若松2D協奏曲

新年

話し合い 優

行きたくなかった。
同じくらい行かなきゃいけないとも思った。

北斗が背中を押してくれなかったら、きっとここには来れないで、ずっと後悔してたと思う。

A組の子が退学になったっていう話は部活の仲間から聞いていた。
ただどうして退学になったのかは誰も知らなかった。

原因はココにあった。


和津はブレてはいなかった。翠のため、和津を動かすのはそれだけだ。
それを信じれば良かった。

「話してくれたら良かったのに…。」
一緒に翠を守りたかった。
そう思ったけど、違う。

今回翠は守られるほうじゃなくて、守る方。
私は、編入したばかりの絵里が頼ってくれるような存在じゃなかった、それだけの話だった。

「…ごめん。」
モヤモヤは消えていた。
「なんで優が謝るの？」
絵里がキョトンとして聞いてくるから。
「近くにいたのに、遠かったから。」
と答えると、絵里がポロリと涙を流して、
「ありがとう。」
と言った。

…ストーカーか。
私にはきっとこの先一生縁がない存在だと思う。
綺麗なモデルの絵里だから、変な男を寄せ集めてきてしまったんだと思う。

そこでふと気付く。

これ、全部解決してない…よね？

チラリと北斗を見た。
北斗もこっちを見てる。

うん、北斗が頷いた。

…きっと同じ事を考えている。


絵里がストーカーに悩まされて、翠を頼るのはわかる。翠が和津を頼るのも。
１年生の時のイザコザを知ってたのはこの２人だから。

富田がわからない。それで仁志じゃないのもわからない。
絵里と仁志と富田。この３人は仲が良かった。
仁志と富田がギクシャクしたのは何故？
絵里が富田に相談して、仁志には相談しなかった訳がきっとある。
これ、ストーカーの件だけが原因じゃない！

きっとそう。
まだ何かある。