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108 もう三日
しおりを挟む『まーさか三日も連絡が取れなくなるなんてね~』
ニヤニヤと、楽しそうな声が右手に持っているスマートフォンから聞こえて来る。
その声に嵯峨さんの部屋のベッドの上で死体と化している俺は色んな意味で死んでいた。
なお裸体ではありません。
憧れ?の、嵯峨さんの寝巻の上着を着ている状態です。
一昔前ならリア充爆発しろ!と言いたくなるやつです。
まさか自分がこうなるとは………でへへ。
身体は筋肉痛で死んでいるけどな!
現在、もう三日、ええと…この嵯峨さんが所有しているマンションに来てから三日。初日は不破さんの喫茶店兼自宅に泊まらせて貰ったし、その翌日には…で、現在腰痛やらあらぬところが諸々で全身慣れない筋肉痛という痛みで身動きが取れません。
ちょっと項も痛みがあるし、フハハハハ。…落ち着け、俺。
そんなわけで本日もお店は休業中。すまん。
「ううう…」
『まぁ良いんじゃね?ここ数年ヒート以外では連休とか取ってなかったでしょ~店長ちゃんは。店にはちゃんと休業中って張り紙があるし、大丈夫だよ』
「そうかなぁ」
何も言わずに二人で籠もっちゃったから色々な人に迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありません!って、ただ今絶賛反省中。とは言っても、色々いたす前に連絡を入れられる状態では無かったし、途中はもっと前後不覚になってしまってわけわかめ、じゃなかった訳が分からないからなぁ。
最中はふにゃふにゃな脳味噌で何考えているかわかってなかったし。うーん、気持ちいいとか痛いとかお腹空いたとか、生きていく上での生理現象とか、そんな訴えぐらいしかして無かったような。
ううむ、Ωとかαのヒートってホント不思議。よくこんな状態で生活出来ていけるよなって思う。世間様ご理解有難う御座いますと拝み倒しておきたい。
勿論一時的できっと数分後には忘れ去っているだろうけど。
『そそ、店長ちゃんを知っている人ならΩのヒートかなって思うだろうし、嵯峨さんと店長ちゃんとの関係を知っているならそういうことかなって思うぐらいかな』
「ぶっ!!」
思うのかよっ!
って、俺達の関係を知っている人って、うちの店の常連客と不破さんの店の常連客と…結構な人数、知っている人が居る気がするけど~!
『あははは、店長ちゃん吹き出した~!』
スマホから聞こえて来る声の主である一戸京夏君が『イエーイ!』と言いながらカラカラと笑う。そりゃ吹き出すぐらいするわ!
『んで、番った?ヒートになって三日間やりまくった?今身体痛い?ふひひっ!』
「うぐっ!」
相変わらず軽い口調でスバッと核心を突いて来る彼に翻弄されている俺。これでも年上なんだけどなぁと思いつつ、京香君のマイペースな口調に戸惑う。
『ふひひ』と言う、相変わらず楽しそうな笑い方には何とも言えない気分に陥ったけど。
『言い淀むってことは正解かな?かな?』
「語尾が楽しそうだよね、京香君」
『あーはーは~♪だーって俺っちって、さ。ずーと店長ちゃん達、まだかな、まだかな~って待ってたんだよん♪』
「お待たせしました?」
『何故語尾が疑問形~?』
ぎゃはははと何時もの元気な京香君の豪快な笑い声にホッとする。
何故だか俺、少し不安だった。
Ωの俺が、αの嵯峨さんと番ってしまって良かったのだろうか。
俺の『運命の番』相手には見向きもされなかったのに、嵯峨さん、ううん、憲真の『運命の番』相手が現れてしまったら一体どうするのだろうか、とか諸々と考え込んでしまって。
憲真と既に番ってしまった後だと言うのに、今更考えても仕方が無い考えに妙にとらわれてしまっている。
『それってフラグが立つって言うじゃん。口に出して言わない方が良いよ~』
「…口に出して言っていた!?」
『言っていたね~』
マジか。
ある意味何時も通りだけど。
そうして俺、何故かどんどん気分が落ち込む。
落ち込むと言うか、凹む、かな。こんな考え方をしたってどうしようもないのに。
思わず「はぁ~」と溜息を一つ。
『んん~?溜息を吐くと幸せが逃げるぞ~』
「うぐぐぐ」
『まじでスマイルが大事よ~、笑顔・えがお。って言っても電話じゃわかんないけどね~』
「うん…」
『と言うことは~今家に嵯峨さんが居ないとみた』
当たり。
早朝起きた時は一緒に居たのに、二度寝して目が覚めたらこのマンションの部屋から居なかった。
『店長ちゃん、まーだヒート残っているっしょ?』
「うん。軽くだけど…」
昨夜まではヒートが強く出ていて憲真から離れることが出来なかったけれど、今朝起きた時は比較的安定していて憲真から離れることが出来るようになっていた。
それまでは昨夜まで離れることが出来なくて、ほぼ繋がった状態だった気がする。
何がとか何処がとかは聞くな。
『成程、下半身が繋がったままと。ひゃ~!えっちいね!!』
「ぶはっ!!」
盛大に咳き込むと、受話器の向こうからぎゃはははと相変わらずの大きな笑い声が聞こえる。
『うんうん、最初ってそんなもんだよね~。俺っちもひろと初めての時はそんなもんだったよ~って言っても俺達の場合、学生だから翌日学校があってさ、授業中筋肉痛で膝がガクガク笑っていて爆笑したわ!ま、今じゃいい思い出あーんど笑い話、うひゃひゃひゃひゃ!』
スマートフォンの向こうから楽しそうな笑い声が聞こえて来る。笑い声や言い方はからかいを含めたモノなのに、何時もとは違うやや抑え気味な声。
京香君の気遣いを感じる。
『ね、店長ちゃん』
「うん?」
『嵯峨さんさ、多分だけど食材とか買いに行ったんじゃないかな』
「あ~…そうかも」
三日間籠もる前に一週間分の作り置きをしておいたからって、あ。
「一週間分の作り置きって憲真一人分だったから、もしかして冷蔵庫空っぽかも!」
このマンションに来る前に買い置きして置いた分だってほぼ無くなっている筈。
『買出しに行ったに千円!』
スマートフォンから嬉々とした京香君の声が室内に響いた。
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