的に輪を拡げ始めて、それに引っかかったのが応援団仲間。
何かあったんだとは思うけど、それが聞けるほど私はグループにはまだ馴染めていない。
今日だってたまたまその場にいたから誘ってもらえただけで、いなかったらきっと5人で出掛けていたに違いない。
…私が断れば皇子くんはどうするんだろう。
1人でホタルを見るのかな?
それはないか。
行くのやめちゃうのかな?
別にそんな事気にしなくても、北斗くんと和津くんは皇子くんのことを邪魔にしたりしないんじゃない?
きっとそれぞれ私達の知らないところでちゃんと2人の時間を作っていると思うけど?
バイトの休憩室の窓から見た、優ちゃんと北斗くんの様子を思い出しながら、
「気にしなくて良いんじゃない?」
と言わなきゃいけないのはわかってるんだけど。
私が教えちゃって良いのかな。
「うん、別にいいよ。」
頭が心を裏切ったのか、心が頭を無視したのかわからないけれど、私は皇子くんの提案を拒否しなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。
鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。
名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。
親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。
性と欲の狭間で、歪み出す日常。
無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。
そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。
青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。
前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章
後編 「青春譚」 : 第6章〜
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる