若松2D協奏曲

枝豆

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文化祭

優視点

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「文化祭、憂鬱…。」
帰り道で北斗に打ち明けた。

「えっ?なんで?」
ビックリした顔で聞き返された。
「…だって。物作り苦手なんだもん。」
書いたり描いたり、縫ったり塗ったり…。

私の指先は物作りには全く機能してくれない。

「そっか。優、そういうの苦手なんだ。」
何故か楽しそうに北斗が微笑む。
「…そんなに面白い?」
私が下手画伯なの、そんなに楽しい?
ついキツい口調で問い詰めそうになった。

「えっ?あっ、違う違う!」 
ブンブンと手のひらを振りながら、言い訳し始める。

「…苦手って言ってくれるようになったんだなぁ、と思って、さ。」

ボフン!顔が赤くなった。

あー、そういえば。
いつの間にか、嫌い、苦手、怖い…って普通に言うようになったなぁ。

「…でもさ、大丈夫じゃない?」
北斗はいつでもポジティブだから、こんなに悩んだりしないんだよね。

「描きものは花音がやるじゃん、実行委員は仁志と菜々子ちゃんだし。
きっと優にも出来る事沢山あるよ。」

思っていたよりも規模が大きくなった。
皇子が嶋田さんを巻き込んでしまったせいで、色々なところから注目されてしまった。
少しでも沢山寄付する為に、枚数も記録更新に挑戦する事にもなった。

実行委員の菜々子や制作の責任者になった花音を手伝ってはいるけれど…。
それしか出来ないというのもあるし。

それに、接客も忙しいのも慣れたでしょ?と聞かれると、違うとは言えない。
海の家のさくら屋は忙しいなんて甘い言葉じゃ片付けられないくらいだったから。

「声出したりさ、お客さんとコミュニケーション取ったりさ、あっ、あと優暗算も得意じゃん。」

いつも北斗は私を上へ上へと向かわせてくれる。
「まあ、出来ること、頑張るしかないじゃん!」
と笑っているだけなのに。

凄い人だよね…と思ってしまうのは…なんか悔しい。



「いらっしゃいませ。」
一番目立つ場所に出店したからか、人が全く引かない。
ここで人集りが出来ると、玄関に人が溜まってしまう事に気がついた。

「ちょっとコレ使うね。」
ノリで作った9個セットをひとつ取った。
マステに数字を書いて、貼り付ける。
1は電車
2は楽譜
3はロボット
4…5…。 
取手の部分を紐でまとめて縛った。

「レイアウト変えるから!」
見にきたお客さんに見本セットを見てもらいながら、番号で受付に申告してもらう。
受付で紙に番号を入れて、それを隣に渡す。
紙を見ながら壁に吊るした商品を揃えて、
最後にレジで会計する、そんな流れを作った。

「こちらにお並び下さい!
決まった人から受付に番号をお知らせ下さい!」

なるべく大きな声で、ハッキリと伝えていく。
人が堪らないようにだけは気をつけた。

「北斗、レジ足んない!」
「皇子、見本もうひとセット作って!」
「すみません、1列で並んで下さい。後ろ人が通れるようにお願いします!」

無我夢中だった。
こんなに人が集まるなんて、聞いてない。
それでもなんとか玄関に人が堪らないようにはなった。

「優ちゃん、頑張ってるね。」
背中から声を掛けられた。
「あっ!店長さん!」

花音のバイト先の店長さんの大和さんが遊びに来てくれた。
花音と一緒に注文と商品の受け取りに行ったので、顔見知りになった。

「すごいね、大盛況だ。」
「…ね、こっちがビックリですよ。
あ、花音、今追加作ってます。」
「えっ?1日目なのに?」
「ええ、すごく偏っちゃってて…。電車のとロボットの、足りなさそうだな、って。」
「…俺、手伝ってもいい?なんか楽しそう。」
「はい、もちろん!花音絶対喜びますよ。
じゃ、案内しますね、化学室なんです。」

「北斗!ごめんちょっと離れる!」
そう声を掛けて、ブースから離れた。



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