商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

文字の大きさ
10 / 138

10

しおりを挟む

「何がぐ~と?腹でも減っているのか?」

「…」

「違うか?」

「…」

「その沈黙は、何故此処に居ると言うことかな?」


 黙って固まってしまった俺に対し、困ったような顔付きの大家さん…いや、嵯峨さん。
 このまま沈黙を続けるのは失礼だしと考え、何とか口を開く。


「今日はもう閉店していますし、此方側は店舗では無いです…」


 口調はちょっと冷たいかも知れない。少し反省。
 と言うかね、午前中に告白されてその日の午後、つまり今会うとかどんな顔をしろというの!?内心パニックだよ!顔には出さないように気を付けてはいるけど、ちょっとしたことで即変な顔付きになりそうで困る~!

 一先ずと事実をありのままに話すと、嵯峨さんは思案の為かうーんと唸ったあと、


「帰り際の小林さんが心ここにあらずと言うか、何と言うか。俺のせいだとは分かっているのだけど、その、気になって」


 あ、はい。
 確かに放心状態でした。
 告白とか花束とか、今までの人生で一度だって向けられたことのない感情とプレゼントに驚いてしまって。
 何せそんじょそこらに居る、地味な顔付きの男だ。
 Ωと言う性別を抜きにしても、普通は気にかけられる様な美しいワケでもないし、身長だって低めで困っている位だ。

 幼少時から中学まで田舎で育ったけれど、αなんて俺が知っているだけで一人しか居なかったし、Ω等俺を入れてもう一人しか知らない。そんな田舎で綺麗で美しい顔をした人なんて、俺以外のαとΩのカップルだけだった。
 …そのαが俺の『運命』だったワケだけど。
 そうして俺以外のもう一人のΩが俺の『運命』のαの伴侶だったのだけど。

 だからこそ、辛すぎて中学を卒業したのを良いことに田舎から都会の高校、バース性の学校へと入学した。そうでもなければ当時、まだまだ子供だった俺の気が狂いそうだったから。

 嵯峨さんが今目の前に居るのに、思い出すのはもうやめよう。
 失礼な気がするし。
 嵯峨さんの前ではなるべく真摯(しんし)でいたい。


「それで、だな」


 何だろう。
 先程からチラチラと此方を見て、それから目線を外しと繰り返している。もしかして照れている、とか?いやいや、まさかね。
 …いや、「付き合って下さい」なんて直球ストレートな告白されてしまったワケですし、更に言うと薔薇の花束まで頂いてしまいましたし。マジで照れていらっしゃっている、とか?

 そう言えば俺、直球ストレートの告白をされても気が付かずにアホな回答してしまったけど。
 うぐぐ…今思えば余りにも学生時代モテなさ過ぎてバース性の学校に入ったにも関わらず、日々ひたすらに出会った番のことを忘れるべく、逃避するように勉学に取り組んだ。結果、何故か此処でお茶屋をしているわけですが。あの勉学の日々は一体何だったのか。
 まぁモテナイだけですからねぇ…現在のモテ期に少々困惑しているけど。


「時間あるか?」

「はい?」

「そうか、あるか!」

「あ、いやその」

「駄目なのか?」


 そんなあからさまにシュンと落ち込まないで欲しい。
 今の嵯峨さんに犬の尻尾と耳があったら、犬耳と尻尾はへろへろと垂れ下がって居るだろう。そんな、幻覚が!!


「その、これから買い出しに行かないといけなくて」

「それは店の?」

「家で使う物もあります」

「よし、それじゃ付き合う」

「え!」


「直球ストレート告白再び!」と、うっかり驚いて言葉にしてい一歩下がってしまったら、嵯峨さんまで驚いた顔。え、何で?いや、結構失礼なこと言ってるよ俺!と硬直していたら、


「そうではなくて、買い物に付き合うと言うことで…」


 と、片手でご自身の口を覆って赤面。

 え
 え
 えええ~!?


「あわ、わわ、そのっ!すいません勘違いして!」

「ああ、いや、うん。そうか」


 いや何がそうかなんですか!?とか問い正したくなったけれど、と言うか恥ずかしい!俺どれだけ自分に自信があるんだよ!と言うか自信なんて今までの人生…いや、中学生の『あの時』から一度だって無かったのに!
 瞬間湯沸かし器か!と言うぐらい、自分の顔面に熱が集まっている自覚がある。恐らく赤面しているだろう。だけど嵯峨さんが動揺して顔を片手で覆っている姿がその、珍しくて視線が外せない。
 貴重なご尊顔を拝んでしまったよと、ついつい思ってしまう。

 
「小林さんって」


 うぐ、この言い方だとおっちょこちょいとかって言われるのかな。
 学生時代からよく言われていたんだよね。慌てん坊とか、早合点や早とちりとか…


「可愛い、ですね」


 …は?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

魔王様に溺愛されています!

うんとこどっこいしょ
BL
「一目惚れをしたんだ、必ず俺に惚れさせてみせる」 異世界で目覚めた倉木春斗は、自分をじっと見つめる男──魔王・バロンと出会う。優しいバロンに、次第に惹かれていく春斗。けれど春斗には、知らぬ間に失った過去があった。ほのぼの、甘い、ラブコメファンタジー。 第一章 第二章 第三章 完結! 番外編追加

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...