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芸術鑑賞教室 菜々子
フラグ
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「絶対に遅れないで。」
こう言われると大抵の人は遅れない。
だけど必ず遅れる人がいる。
そしてそれは大抵の場合、私だ。
「忘れないでね。」と言われたら忘れるし、「間違えないでね。」と言われたら間違えてしまう。
決してわざとじゃ無い。そうならないように、しっかりしなきゃ!と気合いを入れて…。何故かその気合いが空回りしてしまう。
(えっと…さくら駅6分発って事は…10分足すから…。16分、アレないよ…。これか17分の。)
10分前には駅に着いて電車を待つ。2本の電車を見送って、17分の急行に慣れた顔を見つけてホッとした。
…良かった。間違えなかったし、遅れなかった。
「おはよ、菜々子ちゃん。」
先に乗ってたみんなが声を掛けてくれる。
「おはよう。今日寒いねぇ。」
結局、バラバラに乗るようにという原田先生の忠告は思いっきりスルーされた。
「鉄オタ富田が6分の急行3両目、先頭ドアがベストだって。」
話を聞いた誰かがグループの誰かに話して、またその誰かが友達に話して…。
一番遠い北斗くんから乗り込んで、最後の私が乗り込んだ時、3両目は制服姿のD組のみんなで溢れていた。
「結局固まっちゃうだね、みんな。」
「…仕方ないよね。たまたまだもん。」
「ってかさぁ、富田の指示が細かすぎるんだもん。電車だけじゃなくて、車両のドアの位置まで決めるなんて!」
「…恐るべし、鉄オタ。」
それでも数人ずつで輪を作って、素知らぬ顔で立っている。
私達も女の子5人で固まった。
少し離れたところに和津くん皇子くん北斗くん、更に離れたところに富田くん悠太くん須藤くん。
台町駅でホームを挟んで反対側の始発電車に乗り換える。
「みんな、こっちのドアに来てて。」
北斗くんが呼びにきた。
「3分しかないから、ここだけ固まる。乗り遅れないように急いで。」
「うん。」
乗り遅れない、急いで。
フラグが立った事に私は気付かない。
私はナメていた。
鉄オタの「急いで。」は普通の「急いで。」じゃなかった。
富田くんを先頭に乗り換え駅で「歩き始める。」競歩みたいにスタスタと、歩いているようで走ってる。
えっ!えっ!
身長差とコンパスの差を考えると、私はもう走ってる。
富田くんはグングン前の人を追い抜いていく。
それをみんなが追いかけていく。
(ま、待って。急がなきゃっ!)
置いていかれたら堪らない。
普段この地下鉄はほとんど使わない。
地下鉄の駅の構内は私にとっては迷路。
みんなとはぐれたら、迷子になる。
ドンっ!
痛っ!
対向で歩いてくる人と肩がぶつかった。
「すみません。」
という間も無くぶつかった人は消えてしまった。
間を置かず
「邪魔!」
と言われる。
急に立ち止まった私を押し退けるように、後ろの人が私を追い抜いた。
あっ!と気付いた時は遅かった。
追いかけていたみんなの背中はもう消えてた。
こう言われると大抵の人は遅れない。
だけど必ず遅れる人がいる。
そしてそれは大抵の場合、私だ。
「忘れないでね。」と言われたら忘れるし、「間違えないでね。」と言われたら間違えてしまう。
決してわざとじゃ無い。そうならないように、しっかりしなきゃ!と気合いを入れて…。何故かその気合いが空回りしてしまう。
(えっと…さくら駅6分発って事は…10分足すから…。16分、アレないよ…。これか17分の。)
10分前には駅に着いて電車を待つ。2本の電車を見送って、17分の急行に慣れた顔を見つけてホッとした。
…良かった。間違えなかったし、遅れなかった。
「おはよ、菜々子ちゃん。」
先に乗ってたみんなが声を掛けてくれる。
「おはよう。今日寒いねぇ。」
結局、バラバラに乗るようにという原田先生の忠告は思いっきりスルーされた。
「鉄オタ富田が6分の急行3両目、先頭ドアがベストだって。」
話を聞いた誰かがグループの誰かに話して、またその誰かが友達に話して…。
一番遠い北斗くんから乗り込んで、最後の私が乗り込んだ時、3両目は制服姿のD組のみんなで溢れていた。
「結局固まっちゃうだね、みんな。」
「…仕方ないよね。たまたまだもん。」
「ってかさぁ、富田の指示が細かすぎるんだもん。電車だけじゃなくて、車両のドアの位置まで決めるなんて!」
「…恐るべし、鉄オタ。」
それでも数人ずつで輪を作って、素知らぬ顔で立っている。
私達も女の子5人で固まった。
少し離れたところに和津くん皇子くん北斗くん、更に離れたところに富田くん悠太くん須藤くん。
台町駅でホームを挟んで反対側の始発電車に乗り換える。
「みんな、こっちのドアに来てて。」
北斗くんが呼びにきた。
「3分しかないから、ここだけ固まる。乗り遅れないように急いで。」
「うん。」
乗り遅れない、急いで。
フラグが立った事に私は気付かない。
私はナメていた。
鉄オタの「急いで。」は普通の「急いで。」じゃなかった。
富田くんを先頭に乗り換え駅で「歩き始める。」競歩みたいにスタスタと、歩いているようで走ってる。
えっ!えっ!
身長差とコンパスの差を考えると、私はもう走ってる。
富田くんはグングン前の人を追い抜いていく。
それをみんなが追いかけていく。
(ま、待って。急がなきゃっ!)
置いていかれたら堪らない。
普段この地下鉄はほとんど使わない。
地下鉄の駅の構内は私にとっては迷路。
みんなとはぐれたら、迷子になる。
ドンっ!
痛っ!
対向で歩いてくる人と肩がぶつかった。
「すみません。」
という間も無くぶつかった人は消えてしまった。
間を置かず
「邪魔!」
と言われる。
急に立ち止まった私を押し退けるように、後ろの人が私を追い抜いた。
あっ!と気付いた時は遅かった。
追いかけていたみんなの背中はもう消えてた。
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