若松2D協奏曲

枝豆

文字の大きさ
173 / 242
アンハッピーハロウィン 富田

花火とバーベキュー

しおりを挟む
「花火とバーベキュー?」
新田のお父さんが務める会社の社長さんは、年に一度仕事仲間を集めてバーベキューをやる。

例年は7月、今年は11月。
なんでかっていうと、
「さくら市の花火大会が秋になったから。」

毎年夏に一級河川の中洲に櫓を建てて行われるさくら市花火大会は、今年は台風による水位増により延期となって、11月になった。

「花火を見るためだけにマンション買った!?」
「うーん、それだけじゃないけど、決め手になったのは花火大会なんだって。」

金持ちの外国人のやることはえげつねーなぁ。

河川敷沿いに建てられたマンションの角部屋。階段状になっているマンションの東側の角部屋には物凄い広さのバルコニーが付く。
そこにグリル台を出して花火を見た後にバーベキューをするらしい。

普通ならマンションのベランダでバーベキューなんて苦情モンだけど、このマンションの規約的にはOKらしい。特に花火大会の日は暗黙の了解で、住人は川沿いのバルコニーやベランダで思い思いに過ごす。

「お父さん仕事で花火には間に合わないかもしれないから、ひとりで先に行くんだけど。ひとりは恐いから付き合って。」
と仁志と共に誘われて、仁志も一緒ならとOKしたのに、俺に「予定空けておけ」と言った仁志は、あっさりと「バイトあるの忘れてた。」と来ない。

…良いのかな。

魔女とミイラで家にまでやって来た新田と仁志の仲の良さを見せつけられた俺。

「仁志、残念だったな。」
「うん…そだね。」

そんな話をしながらやってきたマンションにはたくさんの人が既に楽しそうに集まってきていた。

「Hi!Ellie!」
にこやかに新田を迎え入れたのが、社長のエリックさん。

綺麗になったね、とか、留学はどうだった?とか、少し喋って、
「彼は?」
「クラスメイトのタカシです。」
と紹介される。

なんなんだよ、普段は「富田」って呼ぶのに。
そう考えて相手は外国人なんだと思い至る。
絵里、じゃなくてエリーだもんな。

「楽しんでってね。」
とエリックさんは次の招待客を迎える為にどこかに消えた。

「外、行こう!」
新田に引っ張られてバルコニーに出る。
冷たい秋風がヒューっと吹き抜けた。

「寒っ!」
「ストーブ、当たろ。」

バルコニーに数カ所、キャンプ用の石油ストーブを囲うように同じくキャンプ用の椅子が並んでいる。

そのひとつに新田と並んで座った。

「コーヒー飲める?」
「ああ、飲める。」

どうやら飲み物はセルフらしく、新田がコーヒーを取りに行った。

…金持ち、すげーな。

ひとつ下の階の角部屋丸々ひとつ分のバルコニー。部屋とバルコニーでマンションのふた部屋分を占有することになる。

そこにテーブルとストーブと椅子と…。当然部屋の中にももてなすようにソファーがあったりするわけで…。
一体何人来るんだろう。

キョロキョロと周りを見まわして、自分の場違いさを改めて確認する。
(こういうところってさぁ、もっと向くヤツいんじゃねぇーかなぁ。)

葛西なんかは似合いそうだな。

…あっ、でも。
誘われたのは俺と仁志。
新田はそういうのは気にしないのかな。

…にしても遅いな。

コーヒー取りに行ってから随分と経つのに…。

すると部屋の中の一角に新田の姿が見えた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。 鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。 名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。 親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。 性と欲の狭間で、歪み出す日常。 無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。 そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。 青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。   前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章 後編 「青春譚」 : 第6章〜

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

after the rain

ノデミチ
青春
雨の日、彼女はウチに来た。 で、友達のライン、あっという間に超えた。 そんな、ボーイ ミーツ ガール の物語。 カクヨムで先行掲載した作品です、

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...