商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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83 気不味い

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 気不味い。
 何が気不味いって、時折背後から視線が。
 喫茶ロインの朝食タイムで忙しい最中、始終嵯峨さんの視線を感じます。ハイ。

 その状態のまま、普段朝食を食いに俺の店に来ている常連さん達が何故かハラハラしながら見ている。ついでに先程来た京夏君のお連れさんである、Ωの可愛らしい容姿の男子君も。
 ちょっと困る。
 いいや、滅茶苦茶気不味い。

 嵯峨さん自身も不味いと思ったのか、先程感じた圧。今は何も感じない。その替わりに視線を滅茶苦茶感じます。

 そんな俺の状態を京夏君は明らかに面白そうにワクワクした顔付きで此方を見ているし、そんな状態の京夏君を落合君はうっとりした顔付きで見ている。あれ、絶対に京夏君を可愛いと思って見ているな。
 そうしてもう一人の有名人っぽいα男子は此方をスルー。Ω男子君を愛でるのに忙しい様だ。

 …こうして見ていると人にもよるけどαって、自分の交際相手と言うか番相手(一部違うが)のことしか眼中に無いみたいだな。
 という事は、だ。
 再度視線を感じ、忙しなく珈琲を淹れ調理をしている不破さんの方を見る。
 すると苦笑しつつ頷いた。


「小林さんと嵯峨さん、お手伝い有難う。良かったら朝飯のまかない作ったから休憩して」


 お気遣い有難うございます不破さん。頷きお礼を言いつつ場所どうしようかなと思っていたら、


「事務室兼倉庫として使っている地下があるから其処で休憩して来て」


 テレビがあるから見ていて良いけど置いてあるものは触らないでね~と言われ、嵯峨さんと二人で喫茶ロインの地下へと向かう。
 途中不破さんが声を出さずに口を動かし、『なんとかして』とジェスチャー。
 嵯峨さんのことだよね、店内の常連客達も何となく此方を伺っている気配を感じつつ、不破さんに言われた地下へ向かう扉を開けて進む。
 地下と言うだけあって灯りが1つもない真っ暗な空間。
 扉横にあるスイッチを押すと、天井にある明かりが灯される。

 壁一面コンクリートで覆われている「昔映画で見た秘密の部屋へ続く階段みたいだ」と言う雰囲気の階段を、嵯峨さんと俺の二人で降りて行く。


「確かにゲームか映画か何かに出て来そうですね」


 どうやら口に出して居たらしい。
 無意識に喋り過ぎだろう俺。


「そこが可愛いですよ」


 ぐぬぬ。またしても口にしていたようだ。
 可愛いと言われるより格好良いと言われたいけれど、本物の格好良い男である嵯峨さんを前にしてどう考えても無理なので諦める。それ以前に俺、格好良いタイプでは無いからなぁ。つくづくΩとは格好良さとは無縁な生き物である。多分。
 …時折格好良い人も居るけれど。

 格好良い人は羨ましいとか何とか思いつつ、お盆に乗せたまかないを手に地下の事務室らしき部屋へと足を運ぶ。その際此方も先程同様真っ暗なので何処かに明かりを付けるスイッチは無いかなと入口付近の壁をキョロキョロと見ると、カチッと言う音。
 どうやら嵯峨さんがスイッチを見付けて明かりを付けてくれたようだ。それから、事務室に置いてある小型のテレビのスイッチも付けてくれた。

 あれ、もしかしてこの事務所嵯峨さん来たことあるのかな?
 テーブルの上に嵯峨さんが持って来た賄いを乗せたトレイを置き、事務所隅にある小さな台所へ行き一口ガスコンロに水を入れた薬缶を乗せ火をつける。

 すると事務所の机に一台ある電話機が鳴る。


「はい」


 嵯峨さんがあっという間に受話器を取り、「お湯沸かしておきました。」と一言。
 ん?店舗の方でお湯使うの?と思っていたら急いで階段を降りて来る足音が聞こえ、「有難う~!持っていくね」と不破さんが先程沸かしたお湯が入った卓上ポットを持って二階へと上がっていった。

 その際何かを嵯峨さんに言ったのか、小突かれていたけど…。
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