171 / 242
アンハッピーハロウィン 富田
絵里と宗と仁志と
しおりを挟む
「宗ぃー、お友達。上がってもらう?」
「えっ!?ああ、下に行く。」
10月の最後の日、部活を終えて家に帰って、風呂入って宿題して、なんとなくスマホを眺めていたら、お袋が俺を呼びに来た。
…友達っ?こんな時間に誰だろう…。
靴を履いて、玄関を開けて、外に出たら魔女がいた。
「trick or treat!」
「trick or trick!」
魔女だけじゃなかった、ミイラもいた。
「新田、仁志、お前達何してんの?」
「ハロウィンだけど?」
はいっ!と手を差し出す2人。
頭にハテナがいっぱい飛んだ。
「…もしかして富田知らない?」
「…何を?」
「…イタズラしちゃうぞ?」
「イタズラしちゃうぞおー!」
2人はクスクスと笑っている。更に仁志はゾンビみたいに腕を前で構えている、
「宗、ほら。」
振り返るとそこにいたのはお袋。
「ごめんね、剣道教室の子ども達のお菓子の残り物だけど。」
小さく小分けにビニール袋に入れられたお菓子を渡される。
「これ、どうすんの?」
はぁー、とため息を吐くお袋。
「ハッピーハロウィン!いつもありがとう、ね。」
そういうとお袋はお菓子を一袋ずつ俺の手から引ったくって2人に手渡した。
「せっかくだから上がってもらいなさい。
どうぞ、上がってて。」
「お邪魔しまーす。」
遠慮を知らない魔女とミイラが丁寧に頭を下げて靴を脱いだ。
「まさか富田がハロウィン知らなかったなんて、ビックリだよ。」
部屋に入って落ち着くと新田がそう言って揶揄ってくる。
「ハロウィンは知ってる、知ってたけど。」
街でハロウィンのイベントをやってるのは知ってた。ただの仮装大会みたいなものだと思ってた。
「まあね、日本の文化はいつも少しズレてるからね。」
クリスマスとかバレンタインとか、アメリカのそれとは全然違うよね、と新田は言う。
「俺も知らなかった。お菓子を強奪に練り歩くなんて。」
「ひどーい、その言い方!」
ハロウィンは日本で言うとこのお盆。死んだ人の魂が戻ってくる日。
帰ってきた魂と同じ格好をして、ご機嫌を取ったり、子供たちが悪い魂に見つからないようにするらしい。
「で、なんでウチ?」
「理由…聞いちゃう?」と仁志。
「聞かない方がいい?」
「うん。聞かないで。」と新田。
なんだろう、このモヤモヤ。2人仲良いんだな。
「富田、今度の休み暇?」と仁志に聞かれて
「朝稽古が終われば。」と答えた。
確か予定はなかった…はず、部活もないし。
「じゃ、空けとけ。」
「なんで?」
「なんでも!!」
「…わかった。」
「んじゃ、俺帰るから。富田が絵里を送って。」
…ああ。
…なんだったんだろう。
「えっ!?ああ、下に行く。」
10月の最後の日、部活を終えて家に帰って、風呂入って宿題して、なんとなくスマホを眺めていたら、お袋が俺を呼びに来た。
…友達っ?こんな時間に誰だろう…。
靴を履いて、玄関を開けて、外に出たら魔女がいた。
「trick or treat!」
「trick or trick!」
魔女だけじゃなかった、ミイラもいた。
「新田、仁志、お前達何してんの?」
「ハロウィンだけど?」
はいっ!と手を差し出す2人。
頭にハテナがいっぱい飛んだ。
「…もしかして富田知らない?」
「…何を?」
「…イタズラしちゃうぞ?」
「イタズラしちゃうぞおー!」
2人はクスクスと笑っている。更に仁志はゾンビみたいに腕を前で構えている、
「宗、ほら。」
振り返るとそこにいたのはお袋。
「ごめんね、剣道教室の子ども達のお菓子の残り物だけど。」
小さく小分けにビニール袋に入れられたお菓子を渡される。
「これ、どうすんの?」
はぁー、とため息を吐くお袋。
「ハッピーハロウィン!いつもありがとう、ね。」
そういうとお袋はお菓子を一袋ずつ俺の手から引ったくって2人に手渡した。
「せっかくだから上がってもらいなさい。
どうぞ、上がってて。」
「お邪魔しまーす。」
遠慮を知らない魔女とミイラが丁寧に頭を下げて靴を脱いだ。
「まさか富田がハロウィン知らなかったなんて、ビックリだよ。」
部屋に入って落ち着くと新田がそう言って揶揄ってくる。
「ハロウィンは知ってる、知ってたけど。」
街でハロウィンのイベントをやってるのは知ってた。ただの仮装大会みたいなものだと思ってた。
「まあね、日本の文化はいつも少しズレてるからね。」
クリスマスとかバレンタインとか、アメリカのそれとは全然違うよね、と新田は言う。
「俺も知らなかった。お菓子を強奪に練り歩くなんて。」
「ひどーい、その言い方!」
ハロウィンは日本で言うとこのお盆。死んだ人の魂が戻ってくる日。
帰ってきた魂と同じ格好をして、ご機嫌を取ったり、子供たちが悪い魂に見つからないようにするらしい。
「で、なんでウチ?」
「理由…聞いちゃう?」と仁志。
「聞かない方がいい?」
「うん。聞かないで。」と新田。
なんだろう、このモヤモヤ。2人仲良いんだな。
「富田、今度の休み暇?」と仁志に聞かれて
「朝稽古が終われば。」と答えた。
確か予定はなかった…はず、部活もないし。
「じゃ、空けとけ。」
「なんで?」
「なんでも!!」
「…わかった。」
「んじゃ、俺帰るから。富田が絵里を送って。」
…ああ。
…なんだったんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。
鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。
名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。
親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。
性と欲の狭間で、歪み出す日常。
無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。
そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。
青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。
前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章
後編 「青春譚」 : 第6章〜
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる