黒髪だからと罪を着せられ奴隷にされた『元ギルドの受付嬢』黒髪青年に助けられチート魔法で『冒険者』生活満喫中! その頃、元いたギルドは大混乱!

なつきコイン

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第一部 借金奴隷編

第39話 ワイバーン

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 昨日一日休みを取ったので、今日は朝から元気に薬草採取に向かっています。

 場所は、一週間前に来た崖の上の穴場です。

 天気も良く、ピクニック気分で、前回モーブに絡まれた崖の下までやってきました。
 これから、崖を登らなくてはなりません。
 前回は、ロッククライミングで大変でしたが、今回は風魔法で飛んでいけるので、楽なものです。

「それじゃあ、上まで飛んで行くわね」
「ちょっと待ってくれるかな!」
「なあに?」
「ミハルなら、風魔法でなく、重力の向きを変えて飛べるんじゃないかと思って――」

「私、魔力量が少ないから重たい物は動かせないわよ?」
「物を動かすんじゃなくて、重力の向きを変えるんだ!」
 マーサルが何を言いたいのか理解できません。私は首を捻ります。

「ミハルは光を曲げられるよね。それと同じように重力の――、物を引っ張る力の向きを変えるんだ」
「そんなことできるの?」
「重力を生み出すわけでも、重力自体に重さがあるわけでもないから、魔力操作SSSのミハルならできるよ!」

「そうかしらー!」
 煽てられて、段々その気になってきました。

「試しに、あの岩の重力を上向きに変えてみようよ」
 マーサルは崖の下に落ちている、ひと抱え程の岩を指し示します。

「わかったわ。やってみるわね」
 私は、岩を下方向に引っ張っている力をイメージし、それを上から引っ張るように変更します。

 すると、その岩は天に向けて飛んでいきました! いえ、飛んでいったというよりは、落ちていったと表現した方が正しいでしょう。

 私が魔法をかけるのをやめると、岩が文字通り落ちてきました。
 それも、かなりのスピードで、これは危険極まりないです!!

「できたにはできたけど、これでは危なくて飛べないわ」
 重力の向きを変えているだけなので、強さは調整できません。

「うまい具合に魔法を入り切りして、岩を浮かせられないかな?」
「それはまた難しい注文ね。まあ、やってみるけど――」

 私は岩に魔法を、かけたりやめたりを素早く繰り返します。

 岩は目の前の空中で上下に揺れています。
 一ヶ所に固定するのはなかなか難しいです。

 私は並列思考と、思考加速を利用して、魔法の切り替えの速度を上げます。

 そして、やっと岩をひと所に留めることに成功しました。

「これ、動かすより、止めておく方が難しいわ!」
「でもさすがだね。できてるじゃないか。これなら空を飛べるね」

「できると思うけど、風魔法の方が簡単かな……」
「適材適所。場面によって使い分ければいいんじゃないかな」
「まあ、できることが増えたのは、いいことだわ」

 その後、重力の方向を変えることで、実際に飛べるかやってみて、慣れてきてから、崖の上まで飛んで登りました。

 崖の上の穴場は、貴重な薬草の宝庫で、それを手当たり次第に摘んでいきます。
 前回の反省も踏まえ、私が摘んだ分も直ぐにマーサルのアイテムボックスに入れていきます。

 休憩をとりながらやっていると、感知強化の魔法が上空に何か捉えました。

「マーサル。上からに何か来るわ!」
「上から?」
 私に続いてマーサルも上空を見上げます。

「鳥? というよりは、コウモリに近いか」
「あれは、ワイバーンだわ!! どこかに隠れないと」
 私は隠れる場所がないか、あたりを見回しますが、ここは岩山の上、身を隠せるような所はありません。

「危険なのか?」
「あれは魔獣で、ブレスを吐いてくるわ。空を飛んでいるからこちらの攻撃も届きにくいの」

 説明をしている間に、ワイバーンが炎のブレスを吐いてきました。

「危ない!!」
 私たちはそれを回避しますが、代わりに貴重な薬草が台無しです。
「ああ。貴重な薬草が!」

「炎のブレスだから、温度を下げれば無効化できないかな?」
「やってみるわ!」

 ワイバーンは上空に留まったまま、攻撃が届く距離まで降りてこようとしません。
 そして、その位置から、下にいる私たちに向かって、ブレスを吐いてきます。

 私はブレスに対して温度を下げる魔法をかけます。
 ブレスは温度が下がりましたが、強い風が私たちを襲います。
「風だけでも凄いな」
「風魔法も併用して、風を抑える必要もあるわね」
 風魔法を併用して、なんとかブレスを無効化することに成功します。

「後はあそこまで届く攻撃方法だけど――」
「僕のアイスアローは届かないだろうな――」
 ワイバーンの攻撃は防げましたが、こちらの攻撃は届きそうにありません。

「飛んで行って攻撃するか?」
「ワイバーン相手に空中戦は無謀よ。なんとか地上に落とせないかしら」
「といっても、攻撃が届かないことにはな。餌で誘き寄せるとか?」
「餌になるような物はないわよ。それより、さっきの魔法はどうかしら。重力でワイバーンを落とせない?」
「それは無理だよ。ミハルの魔法は重力の向きを変えるだけだから。
 飛んでいるワイバーンにも、初めから下向きに重力はかかっているからね」

「そうか。それは残念――」
「だけど、さっきの魔法を使うのはいいかもしれない」
「どうするの?」
「僕がアイスアローを放つから、氷の矢にかかる重力をワイバーンの方に変えるんだ。
 そうすれば、遠くにいるほど、氷の矢の速度は上がり、いくら上空にいても必ず当たるよ!」
「なるほど、やってみましょう」

「じゃあいくよ。アイスアロー!!」
 マーサルがワイバーンに向けてアイスアローを放ちます。
 飛んで行く氷の矢に対して、私は重力の向きを変える魔法を変えます。
 氷の矢は、速度を上げながらワイバーンに迫ります。
 そして、攻撃が届くはずないと高を括っていたワイバーンを氷の矢が貫きました。
 ワイバーンは絶命して、そのまま上空から落ちてきます。

「ミハル。このまま落ちるとワイバーンが粉々になる。重力の向きを調整して、ゆっくり降ろして!」
「わかったわ!」

 と、言ったところでファンファーレが盛大に鳴り響きます。
 レベルが五上がったようです。これで、Lv.15のはずです。

 それに気を取られているうちに、ワイバーンは勢いよく落ちてきます
 私は慌ててワイバーンに魔法をかけて、目の前に軟着陸させます。

「近くで見るとプテラノドンみたいだな」
「プテラノドン?」
「昔生きていた空飛ぶ恐竜のことだけど」
「竜? ワイバーンは、ドラゴンではないわよ」

「ドラゴンがいるのか?」
「この辺りにはいないわよ」
「そうなんだ――」
 マーサルはなぜか少し残念そうです。ドラゴンに会いたいのでしょうか。

「ところで、これ売れるよな?」
「そうね。金貨五枚は硬いかしら」
「骨と皮ばかりだぞ」
「それが素材として高値が付くのよ。勿論、肉も希少品だから高く売れるわよ」
「そうなんだ」

「討伐依頼が出ていれば、討伐料も出るかもよ」
「そんなのがあるのか?」
「まあ、朝の時点では出てなかったけど」
「それじゃあ駄目じゃん」

「逆に出てたら、危険だから来なかったわ」
「毎回掲示板を確認しているのはそのためもあるんだね」
「最新情報は常にチェックしておかないとね。命に関わるわ」

 その後、薬草がワイバーンに荒らされてしまったこともあり、薬草採取は諦めて、少し早いですが、私たちは帰ることにしました。

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