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文化祭 準備
学習ボランティア 富田視点
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「今度の土曜、磯山学園に学習ボランティアに行ける奴いるか?」
そう言ってきたのは須藤だった。
和津と編入してきた新田の発案で、実際に磯山学園に行ってみるんだという。
この機会を逃したくなかった。
「なあ、須藤。」
剣道を教える事は出来るか?と聞いた。
ある程度事情は話した。
月に1回剣道を教えに行っていたこと、災害のせいで数ヶ月止まってしまっている事。
「もし行けるなら、稽古を見てやりたいんだ。」
と頼んだ。
須藤は二つ返事でOKしてくれた。しかも
「悠太も剣道部でしょ?声掛けてみたら?」とまで言ってくれた。
悠太と2人で防具を抱えて磯山まで行く事に決まった。
俺は、災害が起きてすぐに父親と磯山学園に行った。
子供たちはほとんどいなかった。
断水中の間は休校になるので、帰れる子達はみな家に戻されたそうだ。
…全員じゃない。
災害に遭ったというのに、家に戻れない子がいる。
その事に胸が張り裂けそうになる。
育児放棄、育児困難家庭…。
ここにいる子は皆が何かしらの事情を抱えている。
だけど、更に振るいに掛けられた。
帰れる子と、帰れない子…。
2度苦痛を味わったようなものだ。
痛む気持ちを吐き出せずに、土砂崩れの瓦礫を父親と無言で掻き出した。
実はこのとき父親は見舞い金を包んでいた。
それを差し出したところ、申し訳なさそうに、しかしきっぱりと突き返された。
「公立の施設なので、個人からの寄付は受け取れないんです。」と。
個人じゃなきゃ良いのか?
役所で、磯山支援の募金箱は設置されているけれど、俺が支援したいのは礒山の中の「磯山学園」だ。
そんな時にふと思いついた。
「学校からなら受け取って貰えるかも。」
と。
ボランティアに来ているという原田に相談してみた。
「文化祭で利益が出る企画ならそれを充てても良いか、みんなに聞いてみろ。」
そう言われた。
学校では教師発信で寄付を募る事は出来ないのだそうだ。
あくまで生徒発信じゃなきゃダメだ。
生徒会に直訴する方法もあるけれど、俺1人の意見が通りやすいのは、文化祭のクラスか部活動企画だと思うぞ、と。
剣道部の企画は毎年同じ、「道着フォト撮影」の一択。無料イベントだからダメだ。
…どうか、クラスの企画が販売でありますように…、と祈るしかなかった。
「お前、素直に言えばよかったのに。」
ホームルームで「その方が企画が通りやすいんじゃないか?」としか言えなかった俺に原田は呆れていた。
だけど、なんとなくの後押しをしてくれた原田には感謝してる。
「初めから言えよ。」
みんなにそう言われた。
「…損得で寄付行為を考える冷たい奴だと思っちゃったじゃねえか。」
須藤と悠太、特に悠太にそう言われた。
「…なんか、言いにくかったから。」
…照れや恥ずかしさもあったけど、家に帰りたくても帰れないでいる子がいると言うことを、ペラペラと話したくなかった。
ただ、それからの展開が俺の想像を超えていた。
あっという間に枚数が増え、協力してくれる人が増えた。
このクラスは変なヤツばっかり集まってる。
目の前に、一番変なヤツの和津がいる。
「なんで行こうと思った?」
帰り、電車の中で聞いた時、
「なんかお金だけって違う気がして、さ。」
とあっさりと答えた。
「磯山学園の話をしてくれたヤツがね、ここの先生は子供達を楽しませる事に頑張ってるって聞いたんだ。」
なんかないか、って思ったとき、新田が、
「じゃあ、行ってみる?」
と言ったんだそう。
ああ、アイツも変なヤツ。
モデル…だっけ?
綺麗な子だな。
それが第一印象。
去年はクラスも違うのに、廊下ですれ違うだけでも目立ってた。
でも、なんていうか…。
「新田、あんなヤツだったけ?」
「うーん、違ってた…かも。」
「…だよな。」
目つきが変わった。
それから表情も。
うまく言えない。
人形が人間になった、そんな感じ。
ついじーっと見てたんだろう、バチッと目が合った。
「何?」
と言いながらこっちを見て首を傾げた。
理由なく見てたなんて言えなかったから、
「なんで行こうと思った?」
と和津に聞いたことを、また聞いた。
「来たかったから、見たら何をすれば良いかわかるかな、って。」
「ふーん。」
その時新田が言った。
「来て良かったよ。色々見えた。」
その時何か射抜くような真っ直ぐな視線を向けながら、
「ありがとう。」
と言われた。
そう言ってきたのは須藤だった。
和津と編入してきた新田の発案で、実際に磯山学園に行ってみるんだという。
この機会を逃したくなかった。
「なあ、須藤。」
剣道を教える事は出来るか?と聞いた。
ある程度事情は話した。
月に1回剣道を教えに行っていたこと、災害のせいで数ヶ月止まってしまっている事。
「もし行けるなら、稽古を見てやりたいんだ。」
と頼んだ。
須藤は二つ返事でOKしてくれた。しかも
「悠太も剣道部でしょ?声掛けてみたら?」とまで言ってくれた。
悠太と2人で防具を抱えて磯山まで行く事に決まった。
俺は、災害が起きてすぐに父親と磯山学園に行った。
子供たちはほとんどいなかった。
断水中の間は休校になるので、帰れる子達はみな家に戻されたそうだ。
…全員じゃない。
災害に遭ったというのに、家に戻れない子がいる。
その事に胸が張り裂けそうになる。
育児放棄、育児困難家庭…。
ここにいる子は皆が何かしらの事情を抱えている。
だけど、更に振るいに掛けられた。
帰れる子と、帰れない子…。
2度苦痛を味わったようなものだ。
痛む気持ちを吐き出せずに、土砂崩れの瓦礫を父親と無言で掻き出した。
実はこのとき父親は見舞い金を包んでいた。
それを差し出したところ、申し訳なさそうに、しかしきっぱりと突き返された。
「公立の施設なので、個人からの寄付は受け取れないんです。」と。
個人じゃなきゃ良いのか?
役所で、磯山支援の募金箱は設置されているけれど、俺が支援したいのは礒山の中の「磯山学園」だ。
そんな時にふと思いついた。
「学校からなら受け取って貰えるかも。」
と。
ボランティアに来ているという原田に相談してみた。
「文化祭で利益が出る企画ならそれを充てても良いか、みんなに聞いてみろ。」
そう言われた。
学校では教師発信で寄付を募る事は出来ないのだそうだ。
あくまで生徒発信じゃなきゃダメだ。
生徒会に直訴する方法もあるけれど、俺1人の意見が通りやすいのは、文化祭のクラスか部活動企画だと思うぞ、と。
剣道部の企画は毎年同じ、「道着フォト撮影」の一択。無料イベントだからダメだ。
…どうか、クラスの企画が販売でありますように…、と祈るしかなかった。
「お前、素直に言えばよかったのに。」
ホームルームで「その方が企画が通りやすいんじゃないか?」としか言えなかった俺に原田は呆れていた。
だけど、なんとなくの後押しをしてくれた原田には感謝してる。
「初めから言えよ。」
みんなにそう言われた。
「…損得で寄付行為を考える冷たい奴だと思っちゃったじゃねえか。」
須藤と悠太、特に悠太にそう言われた。
「…なんか、言いにくかったから。」
…照れや恥ずかしさもあったけど、家に帰りたくても帰れないでいる子がいると言うことを、ペラペラと話したくなかった。
ただ、それからの展開が俺の想像を超えていた。
あっという間に枚数が増え、協力してくれる人が増えた。
このクラスは変なヤツばっかり集まってる。
目の前に、一番変なヤツの和津がいる。
「なんで行こうと思った?」
帰り、電車の中で聞いた時、
「なんかお金だけって違う気がして、さ。」
とあっさりと答えた。
「磯山学園の話をしてくれたヤツがね、ここの先生は子供達を楽しませる事に頑張ってるって聞いたんだ。」
なんかないか、って思ったとき、新田が、
「じゃあ、行ってみる?」
と言ったんだそう。
ああ、アイツも変なヤツ。
モデル…だっけ?
綺麗な子だな。
それが第一印象。
去年はクラスも違うのに、廊下ですれ違うだけでも目立ってた。
でも、なんていうか…。
「新田、あんなヤツだったけ?」
「うーん、違ってた…かも。」
「…だよな。」
目つきが変わった。
それから表情も。
うまく言えない。
人形が人間になった、そんな感じ。
ついじーっと見てたんだろう、バチッと目が合った。
「何?」
と言いながらこっちを見て首を傾げた。
理由なく見てたなんて言えなかったから、
「なんで行こうと思った?」
と和津に聞いたことを、また聞いた。
「来たかったから、見たら何をすれば良いかわかるかな、って。」
「ふーん。」
その時新田が言った。
「来て良かったよ。色々見えた。」
その時何か射抜くような真っ直ぐな視線を向けながら、
「ありがとう。」
と言われた。
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