129 / 242
文化祭 準備
学習ボランティア 疾風視点
しおりを挟む
実際に磯山学園に行ってみよう、そう言い出したのは絵里だった。
「お金を渡すだけ…ってなんか違う気がする。」
と言った俺の言葉を受けて、
「じゃあ、実際に行ってみるのはどうかな?
行ったこともない場所を支援するのと、行った場所を支援するのはきっと熱量が違うから。」
と。
それをみんなに話すと、部活がある人や予定がある人を除いて、10人ほどで磯山学園を見に行く事になった。
原田先生がアポを取ってくれて、「学習ボランティア」という形でお邪魔させて貰う。
もちろん?嶋田さんもくっついて来た。
その日、何故か富田と悠太が剣道の道具一式を抱えて持ってきた。
「何で?」
と聞く絵里に、2人は
「行けばわかる。」
とニヤニヤして答えた。
コハク駅から南洲線に乗り換えて、約1時間。県を跨いで磯山駅に着いた。
「あ、あそこ。」
菜々子が指さしたのは茶色く削れた山肌だった。
生々しい被害の跡に言葉が出ない。
「ほら、タクシー乗るぞ!」
原田先生が被害の跡に立ちすくむ俺たちを急かした。
タクシーが止まったのは細い山道の入り口。
暗く生い茂った大きな木が、アーチを作っている。
その下の急な坂道を登っていくと、磯山学園が見えた。
出迎えてくれた寮長先生が、
「いらっしゃい、あれ?タカシ先生!?」
と驚く。
「タカシ先生!?」
寮長先生の視線の先には富田がいた。
「お久しぶりです。」
ペコリと富田が頭を下げた。
富田の家は剣道の道場をやっていて、父親が師範なんだそうだ。
父親はボランティアでここの子供達に時々剣道を教えていた。
幼い富田も一緒にここへ来て、剣道をして、年齢的に何上がると共に、子供たちに教えるようになったそうだ。
「だから先生ってか。」
防具の意味もわかった。
「ああ、まあ。」
「富田」先生じゃないのはお父さんが「富田先生」になるから、だそうだ。
富田と悠太は道着に着替えて、ホールで剣道を教える事になった。
男の子の半分程がホールに走っていった。
「勉強より、コッチ!」
と言う子供たちには苦笑い。
俺と皇は算数、絵里は簡単な英語、菜々子達は国語。
みんなそれぞれ自分の得意な教科を子供たちと一緒にやる事にした。
廊下からこっちを見ている男の子に最初に気付いたのは皇だった。
「悪い、ここ頼む。」
皇がそっと立ち上がる。
「大丈夫かな?裕翔はスゲエ人見知りなんだ。」
一緒に勉強していた子が教えてくれる。
…そうか。
「うん、あのお兄さんなら大丈夫。」
そう言ってあげる。
…弟の壮くんを思い出させたんだろう。
皇は慣れてる。きっと大丈夫。
「お兄ちゃん、出来た!」
隣で問題を解いていた女の子がノートを見せてくれる。
「うん、どれどれ。うん、出来てる。凄い!」
ニコッと照れて笑う小さな女の子を見て、自然に顔が綻んだ。
「お金を渡すだけ…ってなんか違う気がする。」
と言った俺の言葉を受けて、
「じゃあ、実際に行ってみるのはどうかな?
行ったこともない場所を支援するのと、行った場所を支援するのはきっと熱量が違うから。」
と。
それをみんなに話すと、部活がある人や予定がある人を除いて、10人ほどで磯山学園を見に行く事になった。
原田先生がアポを取ってくれて、「学習ボランティア」という形でお邪魔させて貰う。
もちろん?嶋田さんもくっついて来た。
その日、何故か富田と悠太が剣道の道具一式を抱えて持ってきた。
「何で?」
と聞く絵里に、2人は
「行けばわかる。」
とニヤニヤして答えた。
コハク駅から南洲線に乗り換えて、約1時間。県を跨いで磯山駅に着いた。
「あ、あそこ。」
菜々子が指さしたのは茶色く削れた山肌だった。
生々しい被害の跡に言葉が出ない。
「ほら、タクシー乗るぞ!」
原田先生が被害の跡に立ちすくむ俺たちを急かした。
タクシーが止まったのは細い山道の入り口。
暗く生い茂った大きな木が、アーチを作っている。
その下の急な坂道を登っていくと、磯山学園が見えた。
出迎えてくれた寮長先生が、
「いらっしゃい、あれ?タカシ先生!?」
と驚く。
「タカシ先生!?」
寮長先生の視線の先には富田がいた。
「お久しぶりです。」
ペコリと富田が頭を下げた。
富田の家は剣道の道場をやっていて、父親が師範なんだそうだ。
父親はボランティアでここの子供達に時々剣道を教えていた。
幼い富田も一緒にここへ来て、剣道をして、年齢的に何上がると共に、子供たちに教えるようになったそうだ。
「だから先生ってか。」
防具の意味もわかった。
「ああ、まあ。」
「富田」先生じゃないのはお父さんが「富田先生」になるから、だそうだ。
富田と悠太は道着に着替えて、ホールで剣道を教える事になった。
男の子の半分程がホールに走っていった。
「勉強より、コッチ!」
と言う子供たちには苦笑い。
俺と皇は算数、絵里は簡単な英語、菜々子達は国語。
みんなそれぞれ自分の得意な教科を子供たちと一緒にやる事にした。
廊下からこっちを見ている男の子に最初に気付いたのは皇だった。
「悪い、ここ頼む。」
皇がそっと立ち上がる。
「大丈夫かな?裕翔はスゲエ人見知りなんだ。」
一緒に勉強していた子が教えてくれる。
…そうか。
「うん、あのお兄さんなら大丈夫。」
そう言ってあげる。
…弟の壮くんを思い出させたんだろう。
皇は慣れてる。きっと大丈夫。
「お兄ちゃん、出来た!」
隣で問題を解いていた女の子がノートを見せてくれる。
「うん、どれどれ。うん、出来てる。凄い!」
ニコッと照れて笑う小さな女の子を見て、自然に顔が綻んだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。
鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。
名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。
親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。
性と欲の狭間で、歪み出す日常。
無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。
そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。
青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。
前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章
後編 「青春譚」 : 第6章〜
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる