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球技大会
治療
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「大丈夫?」
審判の香川くんが試合を止めて来てくれる。
「大丈夫、動くよ。」
手を握って開いて。
痛いけど、動かせる。
「あまり動かすな。後3分我慢できるか?」
「うん。出来る。」
「終わったらすぐ保健室。ちゃんと見せて。」
「うん、ありがとう。」
「翠、大丈夫?」
優ちゃんも西さんも来てくれる。
「大丈夫。」
香川くんが再開の笛を吹くから、心配そうにだけど、優ちゃんは試合に戻っていった。
D組はそのまま負けた。
「翠、保健室、行こう。」
優ちゃんがこっちに来かけて、不意に立ち止まる。
私と優ちゃんの間に香川くんが立ち塞がった。
「お前のせいだ。」
低く冷たい声だ。
「…ち、ちがうよ。」
慌てて香川くんを止めようと声を掛けた。
「黙ってて。」
香川くん…?どうしたの?
「俺が指示してた。ケガしないように指は開くな、って。」
その言葉で優ちゃんの顔が強張ったのがわかる。
「ち、ちがう、待って。優ちゃん違うから!!」
「お前なんなの?ハンドボール舐めんな!
途中で混ざって来て、好き勝手やって。仲間の話全然聞かねーで。
結果山本怪我してんじゃん。」
「…ごめんなさい。」
優ちゃんが下を向く。
「待って、違うから。優ちゃんのせいじゃないから。」
「ごめん。」
優ちゃんはこっちを見てはくれない。
話し合いはその場で唐突に終わってしまった。
「2D若瀬、体育館に。」
グラウンドに無情に響く呼び出しの放送。
バレーボールの決勝が始まるんだ。
「…ごめん、行かなきゃ。」
そのまま優ちゃんは走って行っちゃった。
「ほら、保健室行くぞ。」
怪我してない方の手を掴まれて歩き出す。
「ひどいよ、優ちゃんのせいじゃないよ。」
「…アイツのせいだよ。アイツがみんなのプレーのスタイルを崩した。」
「相手、強かったからだよ。」
「…確かに強かったけど。アイツのせいでディフェンスに隙が出来た。
スカイなんてそうそう簡単に決められるもんじゃねぇ。」
とりあえず、治療が先。この話は終わり!
そう言って香川くんはもう何にも話さなくなった。
保健室に行って、氷を当てられた。
「ここに座って、手乗せて。」
腕ごと上に高く上げたまま、座らされる。
「とりあえずしばらくそのまま座ってて。」
「…うん。ごめんね。」
「何が?」
何がって。
色々ある。
言われたこと守らないで怪我したことも。こうやって迷惑掛けちゃってる事も。
「気にするな。好きでやってる。」
…そう言われても。
「優ちゃんは悪くない。急にひとり早退してその穴を埋めてくれただけ。」
「…そうか。お前がそう思うなら、それでいい。ただ俺はムカついただけ。」
香川くんは話し出した。
そもそもハンドボールを捨てたのはアイツ等だろう?って。
なのに決勝まで来たら急にデカい顔して試合を崩して…。
「そもそもな、くじ引きでキーパーを決めるなんて、ハンドボール部の俺には許せない。」
「そっか。ごめんね。」
「いや、それはいい。山本は頑張ってたと思う。だから…許せた。」
切っ掛けはどうであっても、たったの2週間だけでも真面目に取り組んでたから、香川くんはそう言ってくれた。
「たかが球技大会なのに、とすら思ってた。」
「たかが…じゃないよ。吹部には全てかも。」
あんまり行事ではクラスの事には関われない、吹部。唯一吹部が関係ない行事が球技大会。
「最後まで頑張れて良かった。」
あのまま退場にされてても文句は言えない。
「…山本は頑張ったよ。」
「うん、ありがとう。」
あのね。
指を冷やしながら香川くんに話す。
「優ちゃんはね、本気になってくれたんだと思う。」
私達は確かに捨てられた種目に押し込められたのかもしれない。
それでも日野さんや松本さんが頑張って作戦を立ててくれた。
「それに香川くんにも。香川くんいなかったらきっとあんなにちゃんと試合にはなっていなかったと思う。
ありがとう。」
「確かにな、最初は酷かったもんな。」
香川くんが何かを思い出して笑う。
…良かった。笑ってくれた。
「だから決勝に出られて嬉しかったんだよ。
たまたまね、ひとり具合が悪くなって早退したの。その穴を埋めてくれたのは、優ちゃん。だから決勝に進んだからっていうのはちょっと違う。」
「…そうか。」
「でね、優ちゃんは最後まで勝ちたいって思ってんだと思う。
あのすっごく強いクラスにね、どうやったら勝てるかな?って考えてくれた。
対戦相手に恵まれたっていうのもあると思う。もっと強いクラスに当たっていたら決勝には行けなかった。」
香川くんは何も言わない…。
審判の香川くんが試合を止めて来てくれる。
「大丈夫、動くよ。」
手を握って開いて。
痛いけど、動かせる。
「あまり動かすな。後3分我慢できるか?」
「うん。出来る。」
「終わったらすぐ保健室。ちゃんと見せて。」
「うん、ありがとう。」
「翠、大丈夫?」
優ちゃんも西さんも来てくれる。
「大丈夫。」
香川くんが再開の笛を吹くから、心配そうにだけど、優ちゃんは試合に戻っていった。
D組はそのまま負けた。
「翠、保健室、行こう。」
優ちゃんがこっちに来かけて、不意に立ち止まる。
私と優ちゃんの間に香川くんが立ち塞がった。
「お前のせいだ。」
低く冷たい声だ。
「…ち、ちがうよ。」
慌てて香川くんを止めようと声を掛けた。
「黙ってて。」
香川くん…?どうしたの?
「俺が指示してた。ケガしないように指は開くな、って。」
その言葉で優ちゃんの顔が強張ったのがわかる。
「ち、ちがう、待って。優ちゃん違うから!!」
「お前なんなの?ハンドボール舐めんな!
途中で混ざって来て、好き勝手やって。仲間の話全然聞かねーで。
結果山本怪我してんじゃん。」
「…ごめんなさい。」
優ちゃんが下を向く。
「待って、違うから。優ちゃんのせいじゃないから。」
「ごめん。」
優ちゃんはこっちを見てはくれない。
話し合いはその場で唐突に終わってしまった。
「2D若瀬、体育館に。」
グラウンドに無情に響く呼び出しの放送。
バレーボールの決勝が始まるんだ。
「…ごめん、行かなきゃ。」
そのまま優ちゃんは走って行っちゃった。
「ほら、保健室行くぞ。」
怪我してない方の手を掴まれて歩き出す。
「ひどいよ、優ちゃんのせいじゃないよ。」
「…アイツのせいだよ。アイツがみんなのプレーのスタイルを崩した。」
「相手、強かったからだよ。」
「…確かに強かったけど。アイツのせいでディフェンスに隙が出来た。
スカイなんてそうそう簡単に決められるもんじゃねぇ。」
とりあえず、治療が先。この話は終わり!
そう言って香川くんはもう何にも話さなくなった。
保健室に行って、氷を当てられた。
「ここに座って、手乗せて。」
腕ごと上に高く上げたまま、座らされる。
「とりあえずしばらくそのまま座ってて。」
「…うん。ごめんね。」
「何が?」
何がって。
色々ある。
言われたこと守らないで怪我したことも。こうやって迷惑掛けちゃってる事も。
「気にするな。好きでやってる。」
…そう言われても。
「優ちゃんは悪くない。急にひとり早退してその穴を埋めてくれただけ。」
「…そうか。お前がそう思うなら、それでいい。ただ俺はムカついただけ。」
香川くんは話し出した。
そもそもハンドボールを捨てたのはアイツ等だろう?って。
なのに決勝まで来たら急にデカい顔して試合を崩して…。
「そもそもな、くじ引きでキーパーを決めるなんて、ハンドボール部の俺には許せない。」
「そっか。ごめんね。」
「いや、それはいい。山本は頑張ってたと思う。だから…許せた。」
切っ掛けはどうであっても、たったの2週間だけでも真面目に取り組んでたから、香川くんはそう言ってくれた。
「たかが球技大会なのに、とすら思ってた。」
「たかが…じゃないよ。吹部には全てかも。」
あんまり行事ではクラスの事には関われない、吹部。唯一吹部が関係ない行事が球技大会。
「最後まで頑張れて良かった。」
あのまま退場にされてても文句は言えない。
「…山本は頑張ったよ。」
「うん、ありがとう。」
あのね。
指を冷やしながら香川くんに話す。
「優ちゃんはね、本気になってくれたんだと思う。」
私達は確かに捨てられた種目に押し込められたのかもしれない。
それでも日野さんや松本さんが頑張って作戦を立ててくれた。
「それに香川くんにも。香川くんいなかったらきっとあんなにちゃんと試合にはなっていなかったと思う。
ありがとう。」
「確かにな、最初は酷かったもんな。」
香川くんが何かを思い出して笑う。
…良かった。笑ってくれた。
「だから決勝に出られて嬉しかったんだよ。
たまたまね、ひとり具合が悪くなって早退したの。その穴を埋めてくれたのは、優ちゃん。だから決勝に進んだからっていうのはちょっと違う。」
「…そうか。」
「でね、優ちゃんは最後まで勝ちたいって思ってんだと思う。
あのすっごく強いクラスにね、どうやったら勝てるかな?って考えてくれた。
対戦相手に恵まれたっていうのもあると思う。もっと強いクラスに当たっていたら決勝には行けなかった。」
香川くんは何も言わない…。
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