85 / 242
置き去りにしたもの
謝罪の後
しおりを挟む
「ごめん。謝らなきゃいけないのは俺たちの方だった。」
突然和津くんが頭を下げた。
「ちゃんと今日みたいに話し合いをするべきだった。
勝手に疑って、決めつけて、翠のことも絵里のこともちゃんと見てなかった。」
「ううん、私がちゃんと言えば良かった。
和津くんもみんなも悪くない。」
慌てて和津くんの肩を叩いて頭を上げてもらう。
「そうだよ。私が避けたりなんかしないでちゃんと翠に気持ちを伝えれば良かった。
貴行のことも誰かに話せば良かったの。」
絵里ちゃんもそう言ってくれる。
だけど
「お願い絵里ちゃん、ケジメは着けたいの。謝らせて。
ごめんね絵里ちゃん。きちんと考えて言葉を選んで伝えられなくて。私が言葉や場所を考えていたら絵里ちゃんに辛い思いをさせなくて済んだ。ごめんなさい。」
うん、ありがとう。
絵里ちゃんはそう言ってくれて、笑っていれた。
「ねえ、森くんとは?」
「…留学して直ぐに電話で別れた。怖くなって、目を見ては言えなかった。」
「…そう。」
和津くんは「貴行許さねえ。」と息巻いていたけれど、森くんに何かするのは違うと思った。
「私が森くんを先に傷付けた。それでも物に当たるのはどうかと思うけど、今は何もされてないし、もう終わりにしたい。」
今すぐ森くんに謝りたい気持ちもあるけれど、それはは…蒸し返しになるのかな。
どうしたら良いのかな。
「…忘れてあげられる?」
と絵里ちゃんが言った。
「ズルイかもしれないけれど、何もかも無かったことにして、リセットして学校に戻りたい。」
そっか、うん、わかった。
そう答えたら、絵里ちゃんは安心したみたいに微笑んだ。
「ありがとう。
ねえ、翠。また元通りにっていう訳にはいかないとは思うけど、もう一回チャンスが欲しい。」
久しぶりに真っ直ぐ目を見て話してくれる絵里ちゃん。
その視線も贈ってくれた言葉にも嬉しくて心が弾む。
「どうして元通りは無理なの?私は出来たら元通りがいい。」
「…だって翠は傷付いて…。」
「うーん、それは絵里ちゃんも同じじゃない?」
「私は自業自得。」
「それなら私も…。」
「はーい!そこまで!」
急に和津くんが会話を止めた。
「キリがない、終わらないだろ。だからもう終わり!そこまで!はい!終了~!」
「でもー。」
あーあーあー、と和津くんが壊れたように叫び始めた。
私と絵里ちゃんはビックリして、顔を見合わせて、ふふふと笑い合った。
「じゃ、こうする。絵里は俺と翠に英語を教える。翠は俺と絵里に歴史を教える。んで俺は数学と物理!」
「なんで?和津が入る?」
絵里ちゃんがキョトンとしながら突っ込んできた。
…あっ、前の絵里ちゃんだ。
「翠に教えるのはわかる。翠から教わりたいとも思う。なぜそこに和津が入るかは理解不能なんですけど?」
「うるさい!俺は理系だ!国語と社会と英語はヤバいんだ!」
「あー、私物理マズイ。」
「それなら私は国語。半年国語やってない。漢字とかメッチャ書けなくなってる。」
「えっ?半年で漢字って抜けちゃうの?」
「抜ける抜ける、この間なんか矛盾って書けなくなってた。」
「あっ!漢文!えっ、漢文範囲?」
「漢文は去年。今回は伊勢物語と更科日記、だったかな。」
「えっ!漢文だけじゃないの?」
「絵里ちゃんは夏休みに補習するんじゃないの?」
「そう、夏休みないの、酷くない?」
いつの間にか話し合いは終わってた。
電話が鳴ってフリータイムが終わるまで、私達はずっとお喋りし続けていた。
突然和津くんが頭を下げた。
「ちゃんと今日みたいに話し合いをするべきだった。
勝手に疑って、決めつけて、翠のことも絵里のこともちゃんと見てなかった。」
「ううん、私がちゃんと言えば良かった。
和津くんもみんなも悪くない。」
慌てて和津くんの肩を叩いて頭を上げてもらう。
「そうだよ。私が避けたりなんかしないでちゃんと翠に気持ちを伝えれば良かった。
貴行のことも誰かに話せば良かったの。」
絵里ちゃんもそう言ってくれる。
だけど
「お願い絵里ちゃん、ケジメは着けたいの。謝らせて。
ごめんね絵里ちゃん。きちんと考えて言葉を選んで伝えられなくて。私が言葉や場所を考えていたら絵里ちゃんに辛い思いをさせなくて済んだ。ごめんなさい。」
うん、ありがとう。
絵里ちゃんはそう言ってくれて、笑っていれた。
「ねえ、森くんとは?」
「…留学して直ぐに電話で別れた。怖くなって、目を見ては言えなかった。」
「…そう。」
和津くんは「貴行許さねえ。」と息巻いていたけれど、森くんに何かするのは違うと思った。
「私が森くんを先に傷付けた。それでも物に当たるのはどうかと思うけど、今は何もされてないし、もう終わりにしたい。」
今すぐ森くんに謝りたい気持ちもあるけれど、それはは…蒸し返しになるのかな。
どうしたら良いのかな。
「…忘れてあげられる?」
と絵里ちゃんが言った。
「ズルイかもしれないけれど、何もかも無かったことにして、リセットして学校に戻りたい。」
そっか、うん、わかった。
そう答えたら、絵里ちゃんは安心したみたいに微笑んだ。
「ありがとう。
ねえ、翠。また元通りにっていう訳にはいかないとは思うけど、もう一回チャンスが欲しい。」
久しぶりに真っ直ぐ目を見て話してくれる絵里ちゃん。
その視線も贈ってくれた言葉にも嬉しくて心が弾む。
「どうして元通りは無理なの?私は出来たら元通りがいい。」
「…だって翠は傷付いて…。」
「うーん、それは絵里ちゃんも同じじゃない?」
「私は自業自得。」
「それなら私も…。」
「はーい!そこまで!」
急に和津くんが会話を止めた。
「キリがない、終わらないだろ。だからもう終わり!そこまで!はい!終了~!」
「でもー。」
あーあーあー、と和津くんが壊れたように叫び始めた。
私と絵里ちゃんはビックリして、顔を見合わせて、ふふふと笑い合った。
「じゃ、こうする。絵里は俺と翠に英語を教える。翠は俺と絵里に歴史を教える。んで俺は数学と物理!」
「なんで?和津が入る?」
絵里ちゃんがキョトンとしながら突っ込んできた。
…あっ、前の絵里ちゃんだ。
「翠に教えるのはわかる。翠から教わりたいとも思う。なぜそこに和津が入るかは理解不能なんですけど?」
「うるさい!俺は理系だ!国語と社会と英語はヤバいんだ!」
「あー、私物理マズイ。」
「それなら私は国語。半年国語やってない。漢字とかメッチャ書けなくなってる。」
「えっ?半年で漢字って抜けちゃうの?」
「抜ける抜ける、この間なんか矛盾って書けなくなってた。」
「あっ!漢文!えっ、漢文範囲?」
「漢文は去年。今回は伊勢物語と更科日記、だったかな。」
「えっ!漢文だけじゃないの?」
「絵里ちゃんは夏休みに補習するんじゃないの?」
「そう、夏休みないの、酷くない?」
いつの間にか話し合いは終わってた。
電話が鳴ってフリータイムが終わるまで、私達はずっとお喋りし続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。
鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。
名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。
親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。
性と欲の狭間で、歪み出す日常。
無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。
そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。
青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。
前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章
後編 「青春譚」 : 第6章〜
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる