商店街のお茶屋さん~運命の番にスルーされたので、心機一転都会の下町で店を経営する!~

柚ノ木 碧/柚木 彗

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129 「う わ き も の」

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 side.嵯峨さが憲真けんしん


「う わ き も の」


 風呂から上がって着替え、先程まで眞宮まみやが寝ていた場所を覗くともぬけの殻。
 台所に居る蕗さんに聞くと「二階の自室へ上がっていったわ」と教えて貰ったので階段を上がる。
 因みに五ツ木君は髪が凍る~!と言いながら自宅へと帰っていった。凍ると言うならドライヤーを借りて乾かせば良いのにと思ったが、徒歩数分の距離だからと帰宅して行った。

「髪の毛が凍っても短髪だから、暖かい部屋に入って数分すれば即解けるんだけどね」と言っていたが、髪の毛って凍るのだろうか…?凍ると言うことは、傷むのでは無いだろうか?
 階段を上がりながらそんなことを呑気に考え、眞宮の部屋のドアを軽くノックしてからもしかして眠っているかな?と静かにドアを開けると…。

 眞宮が腕を組みながら此方を睨み付け、仁王立ちしていた。
 そうして上記の言葉。


「う わ き も の」


 …。
 うわき?
 上筋?
 上筋…上端筋。 梁、スラブ等で上側に配筋される鉄筋の、こと?
 それとも俺の聞き間違い?
 うきわ、とか?
 いやいや、夏でも無いのにそんな意味の分からない言葉を眞宮は話さない。
 と言うか浮き輪か~…眞宮の水着姿とか良いな、そそる。
 勿論他の人に可愛い眞宮の水着姿なんて決して見せるつもりは無いが、でも温水プールとかで上着を着た状態なら、いや、駄目だ。足!眞宮の普段出したことが無い色白の足を!脚線美を晒したくはない!
 おっと、今は眞宮の水着姿云々の前に現実に戻ろう。

 眞宮が言った言葉に「ありえないと」即座に否定。だとすれば何か違う言葉なのか?と、混乱の極みを体験していると、


「五ツ木と風呂入ったって」


 あ。
 あー!
 そっちか!
 そっちの浮気か!!


「そりゃね、俺寝ちゃっていたし。それに五ツ木とは男同士だし、βとαだから特に何も無いって言うのは頭ではわかっているのだけど、でもな、でもっ」


 おおお、嫉妬。嫉妬ですか。
 どうするかな、嫉妬している眞宮が、眞宮の機嫌が悪化しているのがわかる。


「もやもやするっ!」


 と言って俺の胸の中にドンッと飛び込み、ポカポカと小刻みに軽く叩かれる。

 ナニコレ。
 眞宮の嫉妬、可愛過ぎる!
 例えドアの隙間から眞宮の父親である延司えんじさんがニヤニヤしながら、「やーいポカポカと叩かれてやんの」と言った風な顔つきで見られていても構わない。口パクで「ざまぁ」とか言っているけどスルーだ。
 スルー一択だ。
 と言うか、嫉妬だよ嫉妬。
 俺、嫉妬するぐらい、滅茶苦茶眞宮に好かれているって言う証拠じゃないか!
 うわーうわー嬉しすぎる。嬉しすぎて顔が自分でも分かるくらい緩み切ってしまう。
 チラッとドアの隙間から覗いている方を見たら、「ぐやじぃぃ!」って小声で呟いているのが見えたけど。
 何しているのですか、出歯亀ですよ、延司さん。
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