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さくらや
小休止
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休憩はお店の裏にキャンプ用タープが張ってあってそこで取る。
(疲れた…。)
こんなに忙しいなんて知らなかった。
ゴールデンウィークに来た時はもう少しゆったりしていたのに。
あ、焼けちゃった。
足首にはくっきりサンダルのストラップの跡が付いちゃった。海用のスポーツサンダルなので幅がある。
まあ靴下を履けばいっか、華奢なヒールのサンダルは…当分無理かな?
「お疲れ。」
お昼ご飯の賄いラーメンを2つ持って疾風くんがやって来た。
「あ、ありがとう。」
好きに飲んでいいと言われているクーラーボックスからペットボトルを出して、座る。
「疾風くんも休憩?」
「うん、北斗が行ってこいって。」
賄いラーメンっていっても普段お店で出しているものと同じ。この間は醤油味だったけれど、今日のは塩ラーメン。さっき聞いた魚介味。
疲れた体にラーメンの塩気が心地よく染み込む。
「やっぱり美味しい。」
しばらく無言でラーメンを啜る。
「今日は北斗さん、だよ。」
「それな、ウケた。」
厨房ともやり取りする北斗くんには調理師さん以外みんな敬語なんだって。
「仁志がタメ語使ってたら変な顔されたんだって。」
なんかでもわかる。
北斗くんは多分だけど無意識で本気だ。
だからバイトが来なくてあんなに焦っていて、私達が働くと言ったらホッとして泣いた。
「家業ってすげーよな。学校であんなバカばっかやってるヤツがすげー大人でカッコ良く見える。」
うん、わかる。
今日の北斗「さん」は間違いなく北斗さんだ。
「今日たくさん助けてもらったんだ。」
オーダー間違えてても北斗さんがちゃんと手直ししてくれて、ちょっと困った時もサッと助けてくれる。
そういえば…。
「ねえ、なんでここの電話番号って秘密なの?」
と聞いた。
「えっ?秘密じゃないよ。多分普通にレシートに書いてある。」
「えっ?そうなの?さっきお客さんに電車番号聞かれたら企業秘密だって答えなさい、って言われたよ。」
その瞬間疾風くんの顔が怖いくらい真面目になった。
「電話番号聞かれたの?誰に何回?」
「えっお客さんに…3回?だから企業秘密です、どうしても必要なら北斗さんに聞いてください、って。」
「他には?電話番号渡されたり、名前聞かれたり、後で会おうとか言われてない?」
「あー。電話番号はしおりさんが返しちゃった。他はない…よ。」
「返しちゃった?」
「うん、あれ何かお店に用があったんじゃなかったのかな。北斗さんに聞かなくてよかったのかな。」
ゴンっ、と疾風くんが卓におでこをぶつけて下を向いた。
「えっ、大丈夫?痛くない?どうした、疲れちゃった?」
「…疲れた。心配すぎて…。」
「大丈夫?」
「大丈夫…じゃないかも。」
「えっ、どうしよう。」
あたふたしていると、北斗くんの従姉妹のお姉さんが来た。
「お疲れ、今日はありがとう。やっと1人バイト来たんだけど…。」
「すみません、翠を、翠を上がらせてやって下さい!」
すかさず疾風くんが頼み込んだ。
「北斗にもそれ言われたよ。心配すぎて怖いって。」
あははとお姉さんは笑ってる。
「すみません…鈍臭くて…。でも疾風くん疲れてるっぽいから、疾風くんが…。」
「いや、仕事ぶりは良かったってしおりちゃんは言ってるから、そうじゃないと思う。
だけど1人上がってもつまらないだろうから、しおりちゃんの休憩終わったら北斗の横についてあげて。あと1人来たら翠ちゃんと花音ちゃんは上がりでも良いし。」
じゃあ頑張って。
とお姉さんはヒラヒラ手を振って戻っていった。
(疲れた…。)
こんなに忙しいなんて知らなかった。
ゴールデンウィークに来た時はもう少しゆったりしていたのに。
あ、焼けちゃった。
足首にはくっきりサンダルのストラップの跡が付いちゃった。海用のスポーツサンダルなので幅がある。
まあ靴下を履けばいっか、華奢なヒールのサンダルは…当分無理かな?
「お疲れ。」
お昼ご飯の賄いラーメンを2つ持って疾風くんがやって来た。
「あ、ありがとう。」
好きに飲んでいいと言われているクーラーボックスからペットボトルを出して、座る。
「疾風くんも休憩?」
「うん、北斗が行ってこいって。」
賄いラーメンっていっても普段お店で出しているものと同じ。この間は醤油味だったけれど、今日のは塩ラーメン。さっき聞いた魚介味。
疲れた体にラーメンの塩気が心地よく染み込む。
「やっぱり美味しい。」
しばらく無言でラーメンを啜る。
「今日は北斗さん、だよ。」
「それな、ウケた。」
厨房ともやり取りする北斗くんには調理師さん以外みんな敬語なんだって。
「仁志がタメ語使ってたら変な顔されたんだって。」
なんかでもわかる。
北斗くんは多分だけど無意識で本気だ。
だからバイトが来なくてあんなに焦っていて、私達が働くと言ったらホッとして泣いた。
「家業ってすげーよな。学校であんなバカばっかやってるヤツがすげー大人でカッコ良く見える。」
うん、わかる。
今日の北斗「さん」は間違いなく北斗さんだ。
「今日たくさん助けてもらったんだ。」
オーダー間違えてても北斗さんがちゃんと手直ししてくれて、ちょっと困った時もサッと助けてくれる。
そういえば…。
「ねえ、なんでここの電話番号って秘密なの?」
と聞いた。
「えっ?秘密じゃないよ。多分普通にレシートに書いてある。」
「えっ?そうなの?さっきお客さんに電車番号聞かれたら企業秘密だって答えなさい、って言われたよ。」
その瞬間疾風くんの顔が怖いくらい真面目になった。
「電話番号聞かれたの?誰に何回?」
「えっお客さんに…3回?だから企業秘密です、どうしても必要なら北斗さんに聞いてください、って。」
「他には?電話番号渡されたり、名前聞かれたり、後で会おうとか言われてない?」
「あー。電話番号はしおりさんが返しちゃった。他はない…よ。」
「返しちゃった?」
「うん、あれ何かお店に用があったんじゃなかったのかな。北斗さんに聞かなくてよかったのかな。」
ゴンっ、と疾風くんが卓におでこをぶつけて下を向いた。
「えっ、大丈夫?痛くない?どうした、疲れちゃった?」
「…疲れた。心配すぎて…。」
「大丈夫?」
「大丈夫…じゃないかも。」
「えっ、どうしよう。」
あたふたしていると、北斗くんの従姉妹のお姉さんが来た。
「お疲れ、今日はありがとう。やっと1人バイト来たんだけど…。」
「すみません、翠を、翠を上がらせてやって下さい!」
すかさず疾風くんが頼み込んだ。
「北斗にもそれ言われたよ。心配すぎて怖いって。」
あははとお姉さんは笑ってる。
「すみません…鈍臭くて…。でも疾風くん疲れてるっぽいから、疾風くんが…。」
「いや、仕事ぶりは良かったってしおりちゃんは言ってるから、そうじゃないと思う。
だけど1人上がってもつまらないだろうから、しおりちゃんの休憩終わったら北斗の横についてあげて。あと1人来たら翠ちゃんと花音ちゃんは上がりでも良いし。」
じゃあ頑張って。
とお姉さんはヒラヒラ手を振って戻っていった。
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