若松2D協奏曲

枝豆

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さくらや

余所見

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休憩が終わったしおりさんに後を託して、北斗くんの横に立った。

お客さんに渡された伝票は2枚複写になっていて、一枚を厨房に、一枚は北斗くんに渡す。
カウンターに注文されたものを並べていく間に北斗くんはレジを打つ。
ビール、ペットボトル…、作り置きのフランクフルトやフライドポテト…。出来上がったラーメン、カレー、おでん。

さっきまでこれを北斗さんは1人でやっていたと思うとまた更に尊敬してしまう。
そうこうしている間に少しずつお客さんが途切れるようになった。
この立ち位置ポジションは厨房で働く疾風くんがよく見える。
忙しかった時はチラリと見るだけだったけれど、お客さんが途切れ始めると、疾風くんと目が合うことも増えた。

「少し落ち着いたのかな?」
「まあピークは過ぎたし潮が満ちて来たんだ。」
と北斗くんが教えてくれた。

もちろん潮が満ちても砂浜はあるんだけど、自分たちが場所取りしていた場所が濡れそうになると、「そろそろ帰るか。」という雰囲気になるそうだ。

シートやテントを片付けて、少し甘いものを食べてから帰る。
だから今度はお座敷の方が混み始める。
しおりさんもお座敷にヘルプに入るようになった。
もう少ししたら今度はしおりさんはシャワーの方に行くらしい。

3時を過ぎてお客さんもまばらになった頃、派遣会社の人がスーツを着て謝罪にやってきた。
お姉さんが物凄く怖い顔で対応していたけれど、バイトを囲い込む苦労を知っているからと最後には謝罪を受け入れていた。

「今日は店は早めに閉めちゃうから、もう高校生は上がっていいよ、みんなでご飯食べてせめて花火でもして楽しんで帰って。」
とラーメン店から抜けてきた叔母さんが丁寧に封筒にバイト代を入れてくれたのと、大量に花火を差し入れてくれた。
「北斗も上がりなさい。この葉でツケていいから。」
とも言ってくれる。

こうして私たちの単発バイトは終わった。
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