商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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 こんな会話が此処二週間繰り広げられている状態。
 その度に素気無く断りを入れていたが、最近一部の常連客までもが面白がって「今日はいけるか」「頑張れよ」と励ます状況。

 …非常に迷惑。

 尤も応援する常連客ばかりでは無い。
 例えば、


「迷惑です」


 はい、嵯峨さんです。
 二週間と少し口説かれ続け、嵯峨さんキレました。

 早朝玄関ドアを開けた眼の前で、自宅へ来た嵯峨さんが「今日からカウンターで朝食の時間帯だけ押し掛けボランティアに来ました。でもお金を払うので朝食を食わせて下さい」と、土下座しそうな勢いで。

 いや、既に地面に座り込んで居たので半分土下座。

 速攻で止めさせたけど、早朝から心臓が凍りつきそうになる行動は止めて下さい。
 新聞配達のオジサンやらサラリーマンやらに注目されていて、俺涙目。目立つって言うの。こんなイケメンを土下座させるなんて、俺が彼に土下座を要求したのかって感じで注目されるのは勘弁して下さい。そんな神経なんて無いのだから。

 そんな訳で朝の朝食提供時間のみだけど、本日からカウンター内部に居る嵯峨さん。勿論ボランティアは受け付けませんと断りを入れ、それならと朝食がお給金代わりになった。

 賃金えらい安いことになるけど良いの!?と聞いたら、「毎日は流石に出来ませんが良いのです」とのこと。
 流石に嵯峨さんも他の管理地の修理とか諸々といった要件があり、忙しい時は出来ませんと言われてしまった。

 そう言えば嵯峨さん、この住居件店舗の大家以外にも管理している所があるのだろう。何度か大工道具みたいな物を持って移動している姿を見たことがある。


「貴方にいっていません」


 おっと、意識を逸していたらカウンターで嵯峨さんとヒムカさん二名の雰囲気が険悪。
 お二人の背後に龍と虎が見えるようです、どっちが龍やら虎が付いているのはわからないけど。因みに俺は蛇に睨まれた蛙かも知れん。
 もしくは試練。
 …駄洒落じゃないです、そういう心境なのです。
 おっさんとか言うツッコミはご遠慮願います。

 そうして背後で何名かのお客様が驚いて此方を見ている。
 …約一名シュッシュッとシャドーボクシングの格好をしている人がおりますが、店内では止めて下さい。明らかに面白がっておりますね?


「店内でのナンパは止めて下さい」

「その様な事は、ただ店長さんと仲良くしたくて」

「それがナンパです、止めて下さい」


 おや?と言う声がしてそちらを向くと、何時の間に来たのか不破さんがカウンター横の空いている席に座る。


「店長さん朝食セットひとつ~」


 そうして何事も無かったように注文。
 冷気漂うカウンター席にようこそ、相変わらず格好良いですねちょっと和んでしまいます。
 でも面白がっておりますね?ニヤニヤ笑っているし、「店長ちゃんモテモテ?」なんて此方にこっそりと聞いてくるし。
 ええい、話題を変えてやる。


「今日末明さんは?」

「子供等とお手伝いさんを連れて朝から末明ちゃんのご両親の墓参り。一緒に行きたかったのだけど、今日は店があるからね~」

「ああ、後でうちの商品で悪いですけど仏壇にお供え物備えさせて下さい」

「何時も悪いね」

「いえ」


 そう言えば未明さんのご両親の命日だったな。
 不破さんや末明さんには何時もお世話になっているし、後でお花もお供えさせて頂こう。


「ところでさ~。」


 おおお、不破さんバチバチとやっている嵯峨さんとヒムカさんに遠慮なく話し掛けている。流石ツワモノ。


「なぁなぁお客さん、折角店長ちゃんが作ったご飯冷めちゃうじゃ~ん、剣呑な雰囲気出していないで早く食べなよ、他のお客さんの迷惑になるぜ?勿論俺も目の前で威嚇され続けられると迷惑~。何故かカウンターに居る嵯峨もだ。このままだと店長ちゃんに迷惑が掛かるし、流石に営業妨害になるよ?」


 頬杖付いてニッコリ笑って…あ、うん。その笑顔ちょーとコワーイ。
 嵯峨さんとヒムカさん二名の場合は冷気が発生していると言う感じだけど、不破さんの場合一気にブリザード!マジ寒い!!空気が凍る、凍結する!!

 はっと我に返ったのか、「店長御免、他のお客さんもすいません」と頭を下げて謝る嵯峨さん。
 うんうん、わかってくれて助かります。
 ヒムカさんも周囲のお客さんに先ず謝ってから俺にも謝罪。んが、ぜーんぜん嵯峨さんの方を見ず、当然謝罪もない。そういえば嵯峨さんもヒムカさんに謝っていない。


「店長ちゃん、この二人冷戦状態?」


 なんて不破さんに聞かれたけれど、頷くしか無い。
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