若松2D協奏曲

文化祭

隠しキャラ 北斗

文化祭の間、俺と１年の後輩と２人で、俺たちは「隠しキャラ」になる。

バスケ部の「校内探検隊」はスタンプを9個集めなきゃならない。
集めたスタンプの分だけ飴を配る企画だけれど、そうそう簡単に飴をたくさん渡すわけにはならない。
すぐに揃ったら面白くない。

普通ならFREEになるであろうセンターのマス目には難易度が高い「隠しキャラ」を入れた。
俺がその隠れキャラになる。

隠れていなさそうな隠れキャラ。
「迷った時はユニホームを着たバスケ部員にヒントを貰ってください。」
という名目で、部員全員がユニホームを着て文化祭に参加している。
ヒントを出す部員が着るのは、濃色のエバーグリーン地のユニホーム。

…実は俺ともうひとりだけ、白地のユニホームを着ている。
「背番号１０」が目印。

みんなが必死で、バスケ部のユニホームを探す。校内に溢れているのはエバーグリーンなので、みんなの目はエバーグリーンの方に向かう。
バスケ、サッカー、ハンドボール…。
ユニホームが２色ある事に気付けるか？が鍵。

クラスに専念出来る担当、これしかない！
疾風、皇子、すまん。
企画段階でこの役取っちゃった！っというか集まりに参加しなかったお前らも悪い。

優のバド部は文化祭では活動しない。優はずっとクラスにいる。
…あっ、これはどうでもいいか。いや、よくないけど。

優が客動線をすっきりさせてくれたお陰で、お客さんの流れが良くなった。
優はそれでも懸命になって、客寄せと整理をやってくれている。

「北斗！」
優の声がして、視線を上げた。

…えっ！何？あの男？誰？

落ち着いた感じの大人の男の人…。雰囲気イケメンっていうのはきっとあんな感じ。
その人が優に親しげに話しかけてる！
優もなんだか嬉しそうに笑顔になってるし！

黒のざっくりニットに、茶色のカーゴパンツ。
脚…長っ！

えっ？俺知らない。
優にあんなイケメンの知り合いがいるなんて聞いてない！

「ごめんちょっと離れる！」

そのまま優はその男とどこかに行っちゃった！

なんだあの男！
優と一緒に行くのが当たり前みたいな顔しやがってるし！
少し長めの前髪が鬱陶しい、切れよ！

「…すいません。…あの、すみません。」
「北斗くん？あっ、私やります。ごめんなさい。」
隣にいた菜々子の声で現実に引き戻された。

ヤバっ、集中しなきゃ！