若松2D協奏曲

枝豆

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文化祭

ごめん

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ファミレスから駅まで走った!
多分体育祭の疾風にも負けない気がするくらいのスピードが出てた、はず。

優は駅前のロータリーでひとりでポツンと座っていた。

「…ゆー。」
ヤベっ、声出ない。
そのまま走っていって、後ろからギュッと抱きついた。

「わっ、ぎゃぁ!」
あ、ごめん。いきなり抱きつかれたら驚くよな。

「はぁ、はあ、…ご、めん。」
息が切れて言葉が出ない。

「…って北斗?」
振り向いた優の目が見えた。
「…泣いてた?」
「…泣いてない!」

嘘だろ、泣いてただろ?
…でもいいや、それは今はどうでもいい。
そこ突っ込むとこじゃないのはわかるから。
それ突っ込むと優のガードが固くなるから。

「…ごめん。」
…って何が?だよな。

ひとりで勘違いして、ひとりで落ち込んで、それで優を遠ざけた。

「…連絡したんだよ。」

…あっ!
「ゴメン、携帯死んでる。」

えっ!と驚く優にもう一度ごめんと謝った。

「優、連絡するって言ってたから、すぐに出られるようにってポケットの中にスマホ入れてて。
店、手伝ってたら落として、画面が割れた。」

プッ。
優が笑った。
「なんだ、馬鹿みたい。」

スマホ落として壊して、落ち込んでただけか…。あー馬鹿らしい。心配して損した。

…違う!って言いたいけど、言えなかった。
じゃあなんで?って言われたら、この女の子みたいなドロドロした気持ちを優に話さなきゃいけなくなる。

…そんなの…カッコ悪いじゃん、出来ねーよ、俺は。

「明日、帰り修理に行くから付き合って。それと誰とも連絡取れないから、明日1日俺の連絡係になって。」

「…もう、しょうがないなぁ。」
「…ありがと。」





時系列がおかしい。
北斗の機嫌が悪いのはスマホが壊れる前からだ。

きっと昨日何かあったんだろう。
翠には話せて、私には話せない事。
翠が心配して2回も電話をくれるような事。
それはつまり私との事だ。
だけど…。騙されて知らないフリをしてあげる事にした。

なんでも言葉にする北斗だけど、ううん、北斗だから。
きっと私には知られたくない事なんだろう。

その辺りのさじ加減は従姉妹おねえさんを見ていればわかる。
…北斗は知らないカモだけれども、おかみさんも本店のおばさんもおねえさんも…。
なんでも明け透けに聞いちゃうように見えて、肝心の事はさりげなく知らないフリをしてあげている。

…明日翠に聞けばいいだけ。

…だから、ごめんね。
素直に謝れないけど、直すから、許してね。
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