若松2D協奏曲

枝豆

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置き去りにしたもの

謝罪の後

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「ごめん。謝らなきゃいけないのは俺たちの方だった。」
突然和津くんが頭を下げた。

「ちゃんと今日みたいに話し合いをするべきだった。
勝手に疑って、決めつけて、翠のことも絵里のこともちゃんと見てなかった。」

「ううん、私がちゃんと言えば良かった。
和津くんもみんなも悪くない。」
慌てて和津くんの肩を叩いて頭を上げてもらう。
「そうだよ。私が避けたりなんかしないでちゃんと翠に気持ちを伝えれば良かった。
貴行のことも誰かに話せば良かったの。」
絵里ちゃんもそう言ってくれる。

だけど
「お願い絵里ちゃん、ケジメは着けたいの。謝らせて。
ごめんね絵里ちゃん。きちんと考えて言葉を選んで伝えられなくて。私が言葉や場所を考えていたら絵里ちゃんに辛い思いをさせなくて済んだ。ごめんなさい。」

うん、ありがとう。
絵里ちゃんはそう言ってくれて、笑っていれた。

「ねえ、森くんとは?」
「…留学して直ぐに電話で別れた。怖くなって、目を見ては言えなかった。」
「…そう。」

和津くんは「貴行許さねえ。」と息巻いていたけれど、森くんに何かするのは違うと思った。
「私が森くんを先に傷付けた。それでも物に当たるのはどうかと思うけど、今は何もされてないし、もう終わりにしたい。」

今すぐ森くんに謝りたい気持ちもあるけれど、それはは…蒸し返しになるのかな。
どうしたら良いのかな。

「…忘れてあげられる?」
と絵里ちゃんが言った。
「ズルイかもしれないけれど、何もかも無かったことにして、リセットして学校に戻りたい。」

そっか、うん、わかった。
そう答えたら、絵里ちゃんは安心したみたいに微笑んだ。

「ありがとう。
ねえ、翠。また元通りにっていう訳にはいかないとは思うけど、もう一回チャンスが欲しい。」
久しぶりに真っ直ぐ目を見て話してくれる絵里ちゃん。
その視線も贈ってくれた言葉にも嬉しくて心が弾む。

「どうして元通りは無理なの?私は出来たら元通りがいい。」
「…だって翠は傷付いて…。」
「うーん、それは絵里ちゃんも同じじゃない?」
「私は自業自得。」
「それなら私も…。」

「はーい!そこまで!」
急に和津くんが会話を止めた。
「キリがない、終わらないだろ。だからもう終わり!そこまで!はい!終了~!」
「でもー。」

あーあーあー、と和津くんが壊れたように叫び始めた。
私と絵里ちゃんはビックリして、顔を見合わせて、ふふふと笑い合った。

「じゃ、こうする。絵里は俺と翠に英語を教える。翠は俺と絵里に歴史を教える。んで俺は数学と物理!」
「なんで?和津が入る?」
絵里ちゃんがキョトンとしながら突っ込んできた。

…あっ、前の絵里ちゃんだ。

「翠に教えるのはわかる。翠から教わりたいとも思う。なぜそこに和津が入るかは理解不能なんですけど?」

「うるさい!俺は理系だ!国語と社会と英語はヤバいんだ!」
「あー、私物理マズイ。」
「それなら私は国語。半年国語やってない。漢字とかメッチャ書けなくなってる。」
「えっ?半年で漢字って抜けちゃうの?」
「抜ける抜ける、この間なんか矛盾って書けなくなってた。」
「あっ!漢文!えっ、漢文範囲?」
「漢文は去年。今回は伊勢物語と更科日記、だったかな。」
「えっ!漢文だけじゃないの?」
「絵里ちゃんは夏休みに補習するんじゃないの?」
「そう、夏休みないの、酷くない?」

いつの間にか話し合いは終わってた。
電話が鳴ってフリータイムが終わるまで、私達はずっとお喋りし続けていた。
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