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trick or treat 花音
好きなのか?
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バイトを終えて、家に帰って、改めてお父さんにお礼を伝える。
「認めてくれてありがとうございました。
それと大和さんがクビにならずに済むように言ってくれてたのも嬉しかった。」
「ああ、彼のせいじゃないからな。
彼は起きてしまった事に対して出来る限りの事をしてくれたと思う。
店を閉めるのはなかなか決断出来る事じゃない。
悪いのはあの講師だし、軽率な花音にも責任はある。」
「はい。」
「ところで…花音。お前はアイツが好きか?
えっーと店長の…。」
「えっ!?えっ、うん、って違う。好きだけど…好きじゃなくて…。なんていうか…。あっ!そう、尊敬!そうそう、尊敬出来る人!
」
ブッ、と父は吹き出した。
「…戸惑ってるのが隠せて無いぞ。」
「だってお父さんが変な聞き方するから…。」
「まあ、男を見る目はありそうだ。」
…なんの事?
「花音のせいにする事も、メーカーや本社のせいにすることも、あの男は出来た。
だけどしなかった。
状況説明をするときに、「言い訳になるけれど…」とも言っていた。
いくらでも言い逃れする事は出来たけれど、彼はしなかった。
彼は、真面目な人だな。だけど危うい人でもある。」
「危うい?」
「そう、純粋で真っ直ぐは美徳だとは思うけど、それだけでもダメだ。」
…よくわからない。難しそうな話だ。
「良い人なの。尊敬出来る人。優しいし。」
「そっか。花音にはそう見えるって事か。」
違う見方なんてあるのだろう…か?
「お父さんにはどう見えるの?」
「…わからん。まだ見えているのはひとつの面だけだからな。
まあ、他は見たくもないが。」
「まっ、バイトも程々に、学生なんだから、勉強も大切だ。」
「はーい。」
「ったくわかってないな。あんまり母さんに心配掛けるなよ。」
「はーい。」
「花音!」
…わかってるよ、お父さん。
「大事な事は、わかってるよ、お父さん。」
この話はここまで。
…今は。まだここまで。
私はまだ知らない。
この先、事務所で出来る仕事があるときは必ず私にそれが割り当てられる事。売り場に出るときは必ず大和さんも売り場に出ている事。
そしてバイト終わりの夜は必ず大和さんが家まで送ってくれるようになる事を。
「きちんと責任を取りたい。」
秋の人事で本社移動する予定だった大和さんは自らそれを蹴って、あの小さい店舗に残る事を選んだ事を…。
それを知るのはずっとずっと後、私が大人になってから。
「認めてくれてありがとうございました。
それと大和さんがクビにならずに済むように言ってくれてたのも嬉しかった。」
「ああ、彼のせいじゃないからな。
彼は起きてしまった事に対して出来る限りの事をしてくれたと思う。
店を閉めるのはなかなか決断出来る事じゃない。
悪いのはあの講師だし、軽率な花音にも責任はある。」
「はい。」
「ところで…花音。お前はアイツが好きか?
えっーと店長の…。」
「えっ!?えっ、うん、って違う。好きだけど…好きじゃなくて…。なんていうか…。あっ!そう、尊敬!そうそう、尊敬出来る人!
」
ブッ、と父は吹き出した。
「…戸惑ってるのが隠せて無いぞ。」
「だってお父さんが変な聞き方するから…。」
「まあ、男を見る目はありそうだ。」
…なんの事?
「花音のせいにする事も、メーカーや本社のせいにすることも、あの男は出来た。
だけどしなかった。
状況説明をするときに、「言い訳になるけれど…」とも言っていた。
いくらでも言い逃れする事は出来たけれど、彼はしなかった。
彼は、真面目な人だな。だけど危うい人でもある。」
「危うい?」
「そう、純粋で真っ直ぐは美徳だとは思うけど、それだけでもダメだ。」
…よくわからない。難しそうな話だ。
「良い人なの。尊敬出来る人。優しいし。」
「そっか。花音にはそう見えるって事か。」
違う見方なんてあるのだろう…か?
「お父さんにはどう見えるの?」
「…わからん。まだ見えているのはひとつの面だけだからな。
まあ、他は見たくもないが。」
「まっ、バイトも程々に、学生なんだから、勉強も大切だ。」
「はーい。」
「ったくわかってないな。あんまり母さんに心配掛けるなよ。」
「はーい。」
「花音!」
…わかってるよ、お父さん。
「大事な事は、わかってるよ、お父さん。」
この話はここまで。
…今は。まだここまで。
私はまだ知らない。
この先、事務所で出来る仕事があるときは必ず私にそれが割り当てられる事。売り場に出るときは必ず大和さんも売り場に出ている事。
そしてバイト終わりの夜は必ず大和さんが家まで送ってくれるようになる事を。
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