若松2D協奏曲

枝豆

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happy birthday

藍さん

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翠達家族だけじゃなくて、お父さんのお友達や演奏家仲間達による演奏がひと段落して、パーティーはご歓談タイムへと突入した。

翠は「来てくれた人に挨拶して来るね。」と後から来たお父さんの知り合いの所へ行った。
翠のお父さんも別人のようににこやかに来た人一人ひとりに挨拶をしている。

「藍さん!」
とクミが誰かを手招きする。
手招きに応じてやってきたのは、さっきドラムを叩いていた翠のお兄さんだった。

クミ達とは知り合いらしく、仲良さげに喋って、クミがお兄さんを俺の前に連れてきた。

「コイツです!」
…コイツ?クミ、何をしてくれるんだ!?

お兄さんは上から下まで俺をひと通り見回すと、
「お前が疾風くん?」
と聞いてくる。

「…はい。そうです。」
そうです…けど?それが何か?
言えないけど…。俺、かなり弱気。

「兄の藍です。」
どうも、とか簡単な挨拶をした後、藍さんは俺の横、さっきまで翠が座っていた椅子に座った。

「なぁ、無視されたんだって。」
「うっ!」
痛いところ突かれた。もう知ってるんだ。

「…俺、何かしちゃったんでしょうか。」
「いや、どちらかといえば…何にもしてない。してないから、かな。」

あっ、そう言えば。
ちゃんと挨拶してなかったな。
「すみません、ちゃんと挨拶すべきでした。」
「うん?ああ、無理だろ。翠が連れて来ないんだから。」

藍さんが教えてくれた。
「子離れ出来てないのは親父の方。変な事に拘ってるのも。
君に、と言うよりは翠に対して拗ねているんだ。」

…翠に?イヤ翠は悪くないだろう?
「翠がちゃんと紹介すべきなんだよ、堂々と彼です、って。」

彼…。その言葉になんだかテレる。頬が熱くなりそうだ。
「…照れんなよ。そんな時期とっくに過ぎてるんだろう?何ヶ月だっけ?5月からだから…」
6、7と藍さんは指を折る。
「もう半年か。いい加減親父も拗ねる。」

あー、早いな。もう半年経ったのか。

「今日挨拶させて貰っても?」
「うん、その方がいい。翠にも言っとく。」

当の翠は戻ってきて向こうで優達と話してる。

「ああ見えてツンなんだよな。」
…翠が?ツンっ?ツンデレのツン…だよな。
「翠が?」
「うん、ああ、家族限定。今だって俺がいるからここには戻らない。」

藍さんは色々な過去話を教えてくれた。
過剰なまでに溺愛し過ぎた結果、愛娘から距離を置かれてしまった可哀想な父親の話。父の言うがままに妹に接して、結果嫌われた兄の話を。

「なんか…同情しそう。」
横で聞いていた北斗が呟く。

「親父は学校行事は全部行ってる。体育祭も文化祭も。だから君と体育祭でハグした場面も見てる。」
あぁ、ナギさんも前に言ってたな。文化祭も来てたのか…。
「でも、絶対来るな!と言われているから遠くから見るだけ。」

チラッとでも顔を見せてくれてたら、もっと簡単に紹介してもらえて、軽い挨拶で済んだのかなぁ。

「俺、今行ってくる!」
椅子から立ち上がった。

お父さんは…知り合いかな?前の隅で立ち話をしながらお酒を呑んでいた。

「おっ、男前!頑張れよ。」
背中に藍さんの声援が飛んできた。
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