若松2D協奏曲

枝豆

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文化祭

絵里視点

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「どうせならコスプレしようよ。」
提案したのは私。

私と富田と仁志とで、初日の宣伝を担当する。
「はあ?コスプレ?」

「うちにあるのは…スパイダーマンとスーパーマンと、海賊と魔女と、ミイラ男と…。」

仁志が
「すげえな。」
と呆れる。

「ほらウチ、片方の親外国人じゃん。ハロウィン結構本気。」
「あー、なる。」
「俺はなんでも良いけど…富田は…。」
「嫌がるよね、きっと。」

the 日本男子、富田宗。
恥ずかしがるだろう。
でもそれじゃ、宣伝にはならない。

「1000枚売るの!やれる事はなんでもやるの!」
着せる!って決めた。
っていうか私が着たい!

最近翠に感化され始めているのが自分でもわかる。
ちょっと前まで私はこういうのをやりたがらないタイプだった。
…でも。

まず留学先で意識が変わった。
カナダの友達は真面目で積極的で、なんにでも一生懸命な子ばかりだった。
そして翠との事があって。
もう後悔はしない、ちゃんとやろうと決めた。
決めちゃうと、なんだか楽しくなって来た。


「なんか違うんだよな…。」
「うん、なんか違うよね。」
和津が呟いた言葉は私の言葉でもあった。

みんなたくさん作ってたくさん売ってたくさん寄付する事に気持ちがシフトしてる。

もちろん否定はしない。
ただそれだけじゃダメな気がしている。

「俺たちもっと学園の事知らなきゃダメなんじゃ無いかな。何のために寄付するのか、それを知ればもっとやれる事が見つけられる気がするんだよな。」

磯山学園は少し変わった学校だった。
半分療養施設、半分養護施設、みたいな。
「…じゃあ行ってみない?」
この目で見たらきっと何か掴めるんじゃ無いか、そんな気がした。

原田先生に相談したら、
「行ってみるか?」
と背中を押してくれた。
「はいっ!」

話だけ聞いても意味はない。自分の目で見て、確かめよう。
行ったらさらに想いが強くなった。
ああ、この子達をもっと笑顔にしてあげたい。

1000枚売る!
そう決めた。

「うーん、顔隠れるヤツなら?スパイダーマンかミイラ。」
「じゃあ、スパイダーマン。俺スーパーマン着るわ、アメコミ。」
「じゃあ、私、キャットウーマンか、ワンダーウーマン。」
「ワンダーウーマン?知らないよ。」
「日本ってやってなかったっけ?まあ良いや、じゃあキャットウーマンね。」

そうして無理やり富田にも着せて3人でコスプレをする。

ヤバっ。
なんかすごく楽しくなってくる。
アメコミキャラが3人並んで歩いていると、自然にみんなの視線がこっちを向くのが、ゾクゾクとしてくる。

そう、これは文化祭。
私達も、楽しく笑顔にならなきゃいけない。



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