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║20║壊れる心に、響く声
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空気が張りつめ、木々の葉擦れすら止まったような静寂。次の瞬間、それを引き裂く鋭い音とともに、一本の矢が僕たちのすぐ脇に突き立った。
「伏せろ!」
誰かの叫びと同時に、グレンが僕を抱き寄せるようにして地面に引き倒す。昼の日差しを浴びていたはずの地面が、妙に冷たく感じた。
そのすぐ上を、次々と鋭い矢がかすめていく。
「殿下、絶対に私のそばを離れないでください」
グレンの低く張った声が、胸の奥に染み込んだ。
僕が頷いた瞬間、彼は剣を抜く。淡く光を帯びた刃が、彼の魔力に応じてきらめいていた。
「弓兵がいる……が、狙いは牽制か。本命は……」
ガルドがそう呟くのと、ほぼ同時だった。
次の瞬間、森の奥から飛び出してきたのは、黒装束の集団――王都の追手だ。
「アストル殿下を確保しろ!」
冷たく鋭い号令が飛ぶ。
同時に、彼らの手から魔法が放たれ、地面が爆ぜ、木々が焦げる。閃光と轟音の嵐に、心臓が跳ね上がった。
「来るなら来いよ……お前ら全員、タダじゃ済まさねぇぞ!」
ガルドが吠えるように言い放つや否や、壁際に立てかけていた巨大な斧を手に取る。その姿に僕は、思わず目を瞬かせた。
(え、ガルドさんって武器作るだけで、自分では振るわないって言ってなかったっけ……?)
そんな僕の心の声をよそに、彼は見事な振りかぶりで一撃を放つ。分厚い斧刃が唸りを上げ、突撃してきた敵数人をまとめて吹き飛ばした。
「ったく、久々に腕がなるな!斧の扱い方を見せてやらねぇとなぁ!」
ごりごりと肩を鳴らしながら豪快に笑うガルドに、僕は言葉を失う。振るわないどころか、完璧に戦闘要員だ。
「……めちゃくちゃ頼もしい……」
小さくつぶやくと、横でグレンがわずかに目を細める。けれど、笑ってはいなかった。敵の動きを鋭く見据え、剣を握る手に力を込めている。
「殿下、私たちで囲みを崩しましょう。仲間たちが押し返してくれている今が好機です」
「わかった」
僕も頷き、あらためて周囲の状況を見渡す。
すると、皆が想像以上に善戦していることに気づいた。混乱の中でも、冷静な判断ができている。
ガルドの斧がうなりを上げて敵を吹き飛ばす中、その背後では、仲間たちがそれぞれのやり方で応戦していた。火の玉を小さな爆薬にぶつけて炸裂させたり、水の魔法で地面を滑らせて敵の足を取ったり――即席の罠のような工夫が次々と繰り出されていく。
誰もが剣を振るえるわけじゃない。でも、この場所を守ろうとする気持ちは皆、等しく強かった。その意志が、敵の進行を着実に鈍らせている。
「……なんとか、なるかも」
ほっと息を吐いたそのときだった。
一人、敵の影が僕に向かって一気に駆け寄ってきたのだ。足元に魔法陣が光るのが見えた瞬間、思考が止まってしまう。
(まずい――!)
反応するより早く、目の前にグレンの背中が飛び込んできた。
「殿下!」
鋭い声と同時に、彼は体をひねり、僕の前に立ちはだかる。
次の瞬間、焼けつくような魔力の熱が空気を裂き、グレンの右肩を直撃した。
「……っ!」
肩から血が流れ、布地を染めていく。片膝をつき、片手を地面につくその姿は、今にも崩れ落ちそうだった。
「グレン……!!」
彼の名前を叫ぶのと、胸の奥から熱が溢れ出すのはほとんど同時だった。怒りとも、恐怖ともつかない感情が、一気に僕を包み込んでいく。
――抑えていたものが、限界を越えた。
次の瞬間、地鳴りのような振動と共に、空気が裂ける。
「な、なんだ、こいつは――!」
敵兵のひとりが叫び声を上げたが、その声は魔力の奔流に呑まれてかき消えた。僕の中で何かが決定的に壊れた瞬間、世界が一変する。
視界の端できらめくのは、淡い光の粒子。けれどそれは幻想的なものではなく、空間そのものを軋ませるほどの、異質な魔素だ。肌に触れただけで焼けつくような圧力を放ちながら、それは意志を持つ嵐のように敵を選び、容赦なく吹き飛ばしていく。
「殿下から離れろ!巻き込まれるぞ!」
ガルドの声が聞こえた。彼の仲間たちが動揺を隠しきれない顔で、後方へと下がっていく。ガルド自身も、斧を杖のように地面に突き立てて、必死に踏みとどまっていた。
「これが……異端の力、なのか……」
そう呟いた彼の声が、途中で途切れる。僕の目を見て、何かを感じ取ったのかもしれない。
――やってしまった。
押し寄せる魔力の奔流が、敵を次々に呑み込んでいくのを、僕はただ立ち尽くしたまま見ていた。
この力を振るうつもりなんてなかったのに。
ただ、グレンが傷つくのを見て、心の奥で何かが決壊した。止めようとしても、もう遅かった。気づけば、あふれ出した魔力が全身を駆け巡り、僕の意思など置き去りにして暴れ出していた。
「……やめて……!もう、止まってよ……!」
必死に自分に呼びかけても、止まる気配はない。息が詰まるほどの圧が胸を押しつぶし、視界の端で光の粒子が渦を巻く。吹き飛ばされた敵兵たちは、すでに動かない。
それなのに、魔力はまだ渦を広げ続けていた。
仲間たちが困惑した顔で、けれど近づけずに立ち尽くしているのが見える。誰も僕に近づこうとはしない。
その理由は、わかっている。今の僕は危険だ。誰が見ても、そう思うはずだった。
魔力の渦が、なおも周囲を巻き込んで荒れ狂う。僕自身も、それを止められない。視界が滲んで、誰の顔もはっきり見えない。
――助けて。誰か、止めて。
心の中で叫んだその瞬間。
「殿下!」
聞き慣れた低い声が、かき消されそうな風の音の中から届いた。
――グレンだ。
その表情には余裕がなく、肩からは血が滲んでいる。先ほど僕を庇ったときの傷だ。それでも彼は、僕から目を離さず、真っ直ぐに歩み寄ってくる。
「来ちゃ、ダメ……!僕また……!」
「大丈夫です。私が――殿下を止めます」
その言葉と同時に、彼はまっすぐ僕に手を伸ばした。
「来ないでって言ってるのに……!」
声が震える。けれど、それ以上に震えていたのは、僕の心だった。暴走は、収まるどころか加速している。なのにグレンは、怯むことなく、僕の身体をぐっと抱き寄せた。
「――殿下、もう大丈夫です。私がいます」
その言葉が、胸の奥深くに届く。彼の腕の中に包まれた瞬間、暴れていた魔力が、少しずつ、静まっていくのがわかった。
(……あたたかい)
胸元に顔を埋めると、彼の体温が、確かにそこにあると教えてくれる。震えていた指先も、次第に力を取り戻していく。
「殿下」
耳元で、やわらかく呼ばれた。泣きそうになったのを、ぎりぎりで堪える。
――こわかった。
彼がいてくれて、よかった。僕はそっと目を閉じる。
この腕の中だけは、嵐が吹いていない。そう感じられることが、今はただ、嬉しかった。
「伏せろ!」
誰かの叫びと同時に、グレンが僕を抱き寄せるようにして地面に引き倒す。昼の日差しを浴びていたはずの地面が、妙に冷たく感じた。
そのすぐ上を、次々と鋭い矢がかすめていく。
「殿下、絶対に私のそばを離れないでください」
グレンの低く張った声が、胸の奥に染み込んだ。
僕が頷いた瞬間、彼は剣を抜く。淡く光を帯びた刃が、彼の魔力に応じてきらめいていた。
「弓兵がいる……が、狙いは牽制か。本命は……」
ガルドがそう呟くのと、ほぼ同時だった。
次の瞬間、森の奥から飛び出してきたのは、黒装束の集団――王都の追手だ。
「アストル殿下を確保しろ!」
冷たく鋭い号令が飛ぶ。
同時に、彼らの手から魔法が放たれ、地面が爆ぜ、木々が焦げる。閃光と轟音の嵐に、心臓が跳ね上がった。
「来るなら来いよ……お前ら全員、タダじゃ済まさねぇぞ!」
ガルドが吠えるように言い放つや否や、壁際に立てかけていた巨大な斧を手に取る。その姿に僕は、思わず目を瞬かせた。
(え、ガルドさんって武器作るだけで、自分では振るわないって言ってなかったっけ……?)
そんな僕の心の声をよそに、彼は見事な振りかぶりで一撃を放つ。分厚い斧刃が唸りを上げ、突撃してきた敵数人をまとめて吹き飛ばした。
「ったく、久々に腕がなるな!斧の扱い方を見せてやらねぇとなぁ!」
ごりごりと肩を鳴らしながら豪快に笑うガルドに、僕は言葉を失う。振るわないどころか、完璧に戦闘要員だ。
「……めちゃくちゃ頼もしい……」
小さくつぶやくと、横でグレンがわずかに目を細める。けれど、笑ってはいなかった。敵の動きを鋭く見据え、剣を握る手に力を込めている。
「殿下、私たちで囲みを崩しましょう。仲間たちが押し返してくれている今が好機です」
「わかった」
僕も頷き、あらためて周囲の状況を見渡す。
すると、皆が想像以上に善戦していることに気づいた。混乱の中でも、冷静な判断ができている。
ガルドの斧がうなりを上げて敵を吹き飛ばす中、その背後では、仲間たちがそれぞれのやり方で応戦していた。火の玉を小さな爆薬にぶつけて炸裂させたり、水の魔法で地面を滑らせて敵の足を取ったり――即席の罠のような工夫が次々と繰り出されていく。
誰もが剣を振るえるわけじゃない。でも、この場所を守ろうとする気持ちは皆、等しく強かった。その意志が、敵の進行を着実に鈍らせている。
「……なんとか、なるかも」
ほっと息を吐いたそのときだった。
一人、敵の影が僕に向かって一気に駆け寄ってきたのだ。足元に魔法陣が光るのが見えた瞬間、思考が止まってしまう。
(まずい――!)
反応するより早く、目の前にグレンの背中が飛び込んできた。
「殿下!」
鋭い声と同時に、彼は体をひねり、僕の前に立ちはだかる。
次の瞬間、焼けつくような魔力の熱が空気を裂き、グレンの右肩を直撃した。
「……っ!」
肩から血が流れ、布地を染めていく。片膝をつき、片手を地面につくその姿は、今にも崩れ落ちそうだった。
「グレン……!!」
彼の名前を叫ぶのと、胸の奥から熱が溢れ出すのはほとんど同時だった。怒りとも、恐怖ともつかない感情が、一気に僕を包み込んでいく。
――抑えていたものが、限界を越えた。
次の瞬間、地鳴りのような振動と共に、空気が裂ける。
「な、なんだ、こいつは――!」
敵兵のひとりが叫び声を上げたが、その声は魔力の奔流に呑まれてかき消えた。僕の中で何かが決定的に壊れた瞬間、世界が一変する。
視界の端できらめくのは、淡い光の粒子。けれどそれは幻想的なものではなく、空間そのものを軋ませるほどの、異質な魔素だ。肌に触れただけで焼けつくような圧力を放ちながら、それは意志を持つ嵐のように敵を選び、容赦なく吹き飛ばしていく。
「殿下から離れろ!巻き込まれるぞ!」
ガルドの声が聞こえた。彼の仲間たちが動揺を隠しきれない顔で、後方へと下がっていく。ガルド自身も、斧を杖のように地面に突き立てて、必死に踏みとどまっていた。
「これが……異端の力、なのか……」
そう呟いた彼の声が、途中で途切れる。僕の目を見て、何かを感じ取ったのかもしれない。
――やってしまった。
押し寄せる魔力の奔流が、敵を次々に呑み込んでいくのを、僕はただ立ち尽くしたまま見ていた。
この力を振るうつもりなんてなかったのに。
ただ、グレンが傷つくのを見て、心の奥で何かが決壊した。止めようとしても、もう遅かった。気づけば、あふれ出した魔力が全身を駆け巡り、僕の意思など置き去りにして暴れ出していた。
「……やめて……!もう、止まってよ……!」
必死に自分に呼びかけても、止まる気配はない。息が詰まるほどの圧が胸を押しつぶし、視界の端で光の粒子が渦を巻く。吹き飛ばされた敵兵たちは、すでに動かない。
それなのに、魔力はまだ渦を広げ続けていた。
仲間たちが困惑した顔で、けれど近づけずに立ち尽くしているのが見える。誰も僕に近づこうとはしない。
その理由は、わかっている。今の僕は危険だ。誰が見ても、そう思うはずだった。
魔力の渦が、なおも周囲を巻き込んで荒れ狂う。僕自身も、それを止められない。視界が滲んで、誰の顔もはっきり見えない。
――助けて。誰か、止めて。
心の中で叫んだその瞬間。
「殿下!」
聞き慣れた低い声が、かき消されそうな風の音の中から届いた。
――グレンだ。
その表情には余裕がなく、肩からは血が滲んでいる。先ほど僕を庇ったときの傷だ。それでも彼は、僕から目を離さず、真っ直ぐに歩み寄ってくる。
「来ちゃ、ダメ……!僕また……!」
「大丈夫です。私が――殿下を止めます」
その言葉と同時に、彼はまっすぐ僕に手を伸ばした。
「来ないでって言ってるのに……!」
声が震える。けれど、それ以上に震えていたのは、僕の心だった。暴走は、収まるどころか加速している。なのにグレンは、怯むことなく、僕の身体をぐっと抱き寄せた。
「――殿下、もう大丈夫です。私がいます」
その言葉が、胸の奥深くに届く。彼の腕の中に包まれた瞬間、暴れていた魔力が、少しずつ、静まっていくのがわかった。
(……あたたかい)
胸元に顔を埋めると、彼の体温が、確かにそこにあると教えてくれる。震えていた指先も、次第に力を取り戻していく。
「殿下」
耳元で、やわらかく呼ばれた。泣きそうになったのを、ぎりぎりで堪える。
――こわかった。
彼がいてくれて、よかった。僕はそっと目を閉じる。
この腕の中だけは、嵐が吹いていない。そう感じられることが、今はただ、嬉しかった。
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