若松2D協奏曲

文化祭

疾風視点

俺は今何をやらされているんだ！？

２日目の朝、登校した途端に林達バスケ部１年生に拉致られた。

「やっぱり忘れてる！」
「…イヤ。忘れてないよ。」
「７時半に部室集合！」
「…ごめん。それは聞いてなかった。」

そんな気はしてたんですよ、と林がボヤく。

「着替えて下さい。残ってるのはこれだけです。」
と渡されたのは、吹部が着ているような金モールのついた紺上着と細身の白いパンツ。上着の丈は少し長い。
「なんだこれ？」
「魔法が解けた野獣です。」

…これが？
ルイ１６世とかじゃなくて？

絶対にここから動かない、良いですか！？
と立たされたのは三階の廊下。

…目立ち過ぎる。

通りすがりの人がみんな俺をチラ見して、
「…ヤバ。」
と呟いていく。
写真も何枚も撮られた。

…嫌だなぁ。早く終われば良いのに…。

通りすがりのクラスの宣伝をしている、花音と優、そして皇に思いっきり笑われた。

「何それ？」
「…野獣？魔法が解けた野獣って。」
「…ああ。」
と花音と優は何故か納得してる。
皇に至っては、
「俺まだマシだった。」
だって。

「えっ？皇子、何着たの？」
「ホストスーツ。」
「…その割に平和だったね。」
「副校長の隣にいたから。」
「あー、そういうこと。」

「…ねえ、これどこが野獣？ねえどういうこと？」

「えっ？知らないの？」
「うん。」

３人は顔を見合わせて…。
「ま、頑張れ。」
とだけ言って笑いながら行っちゃった。

昨日結局頑張っても追加の袋作りは終わり切らなかった。

…行っちゃおうかな。
別に全部コンプリートしなくても…。

そう思う度に、バスケ部のユニホームを着た奴らが俺を見にくる。
「ちゃんといた。絶対に動かない！良いですね！」
と去っていく。
１２時まで…。あと１時間も、長いだろ！

ビンゴカードを持っている人も持っていない人も、俺を見てヤバいと言って写真を撮って行く。
１年生の女子が、ダーっと走ってきて、俺を見てピタリ！と立ち止まる。
「うわぁ、本当だ。」
…別に嘘ついた覚えはない。
チラリとその子達を見ると、キャーっと叫んで逃げて行く。

もちろん写真を撮ってから、な。

あーあ。
本当早く終わらないかなぁ。