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アンハッピーハロウィン 富田
手紙
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貴行へ
きちんと終わりにできなかった事、悪かったと思ってる。
貴行がピアスをくれた事、本当に嬉しかった。
だけど、あのピアスは私の身体には合ってなかったみたい。
腫れて膿んで、血が出て…。耳だけじゃなくて、心までも痛い気持ちに負けてて…。
病院の先生に、このままだと金属アレルギーになるかもしれないから、一旦外しましょうと言われて、外す事を決めました。
ちゃんと治療して、またピアスを開ける時が来たら、あのピアスを付けたいと思うくらい、とっても大切な物でした。
きちんと話をして、ピアスを外した理由をわかって欲しかったけど、貴行が翠にした事を目の当たりにして、私は貴行と話すのが怖くなりました。
彼氏が怖くなったら、もうお付き合いはできないと思いました。
あの時の私はちゃんと向き合ってお別れする勇気が出せなくて、私は留学に逃げました。
帰国してからも何度も話したいと言ってくれていたのに、やっぱり勇気が出せなくて、私は貴行と向き合って話す事が出来ませんでした。
私は貴行の事が好きじゃなくなったと伝えるべきでした。
どうしたら貴行をそこまで追い込まないで済んだのかと考えたけれど、まだ答えがわかりません。
ゆっくり時間を掛けて考えていきます。
ごめんなさい。
さようなら。
新田 絵里
最初に書いた手紙を富田に見せたら、
「これはダメ!」
と突き返された。
気持ちのままに書いた手紙は罵詈雑言に溢れ過ぎているらしい。
そうして書き直して、富田に見せて。
ここは直せ、ここは残せ、と。
何度も何度も書き直しているうちに、心のモヤモヤも貴行への恐怖も薄れていく。
「筆記開示」という心理学のストレス軽減の方法のひとつだと知ったのは、手紙を書き終えて、それを原田先生に手渡した時だ。
「スクールカウンセラーとの面談を受けるか?」
と聞かれて、要らないと答えた。
「富田が聞いてくれるから、要らない。」
そうか、と原田が笑った。
貴行は学校を辞めた。
アイツが学校を辞めてすぐアイツの両親がウチに菓子折りと金を包んで家に来たらしい。
…らしいというのは俺が学校に行っている間で、家にいた祖父と母が対応したから。
荒事に家で一番慣れている、剣道有段者の元警察官の爺ちゃんはコンコンとアイツの親に説教をしまくったらしい。
「子は親の鏡だな。」
謝罪にきたくせに最後には逆ギレしたというアイツの母親を爺ちゃんはそう切り捨てた。
「…爺ちゃんの説教は、クドいんだよ。」
「人に刃物を向ける前に予兆はあったはずなんだよ。それを見えてないフリをしたのもまた罪だ。」
アイツが教師に刃物を向けた事を知らされた時、「もう自分達の手には負えないから。」
と、警察に通報する事を望んだのはアイツの親だった。
警察→保護者、ではなくて、保護者→警察の流れはそういう事だ、と爺ちゃんは言う。
「多分、これだけじゃなくて、今までにも似たようなことはあったんだろう。
学校はなかなか警察の介入はさせないからな。」
というのが、爺ちゃんの見解だ。
家裁に送られても審判不開始というものになったアイツは、それでも家に戻される事なく精神科のある病院に入院させられるそうだ。
「ある意味で、彼も被害者だ。
許してやれ。」
と爺ちゃんは俺に言う。
「許す許さないは俺が決められる事じゃない。
…だけど終わったんだよな。」
「まあ、そうだな。終わりにしてやれ。」
そっか、終わったか。
仁志に新田を返さなくちゃならない。
きちんと終わりにできなかった事、悪かったと思ってる。
貴行がピアスをくれた事、本当に嬉しかった。
だけど、あのピアスは私の身体には合ってなかったみたい。
腫れて膿んで、血が出て…。耳だけじゃなくて、心までも痛い気持ちに負けてて…。
病院の先生に、このままだと金属アレルギーになるかもしれないから、一旦外しましょうと言われて、外す事を決めました。
ちゃんと治療して、またピアスを開ける時が来たら、あのピアスを付けたいと思うくらい、とっても大切な物でした。
きちんと話をして、ピアスを外した理由をわかって欲しかったけど、貴行が翠にした事を目の当たりにして、私は貴行と話すのが怖くなりました。
彼氏が怖くなったら、もうお付き合いはできないと思いました。
あの時の私はちゃんと向き合ってお別れする勇気が出せなくて、私は留学に逃げました。
帰国してからも何度も話したいと言ってくれていたのに、やっぱり勇気が出せなくて、私は貴行と向き合って話す事が出来ませんでした。
私は貴行の事が好きじゃなくなったと伝えるべきでした。
どうしたら貴行をそこまで追い込まないで済んだのかと考えたけれど、まだ答えがわかりません。
ゆっくり時間を掛けて考えていきます。
ごめんなさい。
さようなら。
新田 絵里
最初に書いた手紙を富田に見せたら、
「これはダメ!」
と突き返された。
気持ちのままに書いた手紙は罵詈雑言に溢れ過ぎているらしい。
そうして書き直して、富田に見せて。
ここは直せ、ここは残せ、と。
何度も何度も書き直しているうちに、心のモヤモヤも貴行への恐怖も薄れていく。
「筆記開示」という心理学のストレス軽減の方法のひとつだと知ったのは、手紙を書き終えて、それを原田先生に手渡した時だ。
「スクールカウンセラーとの面談を受けるか?」
と聞かれて、要らないと答えた。
「富田が聞いてくれるから、要らない。」
そうか、と原田が笑った。
貴行は学校を辞めた。
アイツが学校を辞めてすぐアイツの両親がウチに菓子折りと金を包んで家に来たらしい。
…らしいというのは俺が学校に行っている間で、家にいた祖父と母が対応したから。
荒事に家で一番慣れている、剣道有段者の元警察官の爺ちゃんはコンコンとアイツの親に説教をしまくったらしい。
「子は親の鏡だな。」
謝罪にきたくせに最後には逆ギレしたというアイツの母親を爺ちゃんはそう切り捨てた。
「…爺ちゃんの説教は、クドいんだよ。」
「人に刃物を向ける前に予兆はあったはずなんだよ。それを見えてないフリをしたのもまた罪だ。」
アイツが教師に刃物を向けた事を知らされた時、「もう自分達の手には負えないから。」
と、警察に通報する事を望んだのはアイツの親だった。
警察→保護者、ではなくて、保護者→警察の流れはそういう事だ、と爺ちゃんは言う。
「多分、これだけじゃなくて、今までにも似たようなことはあったんだろう。
学校はなかなか警察の介入はさせないからな。」
というのが、爺ちゃんの見解だ。
家裁に送られても審判不開始というものになったアイツは、それでも家に戻される事なく精神科のある病院に入院させられるそうだ。
「ある意味で、彼も被害者だ。
許してやれ。」
と爺ちゃんは俺に言う。
「許す許さないは俺が決められる事じゃない。
…だけど終わったんだよな。」
「まあ、そうだな。終わりにしてやれ。」
そっか、終わったか。
仁志に新田を返さなくちゃならない。
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