魔法学校に入学したので兄ちゃんに会いたい。

つる

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兄ちゃん、お元気ですか。俺はピンチです。

孤高の勇者とは俺のことよ……!

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 校門をくぐり集合場所に向かうと、そこは受付でした。
 至って普通のことだ。しかし、この受付が教室決め簡易ダンジョンの受付だというから白い花を胸につけながら『ひぇ』と小さく悲鳴を上げてしまう。

 魔法とかそんなものおとぎ話か漫画かアニメか小説か……という現代日本から一人でやってきた俺には、ハードルが高い高いである。
 もちろん、ダンジョンのハードルの高低は行ってみないことにはわからない。

 けれど、現段階でわかっていることが一つあった。
 俺がぼっちだということである。

 内部入学生はまだしも、外部入学生の半数はぼっちだ。それでも、入学式をするまえから俺ほどの孤高を手に入れた者もいないだろう。
 なにせ、現代日本の十代男子が魔法学校に入学するなど、異世界に入学したも同然だからだ。

 そんな中学校どころか世界すら違う入学生が、急になじむにはかなりの社交性が必要である。
 入学したことに感動して兄ちゃんやったよといっている場合ではない。今すぐ兄ちゃん助けてと叫んで走り出す必要がある。

 しかしながら、不安な顔で受付をすると、受付をしてくれた先輩がソロでもパーティでも好きなように攻略してくれて構わないといってくれた。
 ソロでもいいというのなら、ちょっと安心である。

 だが俺も少し考えた。ソロでもパーティでも好きに攻略していいということは複数人を想定しているということで、ソロで攻略したら大変なのではないかと。
 それにもしもダンジョンが入学生のためといいながらハードすぎたら、ソロでダンジョン入ったとたんに終了、入学取り消しとかにならないか。

 恐ろしい。なんという罠だ。
 俺はここ一番の社交性を手に、辺りを見渡す。
 入学式なのだ。俺ほどの孤高を極めずともぼっちが一人くらいいてもおかしくはない。

 受付から十歩以内の連中は群れており、近辺の桜の木の下には三人ないし四人の影……そのほか、ダンジョンに行くまでに声をかけたりかけられたりしている連中の多いこと多いこと。

 俺も声をかけられてもいいくらいお得で明るく楽しいボッチだというのに、何故か遠巻きに見られている気がする。現代日本の香りでもするのだろうか。その程度のにおいでぼっちとはさみしいものである。

 そうして俺が現代日本の香りに膝を折ろうとしていたとき、俺は発見してしまった。
 ダンジョンの入り口に一人ですたこら向かう勇者を、そう、勇者を見つけてしまったのだ。
 この迷いない足運び、さぞ名のある勇者とお見受けすると心で叫びつつ、俺は勇者に駆け寄った。

「ちょっと、そこの勇者、俺と一緒にダンジョン行かない……っ?」

 慌てるあまり、ひどいナンパになってしまったのはちょっとしたお茶目だと思ってもらいたい。

「勇者……?」

 俺の失礼千万な呼びかけに振り向いた勇者は、ずいぶんガラの悪いお顔の勇者でした。
 ぴたりと足を止め、俺は平常心を保つために勇者についているピアスを数える。ひーふーみー……いっぱいだ。兄もピアスをしてるが、勇者の耳はルーズリーフである。兄など勇者の足元にも及ばない。

 やばい人に声をかけてしまったのではないか。
 しかし考えてもみれば、兄などどピンクで目に対する歩く攻撃だ。それに比べたら、このガラの悪い勇者のルーズリーフなど恐るるに足らないはずだ。

 そのはずなのだが、鋭い目つきとか俺より高いせとか、ノーネクタイ、イエス着崩しなスタイルが、俺の警鐘をガンガン殴ってくる。
 今や俺は蛇に睨まれたカエルも同然だ。

「あ、いえ、あの……ひとりでダンジョンとか、すごい実力なんだろうなと」

「いや、一緒に行くやつがいねぇだけだけど?」

 幸か不幸か、なんにせよ失礼極まりなかったのだが、俺の思う通りの勇者だった。

「あ、なら、そのぅ」

 今更、一緒に行くのはやめておきたいとか怖くていえない。だが、一丁前に粋がって金髪にしている小僧など、このガラ悪い勇者にとって有象無象に違いない。きっと断られてしまうだろう。

「別に構わねぇけど」

 ああ残念だ。断られてしまうのなら仕方ないと胸をなでおろす予定だったのに、ガラの悪い勇者よ、勇者とかいっちゃった仕返しなのだろうか。
 色々信じがたくて、俺は口をポカンと開けた。

「マジで?」

 口を開けたついでに声が勝手に出て行く。なんとも自分勝手な声である。

「おー」

 そんな俺を知ってか知らずか、ガラの悪い勇者は他の生徒に道を譲り、邪魔にならぬよう道の端に寄りながら返事をした。
 さては、このガラ悪い勇者、ちょっといいやつだな……?
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