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球技大会
ムカつく 香川
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なんでハンドなんだよ!
体育の津山の鶴の一声で球技大会の種目がサッカーからハンドに変わった。
ったく面倒くせぇ。
所属する部活が球技大会の種目になれば、面倒な審判を務めなければならなくなる。
サッカーでゴールキーパーをするつもりだった俺はバレーに決まった。
リベロ、レシーブ専門のポジションだ。
元々バレーのアタックとハンドのシュートは球の速さもコースも慣れた感じだから、キャッチする癖さえ気をつければなんの問題もなかった。
「おっ、香川。お前ちょっと来い!」
バレーの練習をしていたら体育の津山が俺を呼びにきた。
「ちょっと女子のハンドボール見てやってくれ。」
「なんで!?」
「キーパーがな、ケガしないか心配だ。」
女子のハンドボール部はないので、経験者がいない。そんな中キーパーは押し付けられた感満載の子が多くて、危なかっしいことこの上ない。
「ケガだけしないように、基本だけレクチャーを頼む。」
だって。
グラウンドに出てよくわかった。
ウチのクラスの子は美術部、一緒に体育を受けるD組の子は…。
「…トランペットの子だ。」
体育祭でトランペットを吹いてた、小さい子。
なんであんな子に…?
もう少し頑丈そうなやついくらでもD組にはいるだろうに。
簡単に動き方を教えて、手はグーにしろと伝えた。
キャッチングは付け焼き刃じゃ身に付かない。
どうせドッジボールでも逃げ回るだけのタイプの子だろうに。
吹部かぁ。
若松にいれば吹部の特別感は嫌でも感じる。
係や委員の免除だけじゃない。
津山がケガさせくないのはきっとこの子だ。
2年での大抜擢に、全国大会金賞。
短期間でもトランペット吹けなくなったら、困るだろうな。
ちょっと見ただけでもわかった。
D組のハンドボールのチームは寄せ集めだ。
まともに動けるのは2人だけ。
一番身体の小さい子がキーパー。
「なあ、なんでキーパーになったの?」
って聞いたらとんでもない答えが返ってきた。
「くじ引きで…。」
舐めすぎだろ、いくらなんでも!!
沸々と怒りが湧いてくる。
いやさ、わからなくもないけれど、キーパーってのを舐めすぎだろ!!
「誰かがやらなくちゃならないからね。頑張るだけ。
香川くんのおかげでちょっと怖くなくなった気がする。」
って!
なにそれ!!
せめてなんとか形にはしてあげたいと思って、許される限りハンドボールの練習を見た。
D組だけだと怒られるからついでにC組も。
女子だけだとやっかまれるからついでに男子にも。
俺?
リベロだもん。
来たボールを打ち上げてセッターに返せばいいだけだから、フォーメーションも何もない。
どうせ、所詮、球技大会だから。
「なあ、教えるの女子だけ?」
聞いて来たのは葛西。
学年で一番モテる奴。
「津山からはそう頼まれてる。くじ引きだって?」
「ああ、そう聞いてる。
でもバスケ部が張り切ってハンドボールに集まったからな。女子は半分諦めて、捨てたみたいだ。
悪いけど出来たらウチのキーパーも見てやって。」
「俺、C組。」
「…山本よD組。」
「女子、見てって。
…わかった、必要なら教えるけど。」
「じゃあ、頼む。ウチのキーパーにもそう言っておく。」
「ああ、わかった。」
話は終わったはずなのに、まだ何か言いたげな感じ。…嫌な感じ。
「余計かもしんないけど。…山本ちゃんと付き合ってる奴いるから。」
「…そう。俺には関係ないと思うけど。」
「ああ、悪い。余計だったな。」
コイツ何言いたいんだ?
俺は津山に頼まれただけ。ただそれだけ。
それだけ?
…それだけだ。
そして球技大会当日。
午前の予選はおわって、午後の決勝戦の時。
「手は開いてて。」
って誰?コイツ。
何余計なこと言ってくれてんの!?
練習にも午前の試合にもいなかったヤツ。多分掛け持ち組。掛け持ちするぐらいだから自信あるんだろうな。
「聞くな!グーで良い!」
そう言いたいけど、俺今審判の真っ最中。
ってかさ、お前がチームの動きをおかしくしてる事に気付け!!
いい感じに纏まってたのに、あの2人の動きすらを邪魔してるのは、お前だ!
何ひとりでムキになってんの!?
D組はハンドボール捨ててたんじゃあねーの?
ホラまた。
アイツがポジション無視して走るから、そこに穴が開くんだよ!
大人しく2人に任せとけってば!
手薄になった場所を容赦なく向こうのフォワードが攻め込んだ。
うわ、えげつない。スカイしやがった。
こりゃ山本には止めらんねーな。
逃げろ!無理だ!
心の中で叫んだ。
だけどどこかで思ってた。
…アイツは逃げない。
そして、やっぱり手を出しちゃった山本が顔を顰めて、指を押さえる。
ああ、やっぱり、山本、怪我しやがった。
ピッ!!
「タイムアウト!!」
慌てて試合を止めた。
体育の津山の鶴の一声で球技大会の種目がサッカーからハンドに変わった。
ったく面倒くせぇ。
所属する部活が球技大会の種目になれば、面倒な審判を務めなければならなくなる。
サッカーでゴールキーパーをするつもりだった俺はバレーに決まった。
リベロ、レシーブ専門のポジションだ。
元々バレーのアタックとハンドのシュートは球の速さもコースも慣れた感じだから、キャッチする癖さえ気をつければなんの問題もなかった。
「おっ、香川。お前ちょっと来い!」
バレーの練習をしていたら体育の津山が俺を呼びにきた。
「ちょっと女子のハンドボール見てやってくれ。」
「なんで!?」
「キーパーがな、ケガしないか心配だ。」
女子のハンドボール部はないので、経験者がいない。そんな中キーパーは押し付けられた感満載の子が多くて、危なかっしいことこの上ない。
「ケガだけしないように、基本だけレクチャーを頼む。」
だって。
グラウンドに出てよくわかった。
ウチのクラスの子は美術部、一緒に体育を受けるD組の子は…。
「…トランペットの子だ。」
体育祭でトランペットを吹いてた、小さい子。
なんであんな子に…?
もう少し頑丈そうなやついくらでもD組にはいるだろうに。
簡単に動き方を教えて、手はグーにしろと伝えた。
キャッチングは付け焼き刃じゃ身に付かない。
どうせドッジボールでも逃げ回るだけのタイプの子だろうに。
吹部かぁ。
若松にいれば吹部の特別感は嫌でも感じる。
係や委員の免除だけじゃない。
津山がケガさせくないのはきっとこの子だ。
2年での大抜擢に、全国大会金賞。
短期間でもトランペット吹けなくなったら、困るだろうな。
ちょっと見ただけでもわかった。
D組のハンドボールのチームは寄せ集めだ。
まともに動けるのは2人だけ。
一番身体の小さい子がキーパー。
「なあ、なんでキーパーになったの?」
って聞いたらとんでもない答えが返ってきた。
「くじ引きで…。」
舐めすぎだろ、いくらなんでも!!
沸々と怒りが湧いてくる。
いやさ、わからなくもないけれど、キーパーってのを舐めすぎだろ!!
「誰かがやらなくちゃならないからね。頑張るだけ。
香川くんのおかげでちょっと怖くなくなった気がする。」
って!
なにそれ!!
せめてなんとか形にはしてあげたいと思って、許される限りハンドボールの練習を見た。
D組だけだと怒られるからついでにC組も。
女子だけだとやっかまれるからついでに男子にも。
俺?
リベロだもん。
来たボールを打ち上げてセッターに返せばいいだけだから、フォーメーションも何もない。
どうせ、所詮、球技大会だから。
「なあ、教えるの女子だけ?」
聞いて来たのは葛西。
学年で一番モテる奴。
「津山からはそう頼まれてる。くじ引きだって?」
「ああ、そう聞いてる。
でもバスケ部が張り切ってハンドボールに集まったからな。女子は半分諦めて、捨てたみたいだ。
悪いけど出来たらウチのキーパーも見てやって。」
「俺、C組。」
「…山本よD組。」
「女子、見てって。
…わかった、必要なら教えるけど。」
「じゃあ、頼む。ウチのキーパーにもそう言っておく。」
「ああ、わかった。」
話は終わったはずなのに、まだ何か言いたげな感じ。…嫌な感じ。
「余計かもしんないけど。…山本ちゃんと付き合ってる奴いるから。」
「…そう。俺には関係ないと思うけど。」
「ああ、悪い。余計だったな。」
コイツ何言いたいんだ?
俺は津山に頼まれただけ。ただそれだけ。
それだけ?
…それだけだ。
そして球技大会当日。
午前の予選はおわって、午後の決勝戦の時。
「手は開いてて。」
って誰?コイツ。
何余計なこと言ってくれてんの!?
練習にも午前の試合にもいなかったヤツ。多分掛け持ち組。掛け持ちするぐらいだから自信あるんだろうな。
「聞くな!グーで良い!」
そう言いたいけど、俺今審判の真っ最中。
ってかさ、お前がチームの動きをおかしくしてる事に気付け!!
いい感じに纏まってたのに、あの2人の動きすらを邪魔してるのは、お前だ!
何ひとりでムキになってんの!?
D組はハンドボール捨ててたんじゃあねーの?
ホラまた。
アイツがポジション無視して走るから、そこに穴が開くんだよ!
大人しく2人に任せとけってば!
手薄になった場所を容赦なく向こうのフォワードが攻め込んだ。
うわ、えげつない。スカイしやがった。
こりゃ山本には止めらんねーな。
逃げろ!無理だ!
心の中で叫んだ。
だけどどこかで思ってた。
…アイツは逃げない。
そして、やっぱり手を出しちゃった山本が顔を顰めて、指を押さえる。
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