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16.いきなり魔王が復活したんですが!?

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「お、俺はいったい何を……」
次の日の朝、俺は起きた瞬間、昨日のことを思い出して恥ずかしくなっていた。
まさか自分から王子を求めてしまうなんて……。
「ミノル……?どうしたんだ?」
隣を見ると、王子が眠そうな顔をしている。しかし、俺と目が合うと、途端に笑顔になった。
「おはよう、ミノル」
「ああ……おはよう……」
俺は挨拶を返す。王子はニコニコしていた。
「昨晩のミノルはとても可愛かったよ。あんなに私を求めてくれるとは思わなかった……」
王子は嬉しそうだ。俺はますます照れ臭くなる。
「もう……あんまりそういうこと言うなよ……」
俺は布団を被ると、頭だけ出して王子を睨む。すると、王子はさらに笑みを深めた。
「そんなところも可愛い……」
王子はそう言ってチュッチュッとあちこちに軽いキスをしてくる。俺は諦めて、されるがままになっていた。

「さっ、今日も昨日の仕事の続きだろ。早く朝食に行こうぜ」
このままではいつまでもキリがないので、俺はそう言って立ち上がる。
身支度を整えていると、王子が後ろから抱きついてきた。
「んっ……!?」
俺は驚いて振り向く。王子の顔を見るととても近くにあった。
「王子、急になんだよ!」
「いや、ごめん……。ただこうしたくなっただけだ」
王子は悪戯っぽく笑っている。そんな顔も可愛いと思った。
「もう……仕方ないな……」
俺は溜め息を吐きながらも受け入れることにする。王子は俺のことを抱きしめたまま頭を撫で始めた。
「ミノル……、好きだよ……」
「俺もだよ……」
王子と目が合う。そしてお互い自然に唇を重ねた。王子は舌を入れてくる。俺はそれを受け入れた。
「ん……ミノル……」
「んんっ……」
2人でしばらくキスを続ける。王子は満足するまで続けると、ようやく離れた。
「ほら、そろそろ朝食に行くよ」
「ああ、そうだね」
俺達は部屋を出た。

二人で食堂に向かって歩いていると、城の中がざわざわしている。何かあったのだろうか?
「何か騒がしくないか?」
「そうだね……。行ってみようか」
王子はそう言って走り出した。俺もそれについて行く。
廊下を曲がると、兵士達が集まっていた。
「何があったんですか?」
近くの兵士に訊いてみる。
「それが……魔王が復活したそうなのです!」
「えぇー!!」
「何だって!?」
俺と王子は同時に叫んでしまった。今日も平和な日常が始まると思っていたのに、まさかこんなことになるなんて……。
いや、ここ最近の生活を平和な日常って思うのはどうなんだ、俺。そもそも異世界に来てしまったのに、だいぶ馴染んでしまってるな……。
しかし、それはそれとして。魔王復活はかなりやばいことだろう。
ゲームの中でも、滅ぼされた町などの描写があったし、この国だって安全とは限らないのだ。
「ミノル……大変なことになってしまったね……」
「ああ……一体どうしたらいいんだ……?」
俺は動揺して落ち着かない。王子も不安そうな表情をしていた。
「今から緊急会議を行うそうです。2人も来てください!」
俺たちはすぐに会議室に向かう。そこには国の重鎮達が揃っていた。

「では、これより緊急会議を始める!」
国王の言葉を皮切りに、話し合いが始まる。
「まずは被害状況の確認をしたい。大臣、頼むぞ」
「はい。幸いなことに、我がラルジュ王国には大きな被害はありませんが、他の国々は深刻な被害を受けている模様です。特に兵士が不足している国の被害が深刻で、ほぼ壊滅状態に陥っているとか……」
「そうか……。やはり魔王の復活は本当だったのだな……」
国王は深刻そうに呟く。
「このまま放置しておくわけにもいくまい。すぐにでも討伐隊を結成するのだ!他国から要請があれば派遣する余裕も必要だ。皆のもの、準備に取り掛かれ!」
「はい!」
話し合いが終わると、みんなそれぞれの持ち場に戻っていく。俺達も急いで支度をすることになった。
「ミノル、私と一緒に来てくれ」
「うん!」
王子も兵士達と一緒に戦うことになり、準備をする。俺は回復係として同行することになった。
「ミノルを危険な目に合わせたくなかったが、仕方ない……。ミノルと離れて行動するのも不安だし、一緒にいられるからいいか……」
王子はそんなことを言いつつ、俺に抱きつく。
「王子ったら、心配性だなぁ……」
俺は苦笑しながら、王子の頭を撫でた。
「ミノル……私から離れるんじゃないぞ……」
「分かってるよ……」
王子は俺をギュッと抱きしめる。俺も王子の背中に腕を回した。
2人で見つめ合うと、そっとキスをした。
「じゃあ、行こうか……」
「ああ……」

俺達は城から出て、近くの森に向かった。そこに魔物達が集まってきているらしいのだ。
俺と王子の他に、3人の兵士が一緒に討伐へ向かう。

森に着くと、慎重に辺りを警戒しながら進んでいった。
すると、早速魔物が襲ってくる。大きな熊のような姿の魔物だ。目は赤く光り、身体中が黒いオーラのようなもので覆われている。
「あれは……ブラックベアです!気をつけてください!」
兵士が叫んだ。
ブラックベア……たしかゲームでは割と序盤の方に出てくるのにやたらと強くて、遭遇したら逃げていた覚えがある。勝てるのだろうか。
王子は剣を構えた。
「私が攻撃するから、皆は魔法で援護してくれ!ミノルは私の傍を離れるなよ!」
「分かった!」
王子の指示に従い、戦闘態勢に入る。俺は王子の背後に移動した。
「グオオォ……!!」
ブラックベアは吠えると、こちらに向かって突進してくる。
王子はその攻撃をひらりとかわすと、すれ違いざまに斬りつけた。だが、あまりダメージを与えられていない様子だ。
「ガアァッ!」
ブラックベアは王子の方を振り向くと、鋭い爪を向けて襲いかかる。王子はそれをギリギリのところで避け、再び斬撃を食らわせた。
「ぐおおぉ……!」
今度は少し効いているみたいだ。俺は王子の回復のために駆け寄ろうとした。しかし、その時。
「危ない!」
いつの間にか俺の後ろに移動していたブラックベアが、巨大な腕を薙ぎ払うように振り下ろしてきた。俺はその一撃を受けて吹き飛ばされる。
「うわぁー!」
「ミノル!!大丈夫か!?」
「うぅ……」
王子がすぐに俺に駆け寄り、俺を抱き起してくれた。俺は自身に回復魔法をかける。何とか動けるようになった。
「よくもミノルを……許さんぞ!!」
王子は怒りに燃えていた。そして、そのままブラックベアに突っ込んで行く。
「グアアッ!!」
ブラックベアは王子を迎え撃つべく、腕を大きく広げて構えた。
兵士達が、王子に向かって一斉に強化魔法を唱える。
「はあああぁぁ!!」
魔法で強化された王子の一撃が炸裂した。
「グォオオオッ!」
ブラックベアは叫び声をあげて倒れる。そして、動かなくなった。
「やったのか……?」
「おそらく……」
王子は警戒しつつ様子を見ていた。しかし、いつまで経っても動く気配がない。
「どうやら倒したようだな……」
「良かった……」
皆でホッと胸を撫で下ろす。
「王子、凄いね……かなり強いんだなぁ」
「いや、ミノルに怪我をさせてしまって悪かった……ミノルが無事で本当に良かったよ……」
最前線で戦っていた王子の方がよっぽど危険だったのに、俺のことを心配していたらしい。優しいな……。
「皆も強化魔法をありがとう。助かったよ」
「いえ、ブラックベアを倒してしまうとは、さすが王子です!」
兵士達は口々に賞賛の言葉を口にした。
「いや、私はただ必死だっただけだ。ミノルを守れなかったらと思うと怖くてな……。もっと強くならないと……。ミノル、絶対に私が守るからな!」
「うん……。ありがとう……」
俺は照れくさくなり、顔を赤らめた。王子はそんな俺を見て微笑むと、優しく頬に触れてくる。
「ミノル、愛している……」
「俺もだよ……」
俺は王子と見つめ合う。
「あの~……」
「えっ?あっ……」
兵士の声で我に返る。完全に2人の世界に入っていた。
そんな俺達の様子を、兵士達は生温かい目で見ていたのだった……。
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