若松2D協奏曲

枝豆

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球技大会

楽しい

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なんとか練習を終えて、私たちは着替えるために更衣室に向かって歩いていた。

最後の方に絵里ちゃんが心配して様子を見にきてくれた。
「ハンドボール、結構様になってたから驚いた。」
「あのね、香川くんっていう人が教えてくれたの。」
「香川?」
「あの人、ハンドボール部のキーパーだよ。」
ってチームの子が教えてくれる。

「あまりに下手過ぎて、津山先生が見てやれって言ってくれたみたい。」
「へえ。そういえば和津もバスケの方にいたな。バレーの方にもバレー部がいたし。」

もしかしたらどの種目もある程度は様になるように津山先生が考えてくれたのかもしれない。
お陰でゴール前に立っているのは怖くはなくなった気がする。

それから練習は必ず香川くんが見てくれるようになった。
もちろんDだけじゃなくて、一緒に体育を受けるC組にも。
女子だけではなく、男子も。
ただ…。

「アイツ、基本翠の側にいるね。」
って西さんが言う。
「それだけ鈍臭いって事なのかなぁ。」
「あはは、そうだね。でも随分とマシになってきたよ。こう、腰が違う。」

西さんが相撲の四股を踏むような仕草をする。

「その方がいいって。」
「うん、その方がいいと思う。
香川、私たちにも教え方が上手。」

そうなの!
みんなが適当に打っていたシュート、「キーパーの足元に叩きつけろ!」っていうアドバイスを貰って、格段にみんなのシュートが止められなくなった。

「あんなの止められないよ…。」
だから腰を落として足を出して足で止めろ、と言われた。

「蹴るな!当てればいい。」
って怒られるけど、それが出来たらこんな苦労はしていない。

「なんかね、部活よりこっちの方が楽しいかもしれない。」
と西さんが笑う。


「山本!」
って富田くんに声をかけられた。
「なあ、なんで女の子のキーパーはみんな手をグーにしてるの?」

「ああなんかね、パーにしてると指怪我するから、グーにしてろって。」
「あー、そうかそういうこと。」
「富田くんもグーにしておけば?竹刀握れないと困らない?」
って菜々子ちゃんが言う。
富田くんは男子のチームのキーパーだ。同じように香川くんにアドバイスを貰っている。

「そんなに柔な手じゃない。パーじゃないと野郎の球は取れないし。
香川も俺にはそんな可愛いこと言わなかったよ。
でも、使い分けるのはアリかも。やっぱり重たい球投げてくる奴いるしな。」

聞けてよかった、と富田くんが言う。

そうだよね、普通はパーにするよね。
どれだけ鈍臭いんだ、私。

「怪我だけはするな。」
って香川くんもよく言ってる。
最悪ヤバいと思えば避けたっていい、たかが球技大会なんだから、って。
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