若松2D協奏曲

枝豆

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新年

2回戦

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俺、アイツのこと知ってた。
ポツリと漏らした富田の言葉に一番驚いたのは新田だった。

「なんで?」
「…和津が過剰反応してたから。」

廊下ですれ違う時とか、さりげなく山本が見えないように視線を覆ったり、アイツを睨んでいたりしてたから…。

「良く気付いたな。」
俺は翠に対しては聞いていたから知ってたけど、新田に対しては気付いてなかったのに。

「…剣道してるから、だと思う。ちょっとした不自然な動きとか、探るような目付きとか、そういうのはわかる。
だから、和津に聞いたんだ。アイツ何なの!?って。」

「あー、だからか。
いきなり和津が「貴行になんかされてねーか?」って聞いてきたから、おかしいなって思ったんだよね。」

新田にも腑に落ちるところがあったらしい。

疾風に問いただされて、新田は和津に全部話した。疾風に富田に全部話してもらえるように頼んだ。

「そうしたら和津と富田が貴行から私を守ってくれる事になった。」

「で、仁志には言わなかったのは?」
新田が俯く。話し辛いことがあるみたいだ。

それは富田が話した。
「俺が、頼んだ。」
「なんで?理由は?」
「新田は好きな人に元彼とのゴタゴタを知られたくはないだろうって思ったのと、アイツなんか粘着質っぽいから、ターゲットが俺になれば良いかな、って思った。」

はあ、やっと見つけた、コレだ。

絵里も驚いて富田を見つめてるし、仁志に至っては堂々と?ため息まで吐いた。

「あー、何やってんだよ。要らない配慮とかしてんじゃねーよ。
あのな、絵里は友達!絵里にとっても俺は友達!友達が悩んでるのに何も知らされないって寂しいだろう?
秘密があるから絵里だって俺に対しておかしな態度になるだろう!?」

仁志の言葉に富田が牙を剥いた。

「友達!?お前それは酷くねー?新田の気持ち考えてやれよ!」

やっぱり気付いてないか。

「…酷いのはお前だ、富田。」
挟んじゃいけないのかもしれないけれど、挟まずにはいられなかった。
「勝手な思い込みで、新田の気持ちを決めつけるんじゃない。」

「だって…靴箱に鳩の死体入れるよーなヤツだよ?そんな奴に絡まれてるなんて、きっと仁志には知られたく無いし、知らされても仁志が危険に巻き込まれるだけだ。」

「まあ、そうだな。俺は富田みたいには出来なかった。いてまえ打線には参加は出来ねぇ。
だから言われた通りにベンチで大人しくしてたと思う。でも絵里からは離れなかった。」

仁志の言葉に富田は黙り込んだ。

「仁志に何も伝えなかったのは、貴行のターゲットをお前に集めるためだった、それでいいか?」

違うだろう…?そう聞きたいけど話が進まなくなる。
富田にはまだ覚悟が無さそうな気がした。

うん、と3人は頷いた。

よし、次。






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