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バレンタインデイ
皇
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俺はすっかり忘れていた。
学校のある駅で電車を降りた時に思い出させられた。
「あ、あの…。これ。」
俯いて差し出されたチョコレート。
この子は若松の制服を着てるけど、知らない子。
「ありがとう。お返しとか出来ないけど、良い?」
可能な限りホワイトデーのお返しはするつもりだけれど、知らない子までいちいち把握は出来ないから、「受け取るだけ、お返しはできない」ってことをわかってくれる子だけは受け取る事にしてる。
「それで良いです。ありがとうございました。」
チョコを渡して知らない子は走り去った。
…そうかバレンタインか。
学校に着くまでにすでに4個。全部知らない子。
玄関で2個。
すでに俺のカバンの中はチョコだらけ。
(壮が食べられるのあるかなぁ。)なんて不謹慎だろうか。
教室に入ると翠や優達がチョコを配り歩いてる。
「ハイ、皇子くんにも。」
去年、複雑な想いで貰った翠からのチョコは今年はただ単純に嬉しいだけに変わってたことに俺自身が驚いた。
「毎年ありがとう、サンキューな。」
「おっ!皇来た!」
ニヤニヤと駆け寄ってきたのは北斗と疾風。
「朝だけで何個かなぁ?」
とカバンを勝手に開けられる。
「やめろって!」
慌てて取り返したけれど、しっかり数えられていたようだ。
「皇、良いものあげようか?」
ヒラヒラと北斗が差し出したのは空の紙袋。
「絶対お前には必要だろうと思って、用意してやった。」
くそっ!
ひったくるように紙袋を取り上げて、カバンの中身とみんなから貰ったのをそこに詰め込んだ。
「凄い!朝だけでこの数?」
って優までうるさい!
放っておけよ、他人のバレンタインなんてどうでも良いだろ?
「疾風だって似たよーなモンだろう?」
話題を逸らそうとしたけれど、
「残念でしたー。今年は疾風はひとつ確定でーす!」
翠以外のは断わる事にした疾風に、
「友達のくらいは受け取ってやれよ。」
と忠告を入れた。
「ばーか、それは数にカウントしないんだろっ。」
ってそれもそうか。
中休み、昼休み、放課後と俺の休み時間は悉く呼び出しで潰れていく。
部活中に聞いた新田と富田のやりとりを北斗達から面白おかしく聞かされる。
…もう疲れた…。早く帰りたい。
「あ、あの。葛西先輩。」
着替えて帰ろうとした俺を呼び止めたのが寿美ちゃん。
「ああ、寿美ちゃん。どうしたの?」
「あ、あの、これ。私と…母から!そう母からです。」
渡された紙袋。中身はきっとチョコ。
「ありがとう、お礼は…。」
ちょっとだけ確かめても良いだろうか。
意地悪じゃない、ちょっと確かめるだけ。
「…お礼は田辺さんとは分けた方が良いかな?」
ハッとする寿美ちゃん。
みるみる顔が赤くなる。
「あ、あの。ごめんなさい、嘘…つきました。
母は…母は知らない…です。」
ホッとする俺がいる。
チョコなんて貰いたくなくても集まってきてたのに、ずっしりと重みを感じるのはこのチョコだけ。
なんでこのチョコだけ?
うん、わかる。このチョコだけ。
「ありがとう。嬉しい。ちゃんとお礼するから。だから楽しみにしてて。」
何言ってるんだろう、俺。
今日の俺、きっと変。
バレンタインで進展してホワイトデーまで引き延ばすなんて、絶対にやらないと思ってたのに…。
変だな。
学校のある駅で電車を降りた時に思い出させられた。
「あ、あの…。これ。」
俯いて差し出されたチョコレート。
この子は若松の制服を着てるけど、知らない子。
「ありがとう。お返しとか出来ないけど、良い?」
可能な限りホワイトデーのお返しはするつもりだけれど、知らない子までいちいち把握は出来ないから、「受け取るだけ、お返しはできない」ってことをわかってくれる子だけは受け取る事にしてる。
「それで良いです。ありがとうございました。」
チョコを渡して知らない子は走り去った。
…そうかバレンタインか。
学校に着くまでにすでに4個。全部知らない子。
玄関で2個。
すでに俺のカバンの中はチョコだらけ。
(壮が食べられるのあるかなぁ。)なんて不謹慎だろうか。
教室に入ると翠や優達がチョコを配り歩いてる。
「ハイ、皇子くんにも。」
去年、複雑な想いで貰った翠からのチョコは今年はただ単純に嬉しいだけに変わってたことに俺自身が驚いた。
「毎年ありがとう、サンキューな。」
「おっ!皇来た!」
ニヤニヤと駆け寄ってきたのは北斗と疾風。
「朝だけで何個かなぁ?」
とカバンを勝手に開けられる。
「やめろって!」
慌てて取り返したけれど、しっかり数えられていたようだ。
「皇、良いものあげようか?」
ヒラヒラと北斗が差し出したのは空の紙袋。
「絶対お前には必要だろうと思って、用意してやった。」
くそっ!
ひったくるように紙袋を取り上げて、カバンの中身とみんなから貰ったのをそこに詰め込んだ。
「凄い!朝だけでこの数?」
って優までうるさい!
放っておけよ、他人のバレンタインなんてどうでも良いだろ?
「疾風だって似たよーなモンだろう?」
話題を逸らそうとしたけれど、
「残念でしたー。今年は疾風はひとつ確定でーす!」
翠以外のは断わる事にした疾風に、
「友達のくらいは受け取ってやれよ。」
と忠告を入れた。
「ばーか、それは数にカウントしないんだろっ。」
ってそれもそうか。
中休み、昼休み、放課後と俺の休み時間は悉く呼び出しで潰れていく。
部活中に聞いた新田と富田のやりとりを北斗達から面白おかしく聞かされる。
…もう疲れた…。早く帰りたい。
「あ、あの。葛西先輩。」
着替えて帰ろうとした俺を呼び止めたのが寿美ちゃん。
「ああ、寿美ちゃん。どうしたの?」
「あ、あの、これ。私と…母から!そう母からです。」
渡された紙袋。中身はきっとチョコ。
「ありがとう、お礼は…。」
ちょっとだけ確かめても良いだろうか。
意地悪じゃない、ちょっと確かめるだけ。
「…お礼は田辺さんとは分けた方が良いかな?」
ハッとする寿美ちゃん。
みるみる顔が赤くなる。
「あ、あの。ごめんなさい、嘘…つきました。
母は…母は知らない…です。」
ホッとする俺がいる。
チョコなんて貰いたくなくても集まってきてたのに、ずっしりと重みを感じるのはこのチョコだけ。
なんでこのチョコだけ?
うん、わかる。このチョコだけ。
「ありがとう。嬉しい。ちゃんとお礼するから。だから楽しみにしてて。」
何言ってるんだろう、俺。
今日の俺、きっと変。
バレンタインで進展してホワイトデーまで引き延ばすなんて、絶対にやらないと思ってたのに…。
変だな。
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