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第3章
夜会準備
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オーガスに着いた私たちエレアナ一行は、明日の夜会に参加するために恥ずかしくない程度の服装を揃えるためにオーガスで一番大きい服飾店に訪れていた。
「いらっしゃいませ。どのような服をお探しでしょうか?」
仕立ての良いスーツ姿の男性店員が店を訪れた私たちの前に現れる。にこやかな笑みの中にどこか値踏みするような気配が混じっており、財布の中身を気にしなければいけないような一般市民ではこれだけで気が引けて回れ右をしてしまいそうである。
しかしディランは王族であり、ルーナとポートは貴族、レナは一応平民とはいえ大商会の娘なのでもちろん大金を目にすることも多かっただろう。
更に言えば私たちは冒険でかなりのお金を稼いでいる。ドルン山脈 見つけたお宝の数々を一部換金したお金もそうだが、それからの冒険でもかなり稼いでいる。ギルドの依頼を何度も達成しているし、ギルドを経由しない依頼もあったため、その依頼も含めれば金貨1000枚以上を稼いでいた。
服飾店のショーウインドウに飾られている服の金額はおよそ金貨3枚程度。つまりこの店のおすすめ商品の100倍の金額でも余裕で足りてしまうわけだ。どのランクの服を買うかにもよるが、少なくとも気後れするようなことは一切ないわけである。
ディランは店員の近くまで無言で近づくと、店員に耳打ちをする。
その途端に店員がより一層姿勢を正し、表情がこわばる。
「し、失礼いたしました!こちらにご案内いたします!」
店員の対応を見ていた他の従業員が店員の態度が急に変わったことに驚き、すぐに緊張で居住まいを正し出した。
おそらくディランは自分たちの素性を明かした上で、人目につかないように服を選びたいとでも言ったのだろうう。
店員の案内で店の2階に上がり、その奥の個室し通された。
「そ、それで、どう言った服をお探しでしょうかディラン王子。」
未だ緊張の治らない店員に苦笑いしつつ、ディランが社交界用のドレスとスーツを6着用意してほしいと頼む。店員はその注文を聞いた瞬間にすぐに部屋を出て行き服を選びに飛んで行ってしまった。
「とりあえずはうまくいっているようだな。」
「そうだな。あの店員は私のことを見てもまるで気にするそぶりがなかった。その余裕がなかったとも考えられるが、それにしても気にしなさすぎだったしな。」
オーガスに着く前にリィーネはオーランド男爵から受け取った誤魔化しの秘薬を飲んでいた。
半分ほど飲んでこの店にやってきたのだが、ちゃんと効果が出ているようで、リィーネがこの薬を飲んでいるところを見ていた私たち以外の人はリィーネがエルフであるということに気づいていないようだ。
誤魔化しの秘薬とはその名の通り周囲の認識を誤魔化すだけの薬である。それはつまり姿を変化させるものではないが故に正体を知っている者には効かないのである。
つまり正体を知っている私たちではちゃんと効果が表れているかわからない。
店に来ることは賭けではあったが、薬の効能は十分発揮されているようだ。
「しかし、逆に目立ったんじゃないか?こんな個室に通されるなんてかなりの好待遇だしよ。」
ポートはそういいながらフカフカのソファーに腰を下ろしながらくつろいでいる。
「俺たちの場合はある程度の上の人間になって来ると顔が割れるし、冒険者の知り合いも多いからその方面でもバレる恐れがある。それならいっそのこと誰かお偉いさんが来ているという不確かな情報を与えたほうが都合がいいだろう。」
「夜会に参加するために急いで服を買いに来たなんて話が立つのは私たちにとって良くないでしょうし。」
ルーナが言い終わるのと部屋にノック音が響いたのはほぼ同時だった。
「服をお持ちしました。」
外から先ほど駆け足で服を選びに行った店員が外から声をかけてきた。
部屋に入るように返事を返すと、扉を開ける店員。その両腕いっぱいに抱えた服はかなりの数があるように見えた。
さらに彼の背後にはもう2人ほど控えており、その両名も同じくいっぱいに抱えている。
店員たちが部屋の中に入ると、その服を一度奥にある大きな机に置くと、1着1着シワを伸ばしながら丁寧に近くの服掛けに掛けていく。
「ご希望のものの詳細が不明でしたので、当店でご用意できる社交界用のものの中から設定金額に近いものを全てご用意させていただきました。この中からご自由にお選びください。」
そう言うと部屋の中央に取り付けられているカーテンを引き、部屋を分割する。
「服をお選び頂けましたらお呼びください。ドアの付近で待機しておりますので。着替えの者はおつけせずに・・・良さそうですね。それではごゆっくりとお選びください。」
簡単な確認をとると、店員たちはすぐに部屋から出ていく。
「それじゃあ選ぶとしますかね。」
ポートの一声で各々服を選び出す。
貴族の夜会に出るための服選び。その人のセンスや品格、さらには財力や主催者側への友好度など、様々なことが服装1つで判断される。そんな服を選ぶという行為がかなりの時間に及ぶことは誰にでもわかることだった。
「いらっしゃいませ。どのような服をお探しでしょうか?」
仕立ての良いスーツ姿の男性店員が店を訪れた私たちの前に現れる。にこやかな笑みの中にどこか値踏みするような気配が混じっており、財布の中身を気にしなければいけないような一般市民ではこれだけで気が引けて回れ右をしてしまいそうである。
しかしディランは王族であり、ルーナとポートは貴族、レナは一応平民とはいえ大商会の娘なのでもちろん大金を目にすることも多かっただろう。
更に言えば私たちは冒険でかなりのお金を稼いでいる。ドルン山脈 見つけたお宝の数々を一部換金したお金もそうだが、それからの冒険でもかなり稼いでいる。ギルドの依頼を何度も達成しているし、ギルドを経由しない依頼もあったため、その依頼も含めれば金貨1000枚以上を稼いでいた。
服飾店のショーウインドウに飾られている服の金額はおよそ金貨3枚程度。つまりこの店のおすすめ商品の100倍の金額でも余裕で足りてしまうわけだ。どのランクの服を買うかにもよるが、少なくとも気後れするようなことは一切ないわけである。
ディランは店員の近くまで無言で近づくと、店員に耳打ちをする。
その途端に店員がより一層姿勢を正し、表情がこわばる。
「し、失礼いたしました!こちらにご案内いたします!」
店員の対応を見ていた他の従業員が店員の態度が急に変わったことに驚き、すぐに緊張で居住まいを正し出した。
おそらくディランは自分たちの素性を明かした上で、人目につかないように服を選びたいとでも言ったのだろうう。
店員の案内で店の2階に上がり、その奥の個室し通された。
「そ、それで、どう言った服をお探しでしょうかディラン王子。」
未だ緊張の治らない店員に苦笑いしつつ、ディランが社交界用のドレスとスーツを6着用意してほしいと頼む。店員はその注文を聞いた瞬間にすぐに部屋を出て行き服を選びに飛んで行ってしまった。
「とりあえずはうまくいっているようだな。」
「そうだな。あの店員は私のことを見てもまるで気にするそぶりがなかった。その余裕がなかったとも考えられるが、それにしても気にしなさすぎだったしな。」
オーガスに着く前にリィーネはオーランド男爵から受け取った誤魔化しの秘薬を飲んでいた。
半分ほど飲んでこの店にやってきたのだが、ちゃんと効果が出ているようで、リィーネがこの薬を飲んでいるところを見ていた私たち以外の人はリィーネがエルフであるということに気づいていないようだ。
誤魔化しの秘薬とはその名の通り周囲の認識を誤魔化すだけの薬である。それはつまり姿を変化させるものではないが故に正体を知っている者には効かないのである。
つまり正体を知っている私たちではちゃんと効果が表れているかわからない。
店に来ることは賭けではあったが、薬の効能は十分発揮されているようだ。
「しかし、逆に目立ったんじゃないか?こんな個室に通されるなんてかなりの好待遇だしよ。」
ポートはそういいながらフカフカのソファーに腰を下ろしながらくつろいでいる。
「俺たちの場合はある程度の上の人間になって来ると顔が割れるし、冒険者の知り合いも多いからその方面でもバレる恐れがある。それならいっそのこと誰かお偉いさんが来ているという不確かな情報を与えたほうが都合がいいだろう。」
「夜会に参加するために急いで服を買いに来たなんて話が立つのは私たちにとって良くないでしょうし。」
ルーナが言い終わるのと部屋にノック音が響いたのはほぼ同時だった。
「服をお持ちしました。」
外から先ほど駆け足で服を選びに行った店員が外から声をかけてきた。
部屋に入るように返事を返すと、扉を開ける店員。その両腕いっぱいに抱えた服はかなりの数があるように見えた。
さらに彼の背後にはもう2人ほど控えており、その両名も同じくいっぱいに抱えている。
店員たちが部屋の中に入ると、その服を一度奥にある大きな机に置くと、1着1着シワを伸ばしながら丁寧に近くの服掛けに掛けていく。
「ご希望のものの詳細が不明でしたので、当店でご用意できる社交界用のものの中から設定金額に近いものを全てご用意させていただきました。この中からご自由にお選びください。」
そう言うと部屋の中央に取り付けられているカーテンを引き、部屋を分割する。
「服をお選び頂けましたらお呼びください。ドアの付近で待機しておりますので。着替えの者はおつけせずに・・・良さそうですね。それではごゆっくりとお選びください。」
簡単な確認をとると、店員たちはすぐに部屋から出ていく。
「それじゃあ選ぶとしますかね。」
ポートの一声で各々服を選び出す。
貴族の夜会に出るための服選び。その人のセンスや品格、さらには財力や主催者側への友好度など、様々なことが服装1つで判断される。そんな服を選ぶという行為がかなりの時間に及ぶことは誰にでもわかることだった。
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