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しおりを挟む時刻はお昼過ぎの一時少し過ぎ。
担任の田中先生から昼を食べ終わったら職員室へ行ってくれと呼ばれ、更に体調を心配された。けれどもう大丈夫と伝え、職員室へ向かったら今度は其処に居た陽平父さん…ええと、学園に居る時は先生だっけ。陽平先生と一緒に移動し、職員室の奥の会議室へ向かった。
それまでに午後の授業迄に開放されるかな~とか、呑気に考えていたのは否めない。
…のだけど。
えーと何故この部屋に…先程僕の肩を掴んだ人が居るのは察するけど、そのお隣に厳つい顔付きの如何にも!な敏腕上司風な人と、何だかこの場に居るのが場違いな雰囲気な気がする皇さんが何故居るのかなぁ?クラスにもまだ行っていなかったよね?
僕、何だかこの部屋に居る必要無くない?
嗚呼でも当事者か…今朝の一件が発端っぽいし。だからこそ呼ばれたというのもあるのだろうけど、何だか今朝からもう色々有り過ぎてお腹が一杯。
よし、それならば~と、皇さんには会いたかったからつい無言でススススと皇さん側に近寄って、ちょっと怖いからと今朝の僕の肩を掴んだ人と並んでいる厳つい人から距離を取った。
あ、皇さんの背後にマネージャーさんが居る。
此方を見てにっこり微笑んで片手を上げてくれた。えへへと笑顔を向けたら更に笑みを浮かべてくれた。うん、ちょっと和めたかな。
「倉敷。」
側に寄ったために距離が近かったのだけど、更に距離を詰めた皇さんが僕の側に来て、僕の腰に腕を回してからギュウッと身体を抱き込んだ。
え、ええ、と?
「皇さん?」
陽平父さんが、他の人が居るのにと思って焦ってしまうけど、抱き込まれるのは正直嬉しい。それに今朝から首筋に感じていた妙にジリジリした気分が何処かへ飛んでいき、安心してしまう。
それと同時に皇さんから例の爽やかな匂い…レモンのようなフェロモンを感じて、皇さんの首筋にすり寄ってしまう。そのままスリスリと甘えたままで肩の力を一気に抜き、皇さんに抱き込まれるままにしてリラックス。
本当は学園関係者では無い二人…今朝僕の肩を掴んだ人とその人の横にいる男性が居る都合上良くないとは思うのだけど。と、マネージャーさんの方をチラリと見ると、彼は大丈夫だよ~という風に僕等を見て朗らかに頷いて微笑んでいる。
…大丈夫なのかな、これ。
だって、予想だとこの学園関係者ではない二人ってカメラマンだか記者だかで、もう一人の男性の方は上司っぽいと思うのだけど。皇さんに迷惑掛けちゃわない?でも今更この状態から今は離れたくない。だって、ずっと会いたかったんだ……。
「来るのが遅れてすまない、不安だったろう。」
ん?
抱き着いている皇さんの顔を見上げると不安そうな顔付き。
「今朝から倉敷の様子が変だとメールで聞いて、撮影が終わってから急いで来た。」
どうやら陽平父さんと杏花音さんに落合先輩、それと京夏さん達から連絡があったらしい。
ええと、僕今朝保健室を出てからもう大丈夫だと思って居たのだけど…そんなに様子がおかしかったのかな。
「一戸兄妹から『始終皇君の席ばかり何度も見返している』とか、落合先輩からは『半泣きのような涙目で俯き気味だったし、声のトーンが何時もより半オクターブ下がっている』と聞いている。それに今朝は保健室で私がプレゼントしたショルダーバッグをずっと抱えて居たとメールで聞いた。」
ひぇ。
と言うか杏花音さんに京夏さん、僕そんなに皇さんの席見ていた?
う、ううう、自分じゃわからないや。
それに落合先輩ってば、滅茶苦茶僕の様子見ていたの!?何時も通りだと思っていたのだけど、そんなに変な顔していた?と言うか声まで?やっぱり自分じゃわからないよ。
…ショルダーバッグは陽平父さんの報告だよね…。
じと~と陽平父さんを睨むとついっと明後日の方向向いたー!
余計なこと言ったと自覚していますね?全く。と言うか、何時の間に皇さんとメールアドレス交換していたのさ。
とか思って居ながらも皇さんから離れることが出来ず。恥ずかしいから離れたいんだよ?でもね、何だか身体が拒否しているんだよ、皇さんから離れたくないって。
…ま、まぁちょっと言い訳かもだけど。
だって落ち着く。皇さんからリラックス出来るような、いい匂いが出ていて安心してしまう。
恐らく何かしらのフェロモンを皇さんが出しているのかも知れない。
αのことは良くわからないから想像でしかないけど。
でもこの室内に不安になってしまう見知らぬ人が2名も居るから、お陰で皇さんから離れることが出来ない。…また、肩を掴まれたら嫌だからね。
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