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02 勇者、期待される
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「あの、今何て……」
きっと聞き間違えたのだろうという願いを込めて、聞き返す。
「だから、勇者殿と魔王がセックスをするのじゃ!」
その小さな願いは、即崩れ去った。
……いやいや、女の子もいるというのに、一体何を言い出すんだ、この爺さん。
俺は訝しげな視線を向けるが、王様は平然と続ける。
「何百年も前、悪さをしていた頃の魔王に、当時の勇者が呪いをかけたのじゃ。好き勝手に人間を襲うことが出来ないように、『魔王は勇者にしか射精できない』という呪いを……」
いや、なんちゅう呪いだよ……。まあ確かに、勇者以外は襲われる心配がなくていいかもしれないけれど。
「そして、その呪いは後世の魔王にも効いてしまったのじゃ。つまり、今の魔王は生まれた時から一度も射精したことがなく、溜まった性欲で魔力が暴発してしまっているのじゃ……」
それは苦しいはずだ。もし俺がそんな状態だったら発狂してしまうかもしれない。
だからといって、俺が相手をしてあげるというのはそう簡単には了承できない。それに……。
「でも……その……俺、じつはまだ童貞で……」
まさかこんなことを異世界でばらすことになるとは。恥ずかしすぎて顔が熱くなっていくのを感じた。
「大丈夫じゃ!勇者殿は魔王に抱かれる側じゃよ。魔王に身を委ねるだけで良いのじゃ」
いや、全然大丈夫じゃない。童貞なのに処女喪失とか、絶対に嫌だ。しかも相手は魔王。人間ですらない。
「む、無理無理、無理です!」
「勇者殿、お願いじゃ。この世界を救えるのは勇者殿だけなのじゃ……!」
王様が必死の形相で言う。他の人達も同じような表情を浮かべていた。
「そ、そう言われても……」
「勇者殿以外に頼れる者はいないのです!お願いします!」
「勇者様!どうかこの国を救ってください!」
「勇者さま!たすけて!」
皆が俺のことを期待に満ちた目で見つめている。
俺が断れば、この世界は滅んでしまうのだろう。俺には関係ないとはいえ、そんなことになったら寝覚めが悪い……。
「わ、分かりました……」
俺は覚悟を決めた。ここまで頼まれたら仕方ない。やるしかないだろう。
「おおっ!引き受けてくれるか!さすが勇者殿じゃ!ありがとうございますぞ!」
王様が感極まったように叫ぶ。周りの人々も拍手喝采だ。
「勇者様!一生ついていきます!」
「さすが勇者様、最高だぜーっ!」
口々に賞賛の声が上がる。
いや、俺はこれから魔王に犯されるっていうのに……。
こうして、俺は魔王を鎮めるために、魔王城へ行くことになったのだった――。
***
それから、この世界について色々と教えてもらった。
まず、この世界は魔法によってライフラインが確保されていて、生活水準はかなり高いようだ。俺がいた日本よりも便利かもしれない。
しかし、今は魔王の影響により、原動力となる人間の魔力が徐々に減少しているらしい。このままでは、いずれ完全に枯渇して、人々は生活できなくなってしまうそうだ。
逆に、魔王を鎮めることさえ出来れば再び人々に魔力が戻り、さらに、その魔力で俺を元の世界に返すことも出来るらしい。今回は、最後の魔力を使って俺を召喚したのだそうだ。
「良かった、元の世界に戻れるのか……」
思わず安堵のため息をつく。
「そうですじゃ。ただ、元の世界に戻った後も、定期的に魔王の精液を受けなければいけないのじゃが……」
「えええっ!?」
とんでもない条件が追加されてしまった。
「ど、どうしてですか!?」
「一度鎮めても、時間が経てばまた魔王の力は溜まってしまうのじゃ。そうなると、勇者殿は強制的に魔王の元へ呼び寄せられてしまうのじゃ……」
そんな……。一回だけ我慢すればいいと思っていたのに……。
でも、そもそも魔王を鎮めることが出来るのかすら、まだ分からない。先のことはいったん置いておこう。あまり具体的に想像したくないというのもある……。
「分かりました。とりあえずなんとかやってみます……」
「よろしく頼みますぞ。魔王城までは、ワシの側近が案内してくれよう。何か困ったことがあったら相談するのじゃ。出来る限り力になるぞ」
王様との会話を終えた後、王様の側近に挨拶をされる。馬車に乗せられて、魔王城へと向かった。
きっと聞き間違えたのだろうという願いを込めて、聞き返す。
「だから、勇者殿と魔王がセックスをするのじゃ!」
その小さな願いは、即崩れ去った。
……いやいや、女の子もいるというのに、一体何を言い出すんだ、この爺さん。
俺は訝しげな視線を向けるが、王様は平然と続ける。
「何百年も前、悪さをしていた頃の魔王に、当時の勇者が呪いをかけたのじゃ。好き勝手に人間を襲うことが出来ないように、『魔王は勇者にしか射精できない』という呪いを……」
いや、なんちゅう呪いだよ……。まあ確かに、勇者以外は襲われる心配がなくていいかもしれないけれど。
「そして、その呪いは後世の魔王にも効いてしまったのじゃ。つまり、今の魔王は生まれた時から一度も射精したことがなく、溜まった性欲で魔力が暴発してしまっているのじゃ……」
それは苦しいはずだ。もし俺がそんな状態だったら発狂してしまうかもしれない。
だからといって、俺が相手をしてあげるというのはそう簡単には了承できない。それに……。
「でも……その……俺、じつはまだ童貞で……」
まさかこんなことを異世界でばらすことになるとは。恥ずかしすぎて顔が熱くなっていくのを感じた。
「大丈夫じゃ!勇者殿は魔王に抱かれる側じゃよ。魔王に身を委ねるだけで良いのじゃ」
いや、全然大丈夫じゃない。童貞なのに処女喪失とか、絶対に嫌だ。しかも相手は魔王。人間ですらない。
「む、無理無理、無理です!」
「勇者殿、お願いじゃ。この世界を救えるのは勇者殿だけなのじゃ……!」
王様が必死の形相で言う。他の人達も同じような表情を浮かべていた。
「そ、そう言われても……」
「勇者殿以外に頼れる者はいないのです!お願いします!」
「勇者様!どうかこの国を救ってください!」
「勇者さま!たすけて!」
皆が俺のことを期待に満ちた目で見つめている。
俺が断れば、この世界は滅んでしまうのだろう。俺には関係ないとはいえ、そんなことになったら寝覚めが悪い……。
「わ、分かりました……」
俺は覚悟を決めた。ここまで頼まれたら仕方ない。やるしかないだろう。
「おおっ!引き受けてくれるか!さすが勇者殿じゃ!ありがとうございますぞ!」
王様が感極まったように叫ぶ。周りの人々も拍手喝采だ。
「勇者様!一生ついていきます!」
「さすが勇者様、最高だぜーっ!」
口々に賞賛の声が上がる。
いや、俺はこれから魔王に犯されるっていうのに……。
こうして、俺は魔王を鎮めるために、魔王城へ行くことになったのだった――。
***
それから、この世界について色々と教えてもらった。
まず、この世界は魔法によってライフラインが確保されていて、生活水準はかなり高いようだ。俺がいた日本よりも便利かもしれない。
しかし、今は魔王の影響により、原動力となる人間の魔力が徐々に減少しているらしい。このままでは、いずれ完全に枯渇して、人々は生活できなくなってしまうそうだ。
逆に、魔王を鎮めることさえ出来れば再び人々に魔力が戻り、さらに、その魔力で俺を元の世界に返すことも出来るらしい。今回は、最後の魔力を使って俺を召喚したのだそうだ。
「良かった、元の世界に戻れるのか……」
思わず安堵のため息をつく。
「そうですじゃ。ただ、元の世界に戻った後も、定期的に魔王の精液を受けなければいけないのじゃが……」
「えええっ!?」
とんでもない条件が追加されてしまった。
「ど、どうしてですか!?」
「一度鎮めても、時間が経てばまた魔王の力は溜まってしまうのじゃ。そうなると、勇者殿は強制的に魔王の元へ呼び寄せられてしまうのじゃ……」
そんな……。一回だけ我慢すればいいと思っていたのに……。
でも、そもそも魔王を鎮めることが出来るのかすら、まだ分からない。先のことはいったん置いておこう。あまり具体的に想像したくないというのもある……。
「分かりました。とりあえずなんとかやってみます……」
「よろしく頼みますぞ。魔王城までは、ワシの側近が案内してくれよう。何か困ったことがあったら相談するのじゃ。出来る限り力になるぞ」
王様との会話を終えた後、王様の側近に挨拶をされる。馬車に乗せられて、魔王城へと向かった。
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